「BMW M1」は約40年前に製造された、BMWが手掛けたスーパーカーです。あまり知られていないかもしれませんが、それはこの車の不運にありました。ここでは「BMW M1」の特徴を7つと、この車の苦難の歴史について、詳しく説明しています。
BMW M1とは
BMWのモータースポーツ部門には、「BMW M」が開発した「M」から始まる、ハイパフォーマンスカーが存在します。5シリーズなら「M5」、6シリーズなら「M6」があります。BMWでは様々な種類のシリーズを輩出してきましたが、「BMW M1」とはどんな車なのでしょうか。ここから、BMWの元祖と言われているBMW M1の特徴や歴史を詳しく紹介します。BMWやモータースポーツが好きな方は、ぜひ読んでください。
BMW初のミッドシップスポーツカー
「BMW M1」は1900年代に、レースで圧倒的な強さを誇っていたポルシェに対抗するために作られました。「BMW M1」は打倒ポルシェを掲げて開発された、BMWとしては初のミッドシップスポーツカーです。レースに精通した人たちによるスポーツカーのチームを作り、組み立てから走行テストまでを一貫して行ってきました。その結果、24時間の耐久レースから始まり、F1に至るまで様々なモーターレースで、技術力の高さを発揮するようになりました。
総生産数477台
「BMW M1」は1978年に誕生し、生産が終了したのが1982年です。実質4年ほどしか生産されず、総生産台数も460台ほどと、とても貴重なスーパーカーとなっています。数あるスーパーカーの中でも、希少性が高いことも魅力のひとつです。BMWマニアだけでなく、スーパーカーマニアにまで人気の高い1台となっています。
BMW M1の7つの特徴
「BMW M1」とはどんな車なのか、概要としてご説明しましたがいかがでしたか。生産台数も少なく、「M」シリーズの初期モデルのため見たことがない人も多いのではないでしょうか。ここからは「BMW M1」の特徴をもう少し細かく見ていきます。「BMW M1」にはどんな特徴があるのかを7つ取り上げたので、ご覧ください。
特徴1:イタルデザイン・ジウジアーロがデザイン
「BMW M1」はイタリアに本社を置く、イタルデザイン・ジウジアーロがデザインを手掛けました。イタルデザイン・ジウジアーロは自動車のデザインを専門に行っている会社です。ランボルギーニ・カラやマセラティ・ブーメランなどの名車をデザインしたのもイタルデザイン・ジウジアーロです。「BMW M1」の洗練されたデザインは、今でもファンを魅了しています。
特徴2:M88型3453cc直列6気筒DOHCエンジン搭載
現在のBMWには、直列6気筒やV型8気筒のエンジンが使用されています。一方で「BMW M1」に搭載されたエンジンは、M88型3,453ccの直列6気筒DOHCエンジンです。「M1」にはもっと大排気量のエンジンを搭載する予定でしたが、オイルショックの影響を受け、M88型3,453ccの直列6気筒DOHCエンジンが採用されました。
特徴3:ドライサンプ仕様
当初の予定とは違った「M88型の3,453cc直列6気筒DOHC」を搭載したことで、「BMW M1」はホイールベースを延長しなければならなくなりました。そこで、潤滑系統にはドライサンプ仕様が採用されました。低重心のスポーツカーにするために、ドライサンプ仕様にすることでエンジンの搭載位置を大幅に下げることに成功します。レースのために作られた車だからこそ、安定したハンドル操作を実現するためにも低重心にする必要があったようです。
特徴4:バランスの良いエクステリア
「BMW M1」のボディサイズはコンパクトで、空気抵抗を極力抑えたような低重心なエクステリアは、まさにレースのために作られたスポーツカーといえるでしょう。イタルデザインによる洗練されたデザインやシャープなボディラインは、車を知らずとも「速そう」と思わせてくれます。イタリアの会社に委託をしてまでデザインにこだわった、BMWの思いが詰まったスポーツカーです。
特徴5:最高速度262km/h
「BMW M1」の最高速度は262km/hを記録しています。ちなみに東海道新幹線の最高時速が270km/hなので、そのスピードは驚異的です。また、発進加速性能は0-100km/h加速5.6秒というパフォーマンスを誇ります。静止時からわずか5.6秒で100kmに到達するということですね。現在でも0-100km/h加速が5秒台であれば、十分に高性能であるといえます。
特徴6:最高出力277ps/6,500rpm
出力は車のパワーを表しており、値が大きいほど車のパワーが大きいことを示しています。現在の車の出力と比較しても引けを取らない性能の「BMW M1」は、デザインだけでなく性能面でも高く評価されていたことでしょう。
特徴7:最大トルク330Nm/5000rpm
「BMW M1」は最大トルク330Nm/5000rpmを誇ります。トルクが大きいことでスムーズな発進が可能になるため、レースカーにとっては大切な要素になります。車選びには出力だけでなく、トルクが大事というカーマニアがいるほどです。
BMW M1開発までの苦難の歴史3つ
BMWのミッドシップスポーツカーとして華々しくデビューした「M1」ですが、その開発は苦難の連続でした。BMWにミッドシップエンジンのノウハウがなく、ランボルギーニに委託をするしかなかったこと、オイルショックが重なったことなど、あらゆる苦難を乗り越えて完成したのが「M1」なのです。それでは「BMW M1」の開発にはどんな苦難があったのか、詳しくご説明します。
苦難の歴史1:ランボルギーニの経営不振
BMWはミッドシップエンジンを量産したことがなかったため、シャシーの開発と製造をランボルギーニに委託します。フォーミュラカーのシャシー製作で有名になる、ジャンパオロ・ダラーラが設計を担当し順調に開発が進むように見えました。ですがランボルギーニの経営不振により、開発・製造が一向に進まないという状況に陥ります。見かねたBMWが、ランボルギーニを買収しようとするも下請けの反発を受け頓挫してしまいます。
苦難の歴史2:月産台数ノルマが達成できない
グループ4でレースに出場するには、当時のFIAの規定で決められた期限内で一定数の生産台数が条件でした。ですが、「BMW M1」の生産台数が規定より少なく、ノルマを達成するには絶望的な数字でした。シャシー製作をランボルギーニからドイツの会社へ変更しましたが、ボディのデザインはイタリアで行い、またドイツのBMW本社へ戻ってくるという生産効率の悪さが原因でした。
苦難の歴史3:オイルショックの風
「BMW M1」は本来ポルシェに対抗するため、4.5リッターV12エンジンを搭載する予定でした。ですが開発の途中でオイルショックが起こり、その影響はモータースポーツにも及びます。オイルショックという時代に、排気量が多いエンジンを搭載することに反対の声が上がります。そこで妥協策として、ツーリングカー用の3.5リッター直6DOHCエンジンを積むことになるのです。
歴史が詰まっているBMW M1
オイルショックによるエンジンの仕様変更、様々な会社に委託する製造方法による作業効率の低下など、生産する過程で様々なハプニングがありました。しかし、それによる生産台数の少なさが、今となって価値を高めているように感じられます。このような歴史が詰まっている「BMW M1」は、悲運のスーパーカーとしても有名です。そして、それもまた「BMW M1」の魅力となっているのではないでしょうか。