流行のアイテムやスポットを散りばめた恋愛ドラマ、いわゆるトレンディドラマが90年代に大ヒットしました。
今回ご紹介する「私をスキーに連れてって」は当時ブームとなりつつあったスキーをテーマに、漫画「気まぐれコンセプト」等でトレンドメーカーとなるクリエイター集団ホイチョイ・プロダクションズが1987年に制作したトレンディドラマのはしりと言える作品です。
あらすじ
スキー用品メーカーの軽金属部に務める文男(三上博史)は口下手で彼女もいない冴えないサラリーマンです。
文男はスキーの腕前だけは超一流で、趣味を兼ねてスポーツ部の新製品開発の手伝いに夢中になっていました。
新製品のテストを兼ねて、文男はスキー仲間たちとクリスマスイヴの志賀高原に向かいました。
そこで雪に埋もれている初心者スキーヤーの優(原田知世)を助け出した文男はかわいらしい優の姿に一目惚れしてしまいます。
文男は思い切って優に電話番号を聞きますが、警戒した優は嘘の番号を教えます。
ところが東京に戻ったある日、仕事のミスを謝りに重役の部屋に行った文男はお茶を持ってきた優と再会しました。
実は優は同じ会社の秘書課に務めていたのです。
スキー仲間のヒロコ(高橋ひとみ)と真理子(原田貴和子)は二人の雰囲気を察知し、半ば強引にくっつけようと画策します。
その甲斐もあり文男と優は大晦日の夜に結ばれ、新年を二人で迎えます。
バレンタインデー、二人は仲間たちと共に完成した新製品のウェアを着て志賀高原へ羽を伸ばしていました。
ところがこの日、万座で行われる新製品発表会に手違いでウェアが届いていない事が発覚したのです。
事態を知った優は文男と連絡を試みますが姿が見えません。
無理と承知のうえ車で走りだすヒロコと真理子を送り出した優は、文男に置き手紙を残し難易度の高い万座へのツアーコースへ単身向かいます…
トヨタ セリカ GT-FOUR(ST165型)
ヒロコと真理子の愛車として登場するのが4代目セリカのハイパフォーマンスモデル・GT-FOURです。
トヨタがWRC王者を目指して開発したフルタイム式4WDを搭載したマシンです。
1990年にカルロス・サインツ(現在息子がF1で活躍中)にドライバーズタイトルをもたらしました。
劇中で文男が運転するスタッドレスタイヤを履いたカローラⅡ(L30型)が雪道で立ち往生してしまいます。
その横を 「所詮4駆の敵じゃないよね!!」 と言い残し軽々と駆け上がっていきます。
また 「凍ってるね」 と言い残し、雪の壁をジャンプしゲレンデを疾走しながら万座へ向かう姿も印象的です。
WRCカーとは思えない「流面形、発見さる。」という広告コピー通りの美しい造形が特徴です。
現代のようにSUVという概念もなく、4WD車の多くがパートタイム式だった当時このモデルはスキー場を目指す若者の憧れの的となりました。
「スキーに行くなら4WD」という刷り込みに見事成功したのです。
本作はバブル前夜、日本全体が得も言われぬ希望に満ちていた時代をみずみずしく描かれています。
寒い夜、何をやっても楽しかったあの頃にタイムスリップした気分でもう一度見てみたい…そんな1本です。