スーパーチャージャーとはどのような機械なのでしょうか。ターボチャージャーとの仕組みのちがいや、スーパーチャージャーを車に搭載する事でのメリット、デメリットをご紹介していきます。また、スーパーチャージャー搭載の車種も紹介しますので、購入の参考にしてみてください。
スーパーチャージャーの仕組みとは
スーパーチャージャーとは、エンジンのパワーを上げるための装置で、過給機の一種です。
クランクシャフトの回転やモーターの力を利用してコンプレッサーを駆動させ、多量の空気をエンジンのシリンダーに送り込むことで、自然吸気よりも高い燃焼エネルギーを生み出すという仕組みです。
飛行機や自動車に使用されますが、スーパーチャージャーの中でも仕組みや方式の違いがあるため、用途に合ったものを搭載する必要があります。
飛行機に使用
飛行機へのスーパーチャージャーの使用は、技術の発展により飛行機が大気圧の低い高度まで飛行するようになった際の、エンジンの出力低下を補うことを目的としていました。
元々は飛行機のために開発された仕組みですが、その後新たにターボーチャージャーやジェットエンジンが登場したことに伴い、飛行機への使用は主に小型機への搭載に限ったものとなり、自動車用として普及していきました。
自動車に使用
自動車への使用については、エンジンの排気量はそのままに、より大きなパワーを得るための仕組みとして搭載されています。
自然吸気のエンジンであれば、出せるパワーは排気量によってある程度決まっています。しかしエンジンの排気量を増加させようとすると、エンジンが大きく重たくなるという問題が生じます。
スーパーチャージャーの使用は、排気量を変えずに多くの空気をシリンダーへ取り込むことでパワーを得ることを目的としています。
スーパーチャージャーとターボチャージャーの仕組みの違い
スーパーチャージャーが、クランクシャフトの回転やモーターの力でコンプレッサーを駆動させるのに対して、ターボチャージャーはエンジンの排気ガスを利用する仕組みです。
ターボチャージャーは、排気ガスの流れを利用してタービンを回し、その力でコンプレッサーを駆動させます。
いずれもシリンダーに空気を押し込むことで出力を上げるという仕組みは同じですが、空気を送るためのコンプレッサーの駆動方式の違いで区別します。
スーパーチャージャーの仕組み2選
スーパーチャージャーの仕組みは、空気から生まれる圧力をどう使うかによって分類する事ができます。発生する力の使い方の違いや、それによって生じるメリット・デメリットに合わせて、飛行機用や自動車用など用途に合わせて搭載します。
ここでは、スーパーチャージャーの仕組みを大きく2つにわけ、それぞれの特徴などについてご紹介します。
仕組み1:速度型方式
速度型方式とは、空気をインペラという回転式の羽根車によって加速させ、その高速の空気の流れを利用する仕組みのことです。
ガスタービンエンジンやジェットエンジンなども、速度型の方式を採った機関です。燃焼効率がよく、大きなエネルギーを連続して扱うことができるため、飛行機や工場設備などの大型機器に使用されることが多い傾向にあります。
デメリットとして、タービンが高速回転する際の騒音の問題などが挙げられます。
特徴
速度型方式の特徴は、連続作動を行うことにより大量の作動ガスを利用できる点です。
機関容積や質量に対して大きな出力を実現できる仕組みのため、そのメリットを利用してジャンボジェット機などの航空用エンジンや、ロケットエンジンにも使われることがあります。
燃焼効率の面では優れていますが、自動車のように走行状況に合わせて細かく速度などを変える必要があるシーンではロスが生じるため、大型機向きと言えるでしょう。
仕組み2:容積型方式
容積型方式は、空気を圧縮して起こる体積変化を利用するものです。
エンジンが回転する力を利用してピストンやスクリューを動かし、空気を圧縮させ、それをエンジンに送り込むという仕組みです。
自動車やバイクに搭載されるレシプロエンジンやロータリーエンジンは、そもそもが容積型の機関であるため、速度型よりも容積型のスーパーチャージャーと相性がいいとされる傾向にあります。
特徴
容積型方式の特徴は、間欠的な作動であるという点です。
連続作動ではなく、一定の間隔をあける間欠作動であることから、出力変化のコントロールがしやすく、自動車やバイクに搭載するにあたって使い勝手がよい仕組みだとされています。
容積型方式の中でも、更にルーツ型、リショルム型、スクロール型などに分かれますので次にご紹介します。
ルーツ型
ルーツ型とは、繭型や三つ葉型の一対となるコンプレッサーローターを互いに逆回転させることで空気を吸入し送り出す仕組みです。
ルーツブロアと呼ばれることもあり、元は溶鉱炉の送風機として誕生しました。
コンプレッサーローターの駆動はエンジンのクランクシャフトに連動させて行うため、エンジンの回転速度と空気の吐出量が比例することになります。
リショルム型
リショルム型は、ねじれた一対のスクリュー型ローターが作る空間が、回転によって狭まるのを利用して空気を圧縮し、吐出するという仕組みです。
ルーツ式にはない内部圧縮機構が備わっているため、高圧力比領域でも効率がよいとされています。また、作動時の振動が比較的少ないことも特徴と言えます。
リショルム・コンプレッサー、スクリュー式と呼ばれることもあります。
スクロール型
