2011年3月の東日本大震災ではエスティマハイブリッドなどが、2016年4月の熊本地震では三菱アウトランダーPHEVが投光器や家電への電力供給で大活躍しました。
完全に停電し、建物が被災してディーゼル発電機による予備電力も満足に動作しない状況では、たとえ100V電源であっても、あると無いとでは大違いです。
とはいえ、自動車から給電する100V電源自体はそう珍しいものではありません。
ホームセンターやカー用品店、あるいは通販などで自動車のシガーソケットから出力できるDC12V電源を、家庭用のAC100V電源に変換するコンバーター(変換器)は随分前からポピュラーだったからです。
昔ならまだバッテリーのもちが悪かった頃のノートパソコンのために、今でも携帯電話の充電などで非常に重宝していると思いますが、それらコンバーターを使った100V電源というのは使用できる電気機器に非常に制限があります。
具体的に、電気抵抗で何かを暖めるような電化製品、ホットプレートやドライヤーの類は全く使えないのです。
筆者も昔、無理してコンバーターから取った100V電源で野外で扇風機を回そうとした事がありますが、風を起こすほどの動力を扇風機に与える事ができませんでした。
また、車両本体(大抵は内装)に100V電源が使えるコンセントがオプションまたは標準装備でついているタイプでも、大抵の車は100Wが上限で、やはりほとんど家庭用電源としては役に立たず、あまり明るくない電球をつけるか、パソコンやスマホ、タブレットを充電するのが関の山です。
しかしこうした「とりあえず100V電源のコンセントを挿せる」というだけの給電とは一線を画している車も中には存在しており、今回の熊本地震以前から活躍してきました。
以下にご紹介しましょう。
また、もしも車の走行中に災害に遭った際の対処法は、以下の記事で紹介しております。
家電の使える100V電源・1500Wまで使用可能車両
この「1500W」というのが重要ですが、これは調理用のホットプレートや電子レンジが目安となっています。
他にもドライヤーや冷蔵庫の電源にも使え、家庭用の電源をかなりまかなう事ができる他、バッテリーが切れてもエンジンを始動して充電する事で(ただし、充電と給電が同時にできない車種の方が多いので、明かりの不要な昼間に充電するのが望ましい)、最大でガソリンが無くなるまで7日間程度、平均的な一般家庭の電力をまかなう事ができるのです。
その一覧ですが、まずは標準装備車種
【三菱】
アウトランダーPHEV
【トヨタ】
初代アルファードハイブリッド
初代/2代目エスティマハイブリッド
プリウスPHV
MIRAI
【ホンダ】
クラリティFCV
さらに一部が標準装備、または標準でなくともオプション装備で対応可能な車種としては
【トヨタ】
3代目/4代目プリウス
プリウスα
SAI
シエンタ
3代目ハリアー
3代目アルファードハイブリッド
2代目ヴェルファイア
他にもあるかと思いますが、ざっと見た感じでは以上です。
EVでもホンダなどが発売している給電用のアダプターを装着する事で、日産リーフやe-NV200などが給電可能になります。
中にはアウトランダーPHEVのように、家庭の側にPHEV接続用の配電盤オプションを設置しておけば、非常時にはアウトランダー単独で最大7日の家庭電源をまかなえるものすらあります。
災害時の使い方
こうした給電可能車両のうち、役所や公的機関に配置されているものに関しては非常時に避難所や必要な行政部署、病院などの施設や、信号の停電が回復するための非常用電源になります。
家庭用としては家屋が無事なら非常用電源として、もし無事でない場合には、可能な限りの家電や食材を持ち出せば、災害支援物資が届くまでの時間、野外での宿泊で耐え忍ぶ事が可能です。
こうした用途としてはまさに「自走可能な巨大モバイルバッテリー」とも言える電源供給車ですが、燃料補充のアテさえあれば、さらに稼働時間を伸ばす事もできます。
(ただし、津波で根こそぎ流されるほどでも無い限り、大抵は電気が一番早く復旧します)
そしてこの巨大な「自動可能なモバイルバッテリー」の真骨頂は、いざという時に燃料さえあれば自力でその地域からの脱出が可能な事で、災害時にはかなり頼りになる存在と言っていいでしょう。
2度の大地震でその威力を発揮し、自治体や公的機関でも導入が進んでいるHVやPHEV、PHVですが、今後は車種をさらに拡大してあらゆるクルマで電源供給が可能になると、復旧までの期間の不安を大幅に取り除く事ができますので、各メーカーのラインナップ拡充が見込まれるところです。
最後に、同じようにエンジンを動かして発電する産業用発電機との違いですが、自動車として外部への防音や防振が考慮されていて静かな上に、ある程度バッテリーに充電可能な事から、エンジンをかけずとも給電できる能力があるという事が最大の違いかもしれません。
産業用発電機の騒音による精神的ストレスというのも災害時にはかなり気を遣うところですから、その意味でも、多少効果でも給電可能な自動車が増えていってほしいと思います。
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