国産エンジン史高級車・国産乗用車用V8エンジン今昔90年代

画期的だったトヨタのV8エンジン、1UZ-FE

長らく国産車のV8エンジンといえばトヨタ センチュリーや日産 プレジデントといった、量販車向けではない特別なエンジンとされてきましたが、ついにそれを打ち破ったのが1989年にトヨタから登場した1UZ-FEエンジンです。
当時、日産 シーマ(初代)の登場により、イタリアンテイスト漂う大型ボディがハイパワーのV6ターボエンジンで轟然と加速する姿にダイナミックさを感じて大ヒットとなる「シーマ現象」が起きました。
それまで日本のドライバーが将来的な所有を目指すクルマとして一般的だったのは「いつかはクラウン」のキャッチコピーが今でも語り継がれるトヨタ クラウンや、日産のセドリック/グロリアでした。
それを飛び越した最上級モデルの登場に危機感を感じたトヨタはクラウンの商品力アップのためのマイナーチェンジを1989年8月に行い、そこで追加された最上級グレード「4000ロイヤルサルーンG」に搭載されたのが、クラウンとしてはクラウンエイト以来久々のV8エンジン、1UZ-FEだったのです。
現在ではクラウン・マジェスタの源流とされるロイヤルサルーンGですが、当時の雑誌などではデビュー前から「V6ターボの日産シーマに、トヨタのクラウンは大排気量V8で対抗!」と話題になったものです。

高級車に革命をおこしたセルシオ用エンジンだった1UZ-FE

販売政策上からか、先にクラウンに搭載された1UZ-FEでしたが、実際には直後の1989年9月にデビューしたレクサス LS400、日本名トヨタ セルシオのためのエンジンとして開発されました。
権威主義的で威圧感の強かった割には、メカニズムが旧態依然で古臭さと伝統の狭間にあった当時の高級車とそのマーケットを徹底的に研究した結果、若い世代のエグゼクティブ層には最新技術を用いた全く新しい高級車の需要があると判断したトヨタは、「レクサス」ブランドとそこで販売する高級車の開発を開始。
そこではこれまでの高級車には無かった優れた静粛性と卓越した動力性能、燃費性能などが要求されたため、トヨタの全力を注ぎ込んだ結果、1UZ-FEは生まれました。
V型8気筒32バルブDOHCエンジンから260馬力/36.0kg・mを余裕を持って生み出し、その動力性能から重量級のセルシオ(LS400)でもスポーツカー並の走りができると言われていましたが、それよりもその優れた静粛性がライバルメーカーにとっては大きな驚異となり、メルセデス・ベンツやBMWはそのクルマ作りを大きく転換、米ビッグ3は追随しきれずに没落していくキッカケの1つともなったのです。
その後1UZ-FEは4.7リッター版のSUV用エンジン2UZ-FEや、4.3リッター版の高級車用エンジン3UZ-FEに発展し、トヨタやレクサスの高級セダン、クーペ、ランドクルーザーやタンドラなどの大型SUV、ピックアップトラックに搭載されています。
高級車用とは別に米国市場向けの大型SUVやピックアップトラック向けに使われた2UZ-FEは、それまで米ビッグ3のフルサイズSUVより小さく、V6エンジンで車格も落ちていたため低かった競争力を大きく引き上げるのにも役立ちました。

高級車用からレーシングエンジンに発展した日産のVH41/45

一方、シーマ現象による大ヒットがセルシオの登場で一気にひっくり返された日産は、シーマの次期型登場まで廉価版の追加などで間を繋ごうとしましたが、その間の出遅れが致命的となりました。
日産もトヨタの「レクサス」ブランドに遅れること2ヶ月、1989年11月に高級ブランド「インフィニティ」の米国展開を開始しますが、レクサス LS400(セルシオ)や、そのエンジンである1UZ-FEほどのキラーアイテムを持たなかったために、高級ブランドとしてはG35(日本名V35型スカイラインセダン)のヒットまで販売低迷が続く事となるのです。
それでも、インフィニティの展開開始と同時に新型V8エンジンは投入されていました。
V型8気筒32バルブDOHCエンジン、VR45DEです。
しかしVR45DEは280馬力/40.8kg・mのスペックも排気量もトヨタの1UZ-FEを上回っていたにも関わらず、インフォニティ Q45やプレジデントに搭載されたVH45DEは1UZ-FEほどの高評価を得られませんでした。
2代目シーマやレパードJフェリー用に排気量を4.1リッターに落としたVH41DEも開発されて1991年にデビューしますが、「3リッターV6ターボの加速力で栄光をつかんだ初代シーマ」のイメージから脱却できないまま、4リッターの1UZ-FEより税制上不利な4.1リッターエンジンとした事もあって高級車としては初代シーマほどの成功を収める事ができなかったのです。
日産VH系エンジンが大成したのはむしろレーシングエンジンとしてで、米インディカー・シリーズ用のVRH35Aや、ル・マン24時間レース用マシン、R391に搭載されたVRH50Aとして活躍しています。

幻のマツダ「アマティ」W12エンジン

ちなみに1990年代の国産高級車用エンジン史を飾るべきエンジンは、もう1つあったはずでした。
バブル景気の頃にシェア拡大を狙ったマツダが打ち出した多チャンネル(多ブランド)化戦略で、高級車ブランドとして登場するはずだった「アマティ」のW12型エンジンがそれです。
4気筒×3のW型12気筒48バルブ4リッターエンジンで、最高出力は公表されなかったものの、最大トルクは1UZ-FEなどと比べると少し大人しめの34kg・m。
その分12気筒ですから滑らかで上質なエンジンになったのではないかと思われ、当時のマツダの最高級車、センティアのさらに上位モデル、アマティ1000に搭載されてデビューするはずでした。
しかし、マツダの企業規模からするとあまりにも性急で無理のあった多チャンネル化推進で粗製濫造車が急増、バブル崩壊も相まってマツダそのものも崩壊の危機に陥り、他ブランド(ユーノスやアンフィニ、オートザム)の段階的な廃止とともに、アマティ計画もキャンセルされました。
その後、W12エンジンだけは何度か復活の噂があったものの、フォード傘下となってからしばらくの間マツダにはそのような体力が無く、実現に至っていません。


1980年代後半から90年代にかけての高級車ブームでは各社とも3ナンバー大型セダンを発売しましたが、ホンダ、マツダは結局V6エンジン止まりで、三菱もV8エンジン搭載車を発売したのは2000年代に入ってからです。
次回は2000年代の高級車用エンジンをご紹介します。

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