忘れらがたきメルセデス・ベンツの美しきオールドクーペ、300SL

メルセデス・ベンツ 300SLは「最高のスポーツカー」か?

艶めかしいシルバーのボディに、クーペボディはガルウイングドアもよく似合う。

刺激的であり、権威主義的でもあり、そしてエロティックでもある、「スポーツカーが持つべき要素」を全て兼ね備えた稀有な1台が、メルセデス・ベンツ 300SLです。

こう書くと意外なように思えますが、スポーツカーとは「走行性能に優れた車」ではありません。

単に速い、曲がる、止まるといった要素を兼ね備えればいいのならば、レーシングカーこそが最高のスポーツカーでしょう。

しかしスポーツカーとはあくまで、ドライバーやオーナーにダイナミックさやエレガントさを与えるために存在し、それに成功して初めて、最高のスポーツカーたりえます。

実際、300SLに実際に乗ったことのあるドライバーは、そのあまりのフラットトルク感から盛り上がりに欠けるエンジンフィールを「おとなしいトラックのように退屈」と表現し、フィーリングが曖昧でシャープさの欠片もないハンドリングはひたすらダルイそうです。

奇しくも日本でもトヨタ2000GTも、実車は似たような評価を受けているのですから、やはりスポーツカーとはそういう乗り物なのでしょう。

それとも、そのような車を速く走らせるだけの腕を持ったドライバーを、ただひっそりとまっているだけかもしれませんが。

レーシングカーを市販車仕立てへ

その300SLですが、意外にもその生まれはレーシングカーです。

世界一過酷な公道レースとしてメキシコで開催されていた、「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」の1952年レースで優勝したメルセデス・ベンツワークスレーシングカーがそれで、その勝利は北米のドライバーたちに鮮烈な印象を与えました。

そこでニューヨークの輸入ディーラーは「これこそメルセデス・ベンツのイメージを北米で盛り上げる好機!」と、1,000台の注文書とともにベンツ本社を説得。

その結果、1954年のニューヨークショーで300SLは市販車として華麗なデビューを果たしました。

なお、300SLはあくまで「イメージリーダー」であり、量販車としてのヨーロピアンスポーツを求める層に向けたモデルも用意されていました。

それが190SLですが、単に豪華モデルを出すだけでなく、それをフルに活かして手の届く量販モデルを準備しておく抜け目のなさは、最近のスーパーカーばかり発売したがる自動車メーカーにも見習ってほしいものです。

 

エンジンからガルウイングまで異例づくめ

何しろ出自がレーシングカーであるイメージリーダー、しかも量販は現実的なモデルである190SLに任せておけるものですから、300SLはかなり異例づくめの車になりました。

まず、構造的に通常の車のようなドアは設けられません。

ドア開口部をボディ下部にまで設けられず、かなり高い位置の開口部にまたいで乗り込むような、ドレス姿の婦人はもちろん、体型によっては男性でも乗り降りにかなり難儀を強いられる仕様となりました。

当然横開きのドアなど設けられないので、上に跳ね上げるガルウイングドアはこうして設けられましたが、それでもウィンドウ部から上しか開かなかったレーシングカー時代より乗降性は向上しています。

後にオープンカータイプが設定された時には通常のドアとともに少し乗降性はマシになりましたが、最後まで300SLの特色となっています。

また、エンジンも自動車用エンジンとしては世界で初めて、燃焼室に直接燃料を噴射する機械式燃料直接噴射が採用されました。

航空機用としては第二次世界大戦中にダイムラー・ベンツの航空機用エンジンとしてお手の物な技術でしたが、自動車用としてはコンピューター制御も無い時代でもあり、燃焼室内のオイルを洗い流してしまうので劣化が早く、頻繁なオイル交換を求められます。

構造・メカニズムともに異例かつ問題の多い車でしたが、それでも内外装のエレガントさと、それによりドライバーと同乗者を引き立てる効果は誰にも否定できませんでした。

日本では力道山と石原裕次郎が所有

もちろん、とてつもなく高価な車だったので、日本で新車を購入して乗っていたのは力道山と石原裕次郎くらいでした。

1960年代に創刊した自動車雑誌「カーグラフィック」では何とかして300SLの試乗記事を書きたかったものの、この2人がオーナーでは貸してくれとも言えず、仕方なく在日米軍のカーマニアからオープンモデルを借りたと言われています。

それだけ特別な車だということですが、トヨタ2000GTとは全く別次元の世界的名車ということもあってメルセデス・ベンツの親会社、ダイムラーもその意匠権をかなり厳しく管理してきました。

日本ならトヨタ2000GTのレプリカは気軽に作られているイメージもありますが、300SLは2013年に無許可でレプリカを販売していたドイツ国内の企業をダイムラーが提訴。

勝訴すると同時に、製造をやめさせるだけでなく、ダイムラー自身がレプリカを破壊する模様まで公開し、300SLのイメージを守る強い意思を示しました。

名車も「超」がつくくらいになると、ただ生まれるだけでなく、こうして守られるものなのかもしれませんね。

 

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