スクロール型は、一対の渦巻き型のスクロールをひとつは固定しもう片方を円運動させることで、外周から取り込んだ空気が渦巻きの中心に向かって圧縮されていき、吐出するという仕組みです。
スクロール型は、他の方式に比べると車両用としての耐久性などが劣ると言われており、フォルクスワーゲンが過去に実用化したのが数少ない例のひとつです。
スライディングベーン型
スライディングベーン型は、ローターに組み込まれた羽根型のベーンが、ローターの回転に伴ってシリンダー内で空気を圧縮し、吐出するという仕組みです。
スライディングベーン方のスーパーチャージャーは内部構造がシンプルでコンパクトに収まるため、バイク用としても採用されてきました。ベーンがシリンダー内周面との摩擦を起こすため、潤滑用のオイルタンクが別途設けられる場合もあります。
スーパーチャージャーの特徴6選
ここまで、スーパーチャージャーの仕組みや各方式の違いをご紹介してきましたが、実際に車にスーパーチャージャーを搭載することで、どのようなメリットが受けられるのでしょうか。
ここでは、スーパーチャージャーが車に及ぼす働きや、装置としての特徴について6つご紹介します。
特徴1:エンジンの動力を利用する
スーパーチャージャーの特徴1つ目が、エンジンの動力を利用するという点です。
ターボチャージャーが排気ガスの力を利用する仕組みであるのに対して、スーパーチャージャーはクランクシャフトなどからエンジンの動力を直接利用するため、エンジンの回転数にあわせて低回転からでも一定のパワーを得る事ができます。
デメリットとしては、コンプレッサーに回す分、エンジンの出力が余計に必要になるということが挙げられます。
特徴2:スーパーチャージャーは軽量
スーパーチャージャーの特徴2つ目が、軽量であるという点です。
エンジンルーム内にコンパクトに収める事ができる小型さと軽量性は、エンジンの排気量を変えずに、更なるパワーを得ることを目的としたスーパーチャージャーには必要不可欠な要素であると言えます。
パワーを得るだけでなく、燃費の面でも車両の総重量は関わってくるため、軽量であることは大きなメリットとして挙げられるでしょう。
特徴3:ノッキングが起きにくい
スーパーチャージャーの特徴3つ目が、ノッキングが起きにくいという点です。
ノッキングとは、エンジンに強い負荷がかかった際に起こる異常燃焼のことで、不快な音や振動を伴って発生します。ノッキングが激しいと、燃焼によって生じた熱などによってエンジン部材が破損することもあります。
ノッキングの発生を少なく抑えるということは、エンジンの寿命の面で重要となります。
特徴4:排気ガス浄化性能
スーパーチャージャーの特徴4つ目が、ターボチャージャーと比べた際に排気ガス浄化性能に優れているという点です。
排気ガスの流れを利用するターボチャージャーでは、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を効果的に活用する事が難しいとされています。
スーパーチャージャーは、エンジン動力を利用する仕組みで、排気系に手を加える必要がないので、触媒を使った排気ガス浄化性能の面では有利と言えます。
特徴5:エンジンに負荷がかからない
スーパーチャージャーの特徴5つ目が、エンジンに負荷がかからないことです。
排気の熱を受けやすい仕組みのターボチャージャーに比べて、スーパーチャージャーの稼働は電磁クラッチで制御された間欠性のものであるため、アイドリングの際などコンプレッサーでの過給が不要な場合には、稼働が断続されます。
そのため熱がこもったりせず、エンジンへの負荷が少なく済みます。
特徴6:ターボチャージャーに比べ燃費効率が良い
スーパーチャージャーの特徴6つめが、ターボチャージャーに比べて燃費効率が良いことです。
ターボチャージャーでは、コンプレッサーを動かすためのタービンを回せるだけの排気が出るまでは、パワーが出ません。エンジンがかかってからターボが作動するようになるまでの時間を、ターボラグと呼ぶこともあります。
スーパーチャージャーはエンジンの動力と連動する仕組みであるため、低回転域からでも作動し、燃費効率が良いと言えるでしょう。
スーパーチャージャー搭載の国内・海外車種
国内で現行販売されている、スーパーチャージャー搭載の車種は限られてきているのが現状です。
現在自動車メーカー純正でスーパーチャージャーが搭載されている車種については、主に燃費効率を高めるための仕組みとしての意味合いが強いと言えるでしょう。
過去にはトヨタ「エスティマ」やスバル「ヴィヴィオ」など、パワーアップやより気持ちの良い走りを目的として搭載されていたこともあり、中古車市場やアフターパーツとしての需要が主と言えます。
- 日産「ノート」
- マツダ「MAZDA3」
- トヨタ「エスティマ」
- スバル「ヴィヴィオ」
- アウディ「A6 allroad quattro」
- ボルボ「XC90」
- ポルシェ「カイエンSE ハイブリッド」
歴史が古いスーパーチャージャーの事を知ろう
スーパーチャージャーは、古くは飛行機への利用から誕生した歴史を持った装置です。
現行販売されている中でスーパーチャージャーが標準搭載されている車種は限られていますが、現在お乗りの愛車のパワー不足にお悩みの方や、これから中古車の購入を検討されている方は、知っておいて損はない知識ではないでしょうか。
燃費の面や車両との相性も考慮しながら、是非検討してみてください。