車のエアコン故障風が出ない症状、原因から対処方法まで｜ベテラン整備士が教えます！

車の不具合・故障で非常に多いのが「エアコン周り」。送風口から風が出ない、異音がするなど、さまざまな症状が起きます。今回はよく起こるエアコン故障の症状と原因、実際の修理事例をご紹介します。

車のエアコンの故障のよく起こる症状と原因

送風口から風が出ない

エアコン故障の原因の中でも、ブロアモーター、レジスターという部品の不良が原因で故障することが多いです。故障しているとエアコンの風が一切出なくなるという症状が出ます。また、エアーコンプレッサー自体の故障でも風が弱くなります。

エアコンスイッチを入れると異音がする

こちらもブロアファンモーターの故障によるものです。ブロアファンのON/OFFの切り替えがうまく行われなくなると、異音が発生します。

また、コンプレッサーオイルが減ったことによる焼き付きでも異音が発生する場合があります。

風が冷たくならない

冷房をかけたときに、風は来るけど冷えていない症状の場合は、コンプレッサーの故障、もしくはエアコンガス漏れの可能性が高いです。車は常に振動しているので、配管接合部分の隙間から漏れてしまうケースが多いです。配管に亀裂が入っているなど致命的な状態でなければ、エアコンガス補充で改善します。

実際の修理事例（ブロアモーター交換作業）

今回お預かりした車両は、ブロアモーターの故障によってエアコンの風が出ないでした。

エアコンの吹き出し口から風が出ない、エアコンスイッチを入れると異音がするという症状の入庫は実際多いです。走行距離がだいたい10万キロを超えた車両はブロアモーター劣化による故障が多いです。

この車両は走行距離が多かったので、ブロアモーター交換の方向で点検しました。ブロアモーターの設置場所は、運転席足元の奥や助手席足元のグローブボックスの裏などにあります。グローブボックスの下、助手席の足元の場合は周辺部品をはずし、簡単に脱着することができますが、運転席側にある場合は、センターボックスの裏の奥、足元にサイドブレーキがある場合はさらにその奥と、かなり大変な作業となります。

サイドブレーキが上にある車の場合はのぞき込んで簡単に脱着することができます。とは言ってもあの狭い部分に頭をねじこみ、腕を入れないと作業できないので体勢はとてもきついです。サイドブレーキが下にある場合は、サイドブレーキを外してから頭をハンドルの下に潜り込んでの作業に。ブロアモーター周辺にワイヤーや部品が多く付いている場合はインパネを全部外すという、大掛かりな作業になる場合もあります。

車種によって作業量は変わりますが、ブロアモーター交換はとても大変な作業です。

今回、入庫した車両は一番作業量の多いタイプでした。なるべくなら知恵の輪の様にワイヤーや部品の間をすり抜けて上手くブロアモーターを外せたら…と思いますがそれは無理でした。そのため、インパネを外してブロアモーターをむき出しにします。ブロアモーターは3本のビスで止まっているだけなのでここまで来ればとても簡単です。外したブロアモーターをバッテリーに繋いで、試運転をしてみます。きちんと回りますが、少しブレがありました。

新品への交換依頼でしたので、注文した部品も試運転を行いました。その結果、明らかに回り方が違いました。新品はやはり綺麗に高速で回りますが、古い部品は軸がずれていて回り方も遅く感じます。

ブロアモーターはピッタリとした空間にはめ込まれているので構造的にブレがあると回りません。

あとは新品の物を取り付け、インパネをはめて元に戻していきます。エアコンのスイッチを入れると、勢いよく風が吹き出してきました。

このブロアモーターという部品は頻繁に故障事例があるのに、どうしてもう少し脱着しやすいように設計されていないのでしょう…毎回疑問に思います。