国産エンジン史スポーツカー・ホンダツインカム復活とトヨタ4A-G

国産エンジン史スポーツカーその12は、ホンダのツインカムエンジン復活とトヨタ4A-Gをご紹介します。


S800から14年

国産スポーツカーとして、そして市販国産車として初めてDOHC(ツインカム)エンジンを実用化したホンダは、4気筒2バルブDOHCエンジンのAS800Eを搭載したS800が1970年に生産中止になったのを最後に、量産ツインカムエンジンの生産を停止しました。

その後ホンダは軽乗用車からも一時撤退して実用乗用車に専念し、ホンダ1300や初代シビックにハイパワーモデルを設定してはいたものの、スポーティなエンジンからは遠ざかっています。

いわば、まずはスポーツカーより量販車、軽自動車より登録車、スポーツエンジンより実用エンジン、実用エンジンの中でも環境対策エンジンと、自動車メーカーとして生き残るための戦いに専念していたわけです。

現在の大メーカーであるホンダとは異なり、当時のホンダはまだまだ「一地方の大きなバイク屋に毛の生えたような」企業規模であり、まずは企業としての足固めをしない事にはスポーツカー作りどころではありません。

それが初代シビックのヒットとアコード、プレリュードなど車種を拡大していく中で、ようやく量産スポーツモデルとスポーツエンジンを販売する余力が出てきました。

ロングストローク・高回転の「ZC」

こうした中で1984年、3代目シビック(ワンダーシビック。通称「ワンダー」)と初代CR-X(バラードスポーツCR-X。通称「バラスポ」)に相次いで「Si」というグレードが追加されました。

SはスポーツのS、iは「PGM-FI(ホンダの電子制御インジェクション)」のi。

スポーツモデル用エンジン「ZC」を搭載したスポーツモデルという事です。

14年ぶりに復活したホンダ・ツインカムエンジンはAS800Eの4バレルキャブレター式2バルブ791ccDOHCエンジンから大幅に進化し、近代的なPGM-FI式4バルブ1,590ccDOHCエンジンとなっていました。

その特徴はボア75.0mm×ストローク90.0mmの極端なロングストロークエンジンだった事で、ショートボアとアルミブロックにより軽量・コンパクトなエンジンに仕上がりながら低・中速域のトルクが力強かった事です。

しかも、それでいて当時としては高回転まで対応しており、低中回転域ではトルクフルな実用エンジン、高回転域では135馬力のパワフルなスポーツエンジンでした。

そのため、ZCにはDOHCだけでなくSOHCモデルも存在し、スポーツモデル以外でも実用性の高い1.6リッターエンジンとして、後にはVTEC化されて長く使われる事になります。

対照的な高回転型・トヨタ4A-G

ZCによるホンダ・ツインカム復活直前の1983年には、トヨタから新型スポーツエンジン、4A-Gが登場していました。

4代目カローラレビン / スプリンタートレノに搭載されてデビューした4A-GはZCとは対照的にボア81.0mm×ストローク77.0mmのショートストロークエンジンで、低回転のトルクは薄かったものの高回転まで回せばZCの135馬力を超える140馬力を発揮します。

コンパクトで1.6リッターのみだったZCとは違い、4A-Gは排気量1.5~1.8リッターでDOHCもSOHCも、キャブレター式からEFI(トヨタの電子制御式インジェクション)まである多彩な種類のあるA型エンジンの中で特別なスポーツ仕様という位置づけでした。

4A-Gはカローラレビン / スプリンタートレノだけでなくセダンのカローラGTやハッチバックのカローラFX GT、ミッドシップスポーツの初代MR2(AW11型)にも搭載され、トヨタのスポーツイメージ戦略で中核のひとつとなっていきます。

ZC対4A-G、テンロクスポーツ同士の激闘!

そのデビュー直後からZCと4A-Gはホンダとトヨタのスポーツイメージ戦略で優位性を示すため、激しい戦いを繰り広げます。

レースではホンダ シビックSiとトヨタ カローラレビンが、ジムカーナなどタイムアタック競技ではそれに加えてホンダ CR-Xやトヨタ MR2が対決し、「どちらのツインカムエンジンが優れているか」を競いました。

FF(前輪駆動)、FR(フロントエンジン後輪駆動)、MR(リアミッドシップエンジン後輪駆動)と多彩な駆動方式を持つトヨタに対し、FF一本槍だったホンダのクルマ作りも問われた戦いです。

結果的には時代の流れで他メーカーも含め、ハイパワーテンロク(1.6リッター)スポーツはFFに統一されていきますが、同じ排気量のスポーツエンジンでもキャラクターの異なるクルマが混在する面白い時代でした。


4A-GとZCの登場でハイパワーテンロクスポーツの世界は一気に過熱していき、90年代に入って三菱、日産が加わるまでホンダとトヨタの2大巨頭時代が続きました。

次回は、トヨタが2T-Gの後継として4A-Gを生み出したのと同じように、18R-Gや3T-GTの後継として生み出した80年代2リッタースポーツエンジンの傑作、トヨタ3S-Gを中心にご紹介します。