あまりクルマが出てこないゆえに目立つミサト車
「新世紀エヴァンゲリオン」そのものは20年以上前に初放送されたアニメなので、それほど説明はいらないでしょう。 架空の大災害(セカンドインパクト)や戦争によって人口の半分を消失した世界での日本の首都・第3新東京市を主な舞台として、謎の侵略体「使徒」を相手に人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」と、それを運用する特務機関NERV(ネルフ)が戦う物語。 そうした殺伐な世界ゆえに、大人口による繁華街の人ごみや幹線道路の渋滞などは描かれず、クルマとはおよそ無縁で適当に描かれても良さそうなものです。 しかし、明確にマニア層の心理をつく作品であることや製作陣の好みもあって、見事にクセのあるクルマが登場します。 それがNERVの戦闘指揮官・葛城ミサトの愛車です。
アルピーヌ A310
ミサト車としてもっとも登場回数が多いのがこのアルピーヌ A310です。 ラリーマシンとして有名なアルピーヌ A110の後継車として生まれましたが、当時リアエンジンが多かったルノー車、ゴルディーニやR8をベースに鋼管スペースフレームでシャシーを組み、FRP製のモノコックボディを被せた軽量ラリーマシンA110とはかなり性格が異なります。 シャシーやボディの構成や素材はA110と同等なものの、大型化したボディと豪勢な内装で「ラリー用スペシャルマシン」というよりは、「豪華なGTカー」としての性格を強めた一方、初期の4気筒モデルは大きく重くなった事によりアンダーパワー感がつきまとい、あまり人気を得られませんでした。 その後V6エンジンを搭載してポルシェ911並の動力性能を手に入れますが、いずれにせよ1970年代から1980年代前半までの「ちょっと性能のいいGTカー」という程度であり、現代まで通用するようなものではありません。 劇中ではEV(電気自動車)にコンバートした右ハンドルモデルと、オリジナルに近いV6ガソリンエンジンの左ハンドルモデルが登場します。 使徒の攻撃による衝撃で横転しても乗員が無事で、自走も可能だった事から、少なくともEVモデルの方はかなり頑丈に作られているようですが、その一方でエアバッグなど近代装備は無さそうです。
フェラーリ 328
登場回数は少ないのですが、葛城ミサトが主人公の碇シンジの通う学校に行った時に出てきたのが、この328。 1985年から1989年まで製造されていたので、30年前のフェラーリとしてはそれなりに古いモデルではありますが、「エヴァンゲリオン」放送時はまだ生産終了から10年と経っていないのでそれほど古いというわけでもありません。 512BBやテスタロッサ、ディーノ246GTのようなスーパーカーブーム世代のフェラーリほど神格化されておらず、348以降の近代V8フェラーリほど高性能とも言えない、ちょっと中途半端な時期のフェラーリとさえ言えるのではないでしょうか。 前作308が生産現場のストライキなどの事情でスチールボディを生産できず、苦肉の策として初期型はFRP製のファイバーボディを採用したなどといった逸話も無く、どことなく地味なモデルです。 それでも「誰もがフェラーリと言えばこんな感じ」と思い浮かべるイメージに一番近いようで、下手に近代的なフェラーリよりスーパーカーらしく、かつそれほど古くは無い事から、今では人気モデルとなっています。 「エヴァンゲリオン」放送開始時には既に348になっていましたが、328を採用したのは製作陣の好みかもしれませんね。
マツダ コスモスポーツ
エヴァンゲリオンは2007年以降セルフリメイクされた「新劇場版」が順次制作されており、2009年にはその第2作「エヴァンゲリオン新劇場版:破」が公開されました。 その作中で登場したのがマツダ初のロータリーエンジン搭載車、コスモスポーツです。 一応葛城ミサトには「レースに出ないクルマには乗らない」という設定があったようで、レースでの実績が少ない(一応1968年にニュルブルクリンクで開催されたマラソン・デ・ラ・ルート84時間耐久レースに参戦して4位入賞)コスモスポーツはそぐわないのではないか、という話もありました。 しかし、庵野総監督が「帰ってきたウルトラマン」の大ファンで、同作に登場する地球防衛チーム「MAT]の車両として人気の高かったコスモスポーツを使いたかったという理由もあって、「破」にも登場させたと言われています。 回りくどい理由ではありますが、実写であれアニメであれ登場さえすればかなり絵になるクルマなので、ロータリーがどうといった歴史的なものを抜きにしても名車だと思わされるのが、コスモスポーツというクルマです。 なお、前述のアルピーヌなどとの関係ですが、「代車の公用車」だそうで、だとすればかなり豪華な公用車ですね。
以上、だいぶ古いクルマばかりでしたが、NERVもしくは第3東京市は破壊の後に生まれた世界の産物ですから、古き良きものをレプリカでも何でも残すような活動もあったのでしょうか。 いずれ20年か30年ほどたつと、現在販売されているスーパーカーなど名車も、アニメなどに登場する日が来るのかもしれませんね。 次回は最近の作品でも無くマンガやアニメですらありませんが、気になった1970年代の特撮ヒーロー「ロボット刑事」から、愛車の「ジョーカー」をご紹介します。
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