カペラは、登場時からロータリーエンジンを搭載した初の大衆車となりました。
1970年、「風のカペラ」デビュー
軽乗用車のR360クーペで1960年には4輪乗用車市場へ参入(4輪車そのものは1958年デビューの4輪トラック、ロンバーが初)、そして1963年にはファミリアで大衆車市場にも切り込む事に成功したマツダ。
しかし、1,000~1,300ccクラスのファミリアと、1,500~2,000ccクラスの大型車ルーチェの間を埋めるモデルが無く、トヨタ コロナや日産 ブルーバード、三菱 ギャランと肩を並べるような上級大衆車が求められていました。
そこで1,500~1,600ccクラスにデビューしたのがカペラです。
ファミリアと共にマツダを支える基幹車種として期待されたカペラは、マツダらしくボディラインにうねるような曲線を多用した美しいデザインの2ドアクーペ/4ドアセダンで、1960年代に存在した野暮ったいデザインの国産車は姿を消しつつあったとはいえ、その中でも一頭群を抜いている印象を持っていました。
それもそのはず、中小メーカーとしてはかなり大規模な300名にもおよぶプロジェクトチームを動員、空力理論を応用したジェット戦闘機のイメージでデザインされ、フロントグリルもジェット機のエアインテークを思わせる大きな横6角形が採用されたのです。
その斬新なスタイルから「風のカペラ」と呼ばれた初代カペラのデザインは、現在のマツダがよく採用する躍動感のある曲線美に通じるものと言えるでしょう。
4番目のロータリー
そして、このカペラは初代コスモ、2代目ファミリア、ルーチェロータリークーペに次ぐ、4番目のロータリーエンジン搭載車であり、同時にマツダの大衆車としては初めて、デビュー当初からロータリーを搭載したクルマでもありました。
ロータリーエンジンはコスモやファミリアに搭載された10Aや、ルーチェロータリークーペに搭載されたFF用の13Aとは異なり、カペラ用に新開発された573cc×2ローターの12A。
コスモスポーツ後期用の10A(128馬力・14.2kgf・m)にこそ最高出力で及ばないものの、120馬力・16.0kgf・mと最大トルクで上回り、排気量アップの効果を見せつけます。
その動力性能は、当時ショールームストック(新車購入状態)でこれに勝るのはポルシェ911だけと言われており、ゼロヨン(400m加速)で15.7秒と圧倒的な加速力を発揮しました。
これは、当時レースでマツダのライバルだった日産 スカイラインGT-Rがカタログスペックで4ドアセダン(PGC10)が16.1秒だったのを上回り、2ドアハードトップ(KPGC10)の15.6秒に次ぐものです。
当然、打倒GT-Rを目指してレースに投入されましたが、ファミリア同様コーナリングスピードやレーシングチューンで及ばず、レースに限らずカペラのモータースポーツ歴は短命に終わるのでした。
オートマの採用などで、ロータリーを大衆化
しかし、レースでの実績だけがカペラの全てではありません。
スペース効率の良いボディワークで室内スペースは1クラス上のマークII(当時は初代コロナ・マークII)並で、美しいデザインとゆとりある室内という、初代ファミリア以来の「マツダの大衆車作りのうまさ」を見せつけました。
後にオイルショックやバブル崩壊で極度の不振にあえぐ時期のマツダは良く言えば奇抜、悪く言えば軽薄なデザインが目立ちましたが、2016年現在も含め、好調時のマツダデザインには贅沢感と躍動感が同居した、活き活きとして存在感が際立っているように思います。
また、このカペラでは初めてロータリーエンジンにオートマチックトランスミッションを組み合わせた事で、一般大衆に対するロータリーエンジンの敷居を大きく下げました。
この時期、オイルショック前のマツダはカペラ以降もサバンナ、ロータリーピックアップ(日本未発売)、ロードペーサー、パークウェイ(マイクロバス)とあらゆる車種にロータリーエンジンを設定しており、「ロータリーのマツダ」を強調していきます。
その中で、大衆車でもロータリーエンジンを搭載した上にイージードライブを可能としたカペラは、圧倒的なパワーを持つスポーツセダン/スポーツクーペというだけではなく、パワーにゆとりのある大衆車、振動の少ない快適なファミリーセダンとして好評を得たのでした。
その路線はオイルショックでマツダが大苦戦を強いられた時期の2代目カペラまで続きますが、3代目以降は地味で無難ナスタイルの、どこから見ても大衆車になってしまった事を考えると、野心的だった初代カペラこそが、もっとも輝いていたカペラだったかもしれません。
次回からは1971年デビュー組、「足のいいやつ、カリーナ」をご紹介します。
大衆車にも元からスポーツグレードが設定されたものが多かったのですが、最初からクルマそのものがスポーツセダンとして売り込まれたのは、カリーナが初でしょう。