自動車、それは決して安くないお買い物ですよね。容易に乗り換えられない性質柄、購入する車を決めるために様々な車種を乗り比べたい方は少なくありません。あるいは私のように車を趣味として、車種ごとの違いそのものを楽しむため乗り比べをしたい方もいらっしゃるかと思います。『Anyca』をはじめとした個人間カーシェアなら、そんなわがままを叶えてくれそうな気がしませんか?私もそんな一人でした。
しかし、実は個人間カーシェアではそれが許されない仕組みになっているんです!
この記事では「より多くの車種を乗ってみたい!」という方々に、大手の個人間カーシェアリングサービス『Anyca』を例に挙げながら、「なぜ現行の制度ではそれが叶えられないのか?」「代替案として何があるのか?」といったお話をしていきます。
複数車種の乗り比べ不可能?『Anyca』で直面した警告文
個人間カーシェア、特に『Anyca』は個人所有の車をシェアに出しているため、普段なかなか乗れないスポーツカーやクラシックカーを運転することができます。例えば『RX-7』、『スープラ』、『シトロエン2CV』が挙げられます。
かくいう著者も調子に乗ってさまざまな車を借りていましたが、今年(2020年)6月-11月の間に約6台ほど借りた頃、ある衝撃的通知が運営から送付されてきたのです。
え、使用制限の可能性!?
なにか規約違反を犯してしまったのでしょうか?若しくは車を借り終えた後に何かしら故障させてしまったことが判明したのでしょうか?
通知を見た著者は慌てましたが、落ち着いて内容をよく見ると、どうやらそうではない模様。
警告理由を端的に述べると、あくまで『Anyca』は “共同使用契約” という形式をとっているため、複数のオーナーと一度きりだけのシェアばかりであった著者は、危うくその形式から逸脱する瀬戸際だったということだそうです。
“共同使用契約” と聞いても何のことやら、あまりイメージが沸きませんよね。そこで次章では、『Anyca』の規約を見ながら具体的な仕組みについて解説していきます。
“共同使用契約” とは?乗り比べできない根本理由
“共同使用契約” を理解する上で、道路運送法上規定された車の貸し出しについてのルールを頭にいれておく必要があります。
通常レンタカー業者のように車を貸し出す場合、『自家用自動車有償貸渡事業』の許可がなければ自家用車を生業として有償に貸し出すことは禁じられています。個人間カーシェアはそれこそ個人単位での貸出にあたるので、一見違反しているように見えますね。
しかし、『Anyca』はこれに対し “共同使用契約” という形式をとることで法律への抵触を避けています。
実は自動車の貸出業許可には「車を借りる人がその車の使用者(共同使用者)であれば許可不要」という例外規定が存在しており、『Anyca』はその例外規定に則って、車本体の値段と維持費を共同で負担し管理権限を分け合うルールを設定しています。
第4条 本サービスの内容
本サービスは、本会員同士が、自動車について、当該自動車の取得及び維持に必要な実費等を共同で負担し、その使用及び管理に関する実質的な権限と責任を分担することを前提として、共同の使用について定めた契約(以下、「共同使用契約」といいます。)を締結し、自己の欲求充足のために主体的な立場において自動車を共同使用するためのプラットフォームサービスです。本サービス上で共同使用の対象となる自動車を「本自動車」といいます。引用: Anyca会員規約 https://anyca.net/terms_of_use
確かに『Anyca』は貸出の価格を年間の維持費ベースで上限を自動算出し、営利目的での貸出ができないように設定されていました。
この枠組みの中で考えると「一度きりの利用」は確かに “共同使用契約” にあたりませんね。
規約の読みこみが足りなかったと認識し、著者は大きく反省しました。
現行制度内で沢山の車種を乗り比べするには?
さて『Anyca』による乗り比べ体験ができないことがわかった今、どのような手段が残されているのでしょうか? 大きく2点ほど方法があります。
まず一つ目の手段が在り来たりではありますが、レンタカー会社を使うこと。その中でも普段乗れない一風変わった多彩な車種を取り扱っている例を挙げてみましょう。
まずは有名どころにはなりますが千葉県野田市を拠点とする『おもしろレンタカー』さん。国産スポーツのラインナップで右に出る業者は恐らくいないのでは無いでしょうか?『頭文字D』や『湾岸ミッドナイト』に登場するような王道的車種はあらかた揃っているようです。
次にご紹介するのが中部地方を中心として営業中の「日本一楽しいレンタカー」を自負する『スパイスカーレント』さん。こちらは車好きが唸るようなマイナーな車種に自信アリです。『シトロエンC6』や『フィアット500』など、イタリアやフランスのエンスーなラインナップに舌鼓をうってしまう方は一度借りてみる価値のあるサービスと言えるでしょう。
二つ目の手段ですが、これはカーシェアサービスを複数登録しておく方法です。しかし現実問題として、『Anyca』以外にある程度の登録台数と豊富な車種を取り揃えたサービスは『CaFoRe』しかなさそうです。こちらのサービスではシェアの “価格” を貸し借りの対価と定義せず、「貸出できる日時の把握など出品者との独占的交渉権」を対価としています。『Anyca』と異なり、多くの車種を借り続けても問題ないのか検証していく必要はありますね。UIやシステムの使い勝手も『Anyca』に比べるとまだまだ発展途上に見込まれることから、今後が期待されるサービスと言えます。
カーシェアでできること、できないこと、これから起こること。
「多数の車種をいっぱい乗り比べたい!」という思いに現行の制度でカーシェアがどこまで対応できるのか? 『Anyca』を主軸に置きながら今回はご紹介しました。国内では自動車を貸し出すことに対する道路交通法をはじめとした法規制、許認可が存在していることから、個人間カーシェアというサービスがまだまだグレーゾーン気味であることも副次的に知ることができたかと思います。
『タイムズカーシェア』や『カレコ』など大手のカーシェアサービスが台頭する中、多彩なラインナップを武器として相対する個人間カーシェアは、車の運転そのものを楽しむホビーとして、大いに可能性を感じるサービスです。もちろん個人では賄えない責任問題や保険の問題など多くの課題はありますが、クリアされれば一つのエンターテイメントとして発展していくことでしょう。
今回ご紹介したサービスを皆様も是非ご利用してみてはいかがでしょうか?また一つ、車と関わる喜びを見出せるものと著者は確信しています。