超小型モビリティは、どのように使われる乗り物か?
未だに現実の規格として誕生していない超小型モビリティですが、それゆえライバルとなるクルマを考えるには「具体的に超小型車とは何か」を一度おさらいしておきましょう。
見出し編集 | 【超小型モビリティー(暫定的な規格)】 |
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動力 | 定格出力8kw以下のモーター、または125cc以下のエンジン |
全長 | 3.4m以下(2.5m以下ならボディ側面のウィンカーは不要) |
全幅 | 1.48m以下(1.3m以下であれば、二輪車並に一部保安基準緩和) |
定員 | 2名(乗車のための装備があれば大人1人+子供2人も可) |
最大積載量 | 350kg |
高速道路 | 走行不可 |
車検 | 無し |
ボディサイズや積載量は軽自動車と同等まで可能で、車重の制限などはありません。
極端な話、現在の軽自動車のエンジンを超小型モビリティ規格のモーターかエンジンに載せ替えれば、そのまま登録できそうでもあります。
車重に対して動力性能が著しく不足しますが、最高速度が45km/hですから、平地以外は全く走らないという人なら、それでいいという人もいるかもしれませんね。
ただし、現実的に登り坂など地形を選ばず走行しようと思えば軽自動車の最低600kg台あるボディはちょっと重すぎます。
実証実験でも山間地の集落間移動に使う人も多かったので、ある程度の登坂性能、そして天候の変わりやすい場所ですから、ある程度雨風がしのげる事も求められるでしょう。
そのため、実証実験に使われるのは、実際には一回り小さいミニカー規格で作られた軽いクルマで、短距離の集落間移動や買い物、通勤に使う用途で自動車より簡便で購入費や維持費が安い個人用の乗り物という事ですね。
従来その用途で簡便な個人用と言えばオートバイや原付自転車ですが、それより耐候性が高いという意味合いにもなります。
トヨタi-ROADをはじめとする超小型モビリティの実際の走行映像はこちら。
一番比較対象になりそうなのは、やはり軽自動車?
そうした用途、ことに耐候性まで考えた場合は軽自動車が一番のライバルでしょう。
最近は軽自動車も快適性や積載性、趣味性などで高付加価値をつけた高額モデルが増え、100万円以下のモデルはだいぶ減りましたが、それでもひたすら安価なモデルは今でもあります。
それぞれ最低価格の例を挙げると、
【ダイハツ】
車名 | 価格 |
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ハイゼットトラック | 65万3,400円 |
ミラバン | 74万571円 |
ミライース | 76万6,286円 |
ハイゼットカーゴ | 92万5,714円 |
スズキ
車名 | 価格 |
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キャリイトラック | 68万4,720円 |
アルトバン | 69万6,000円 |
アルト | 84万7,800円 |
エブリイバン | 92万3,400円 |
ホンダ
車名 | 価格 |
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アクティトラック | 79万円 |
上記のように「100万円以下で新車が買える軽自動車」があるので、その中でも諸費用や冬用タイヤなどを含んでも100万円を超えそうに無い、ミラバンやアルトバン、ミライース、各種軽トラがライバルになりそうです。
2シーターながら積載時の走破性で勝る軽トラ
このうち、超小型モビリティと同じ2シーターと言えば軽トラです。
最近は軽トラも燃費や高速巡航性能を求められているので、軒並みDOHCエンジンを搭載してパワフルですから、走行性能は比べるまでもありません。
何しろ高速道路も走って長距離移動ができるわけですから、都市間交通にも使えます。
さらに、超小型モビリティも軽トラも規格上の最大積載量は350kgですが、公式に謳っているわけでは無いものの軽トラは1t程度までの過積載に対応しているとも言われ、実際よほどの悪路をフル積載で走ってもビクともしない頑丈さは、軽トラならでしょう。
超小型モビリティで軽トラ相当のクルマを作るとしたら、悪路や急斜面は走らず、最大積載量を制限するために荷台も小さくなるのでは無いでしょうか。
ただし乗用として考えた場合、軽トラは「トラック」には違いないので、カスタム無しではシティコミューターとしてのスタイリッシュさに欠けます。
また、乗車位置も高いところにありますから、乗降性も優れているとは言えません。
そういう意味では「低床の軽トラ風ピックアップ」で超小型モビリティを作れば、シティコミューターから農地まで使えて、新時代の軽トラになりえる可能性はあります。
手ごわいボンネットバンと軽乗用車
軽乗用車と同じボディを使いつつ商用ナンバーの軽自動車は「ボンネットバン」とも呼ばれますが、そのジャンルでもはや日本に2車種を残すのみとなったダイハツ ミラバンとスズキ アルトバンは超小型モビリティへのかなり有力な対抗馬です。
何しろベースは軽乗用車ですから着座位置や運転感覚で軽トラのような弱点はありません。
軽トラ同様、このジャンルもDOHCエンジンが当たり前ですから、高速道路の走行も含めて、普通車のコンパクトカーと比較しても、さほど遜色無い動力性能を持っています。
しかも狭いながらも4人乗り、フル乗車かフル積載でもしっかり走るので、これと比較すると超小型モビリティの存在意義はかなり危ういものに。
後席が狭いというならば安い軽乗用車としてダイハツ ミライースもありますから、4名が快適に移動できる安いクルマは超小型モビリティを待たずに実現できており、それゆえ海外のような超小型車が日本ではあまり登場しなかった原因でしょう。
ただし、軽トラもそうですがこれら軽自動車には2年に一度の「車検」があり、そこでかかる税金や諸費用をどう考えるかです。
おおむね2年に1回、10万円程度を支払って10年ほど安い軽自動車を乗り続けるのが良いか。
それに対抗する超小型モビリティは、あまり寿命が短く乗り換えを要すると、長いスパンで見た場合は安い軽自動車よりコストパフォーマンスが劣る可能性もあります。
超小型モビリティが軽自動車より優位に立つためには?
そこで超小型モビリティが優位に立つために求められるのは、田舎の過疎地など以外では軽自動車にも求められる車庫証明を不要にする事、税金や運転条件の緩和が無いと厳しいでしょう。
ただ、車庫証明は違法な路上駐車の温床になりますし、駐車スペースがあるなら軽自動車の車庫証明取得は今でもかなり容易なので、緩和する意味があまりありません。
税金面でも現状、まだ安い軽自動車税を引き上げた上で、超小型モビリティには重量税を課さないなどの差別化が求められます。
運転条件では過去に存在した「軽免許」を「超小型免許」として復活する手もありますが、どうやって教習を行うかという問題(仮免を取っても通常の教習車では公道を走れないので、超小型車の教習車が必要になる)になるでしょう。
使い勝手や税制面、免許制度での差別化が難しいとなると、実用車として軽自動車に勝つには、やはり30~40万円台で販売できる超小型モビリティが求められるのではないでしょうか?
次回も、軽自動車以外のライバル車第2回として、ミニカーをご紹介します。