国産エンジン史エコカーその3・燃費劣悪だった初期のターボエンジン

国産エンジンの歴史をジャンル別の観点から解説していくシリーズ、エコカー編その3は「ターボチャージャー」です。排ガス対策とパワーの両立で結果的に燃費もいいと宣伝され、黎明期のターボチャージャーは実は日本では「エコエンジン」として登場しました。


あちらを立てればこちらが立たず

ホンダのCVCC(副燃焼室方式)は有害な排ガスを削減しつつも、複雑な構造でその後のエンジン開発の足を引っ張るような形で、現実にはあまり普及しませんでした。

マツダのロータリーエンジンは元々有害な排出ガスを出しにくいというメリットはありましたが、排ガス対策を進める中で元々悪かった燃費が余計に悪化する事から、燃費劣悪でかえってエコではないと第一次オイルショックでレッテルを貼られてしまいます。

結局自動車メーカー各社はもっとも単純に、排気系統に排ガスを浄化する触媒を装着する方向で落ち着くのですが、初期の触媒は理想的な空燃比(燃料と空気の混合比)で燃焼させた時の浄化効果が悪く、かつ排気効率も良くなかったので、特に税制面で排気量に制約の大きかった国産車のエンジンが軒並みパワーダウンするという結果を生みました。

さりとて排気量を上げれば税金が上がる、パワーを上げれば燃費も落ちるという事で、排ガス規制対策は「あちらを立てればこちらが立たぬ」という袋小路に立ったのです。

排気量を上げずにパワーをあげる魔法

それならば、排気量は上げずにパワーを増せば税金は安く済むし、ユーザーの不満も出ない、得られるパワーに比して燃費もいいという事で登場したのがターボチャージャーです。

既に1960年代から市販車での採用が始まり、初の量産ターボ車として1973年にはBMWから2002 Turbo(通称マルニターボ)が登場してはいましたが、当時の国産車でターボチャージャーといえば、まだ一部のチューニングカーやレーシングカー用のマニアックで実験的なパーツでした。

そこに1979年に日産が430型セドリックとグロリアに採用したのが直列6気筒2リッターターボエンジン「L20ET型」を搭載してきたのです。

通常のL20Eが130馬力だったのに対してL20ETは145馬力と一回り大きな排気量のエンジン並みの馬力を発揮し、「ハイパワーに対し、同じパワーを出すエンジンより燃費がいい」として日産はターボチャージャーを盛んに宣伝、翌年には910型ブルーバードとC210型スカイライン(ジャパン)にも搭載、トヨタのようにDOHCエンジンを持たなかった日産は、ターボ攻勢をかけたのでした。

実は燃費劣悪だった、当時のターボエンジン

しかし、「燃費が良くてエコなエンジン」として歓迎されるはずだったターボエンジンは、市場に投入されるやいなや、大不評の嵐にさらされました。

確かにパワー面では申し分無かったので、トヨタ セリカの新聞広告で「名ばかりのGTは道を空ける」とまで書かれてしまったスカイラインGTのオーナーなどは喜んだのです。

しかし、肝心の燃費の方は劣悪どころではなく、「アクセルを踏むと、文字通り見る間に燃料計の針が動いてガソリンが減っていく」という惨状でした。

実は当時のターボチャージャーとエンジンのマッチング、つまり制御技術は未成熟で、シリンダーの圧縮比を下げ、ブースト圧も低く抑えないと簡単にエンジンブローしてしまうため、低速トルクはスカスカ、望むパワーを絞り出すためにはアクセルを思い切り踏み込まないといけません。

おまけにブーストをかけてパワーを引き出す際のノッキング(異常燃焼)対策で燃料を濃く噴射する必要があったため、アクセルを踏み込みターボチャージャーが作動すると、途端に燃料を異常に消費する有様でした。

メーカーの謳い文句にあるような「パワーに対して低燃費」というのは、実験室レベルでの限られた条件下でのみ達成できる、およそ非現実的な「カタログデータ」だったのです。

余波でカタログデータやその後のターボの評判がガタ落ち

もっとも、同時期からターボを採用した三菱 ランサーターボ(通称ランタボ)や各社の軽自動車では燃費に関してそれほど劣悪というわけではありませんでした。

アクセルを踏み込めば確かに褒められる燃費ではありませんでしたが、重量級のクルマとの組み合わせでは無かったのでターボはいざという時のみ、それ以外はターボ無しでも十分に走ったのと、トヨタのように電子制御DOHCエンジンと組み合わせてしまえば、十分な実用性とパワー、燃費の両立ができたからです。

しかし、最初のターボエンジンがあまりにも不評だった事から「ターボは燃費が悪い」「ターボはオイルも食うしエンジンの寿命も短くなる」という評価が後々までつきまとい、日本ではどちらかといえば高回転NA(自然吸気)エンジンが好まれる風潮が生まれ、欧州でダウンサイジングターボが流行した時もあまり好意的に見られませんでした。

さらに、メーカーの謳い文句やカタログデータも信用ならないと、実際にユーザーの使用状況と異なるデータ取りで埋められたカタログに価値を感じない人が増えるという結果まで生んでしまったのです。


軽自動車のような特殊なジャンルを除けば、「一部のマニア向け」という扱いになってしまった日本のターボエンジンですが、その結果としてダウンサイジングターボに頼らない、ハイブリッドエンジンの先行発展という結果も生んだのでした。

次回は、そのハイブリッドよりもう少し前に流行った、リーンバーンエンジン(希薄燃焼)について紹介します。

国産エンジン史エコカーその4・リーンバーンエンジンとは何だったのか?


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