快適性で課題になる「窓」
基本的に簡素な作りであるため、トヨタ コムスや日産 ニュモービリティコンセプトの基本形はドアすら持ちません。
トヨタ コムスはセブンイレブンやヤクルトの配送用で使われているもので、昔のジープのような「幌」式の仕切りはありますが、その場合窓はビニールです。
日産 ニューモビリティコンセプトもドアを装着したバージョンもあり、新潟などで行われた冬季の実験車両では、ジッパーで開閉可能なビニール窓がついています。
ホンダ MC-Bは標準でドアがあり窓はニューモビリティコンセプトと同様。
これはなぜかと言うと、超小型モビリティの規格そのものではドアや窓で外と完全に仕切った「密閉式キャビン」は認められているものの、肝心の道路交通法で密閉式キャビンによる公道走行が認められていないからです。
コムスの「幌」やその他の「ジッパー開閉式ビニール窓」は雨天時でも走れるための妥協案として国交省に特例として認められているようですが、何か釈然としないものがあります。
現状、超小型モビリティとして認められてはいないものの、将来型コンセプトとして作られた「rimOnO(リモノ)」では横開き式の簡易な樹脂製と思われる開閉窓がありますが、ビニール製よりは開放時のバタつき感が無さそうです。
このあたりは、実際の実用化にあたって法的要素をクリアして、樹脂製で良いので「窓」が欲しいところですね。
これは防犯上の必要性もありますから、少なくとも外側から簡単に開かない事も条件になります。
曇り止め装置が欲しいところ
ただし、密閉式キャビンの場合どうしても気になるのが「結露」です。
梅雨時などは特にそうですが、雨が降って濡れた服や靴のままクルマに乗り込むと、窓の内側が一気に曇る時がありますよね?
超小型モビリティの場合、普通のクルマと違って狭いのでタオルや雑巾で窓の内側を拭き取る事は容易ですが、それでも走行中にフロントガラスの結露は絶対に避けたいところ。
125ccまでのエンジン、あるいはそれに相当するモーターで走行する超小型モビリティでは、さすがに日本の酷暑にまで対応したエアコンまでは装備できないでしょう。
軽自動車やコンパクトカーですら、十分な冷却性能を持たないものも多いのですから、超小型モビリティではなおさらです。
ですが、せめてフロントガラス内側に風を当てて乾燥させる「デフロスター」は装備してほしいと思います。
ファンがあれば、車内の空気循環にも役立ちますし、快適性や安全性でこの有無は大きいでしょう。
積載量をどう考えるか
超小型モビリティの用途の中には、個人用であれば買い物が、業務用であれば荷物の運搬が当然のように含まれます。
乗車定員2名(大人1名+子供2名も可)までOKで125ccエンジン相当の動力を使える超小型モビリティでは、1名乗車なら荷物を積むのも、それで走るのも楽々です。
ただ、それが2名乗車となると、2名分の荷物を積めるのか、という問題が出てきます。
車体外部にカゴやボックスを設置する事で、その中に入れて運ぶ事もできますが、カゴの場合は防犯上の問題もありますし、ボックスの場合はそれ自体の重さも問題です。
それをうまくクリアした超小型モビリティこそが、実用性の高いものと言えるでしょう。
ここは規格というより、各メーカーが腕の振るいどころです。
登坂能力が大きな課題
最高速度を60km/hまでに制限されているとはいえ、流れの速いバイバスなどに行かない限り、超小型モビリティの速度性能はそれほど問題にならないでしょう。
細い路地などをキビキビ走るのであれば、40km/hも出れば上等です。
それより問題なのが登坂性能で、起伏の激しい日本の地形では、坂の途中やその上に住宅街がある事など珍しくありません。
都市部でさえもよく見れば起伏の激しいところは多く、超小型モビリティに実用性を求めるなら、最高速度より最低でも30km/h程度で、スーパーの屋上駐車場に駆け上がるスロープ(たまにひどく急なものがある)を登れる性能は必要でしょう。
そうなると、ガソリンエンジンではどうしてもトルク不足になるので、実用性を求める超小型モビリティは低回転からの大トルクが見込めるEV(電気自動車)が、日本では必然だと言えます。
ガソリンエンジンでも変速機を組み込み、急な登り坂で使うスーパー・ロー的なギアがあれば対処可能ではありますが、価格も上がりますし、高価な事が許される趣味性の高い超小型モビリティに限られるかもしれませんね。
次回は「動画で見る超小型モビリティの実際」
以上、今回は超小型モビリティの実用性について考えてみました。
次回は、実際に走行している、試乗している超小型モビリティの動画を見ながら考える「動画で見る超小型モビリティの実際」をご紹介します。