アメリカ車の多くには、OHVというエンジンが搭載されています。今回は、OHV型式のエンジンの特徴をはじめ、アメリカ車にOHVが数多く採用される理由も説明しています。アメリカの車が好きな方やアメリカ車を購入する方も、OHVについて理解しておきましょう。
OHVとはどんな吸排気形式?
エンジンにはさまざまな種類がありますが、今回はOHVについて見ていきましょう。OHVとは「オーバーヘッドバルブ」と呼び、古い形式のエンジンを指します。
基本構造としては、エンジン内にあるバルブを棒状のプッシュロッドによって開閉を繰り返し、低回転数で可動するエンジンです。
バルブが開閉すると吸排気がされる仕組みのエンジンですので、気筒数によってバルブやプッシュロッドなどの部品の数も異なります。
OHC・DOHCとの違い
簡単に言うと、OHVからプッシュロッドをなくし、進化させたエンジンがDOHCです。
OHVは、かなり昔に流行した構造のエンジンです。その後、無駄なパーツを削減して燃焼効率や燃費性能を高めた現代的な新しいエンジンがDOHCです。
今はDOHCのエンジンを車両に使うことが多くなっています。
OHVが使われる経緯
長い距離を走行するのに適しているため、OHVのエンジンが開発され、長きにわたって使用されてきました。耐久性に優れ、OHVのエンジンはメンテナンスに手間がかかりにくくなっています。
また、部品同士がシンプルに組み込まれているため、煩雑な作業をせずにメンテナンスできるというメリットがOHVにはあります。
そして、壊れても比較的修理がしやすい構造ですので、昔はOHVエンジンが主流だった時代があり、今でも消滅していません。
OHVの特徴5つ
OHVの5つの特徴を見ていきましょう。
今は旧式のエンジンと言われていますが、まだ現役で使用されているのがOHVです。現代の車にはない魅力があり、愛好家が多いエンジンの型式でもあります。見た目や排気音にも魅力があり、愛好するユーザーはいつの時代にも存在しています。
これからOHV搭載の車両に乗る方も、ぜひ特徴を知ってOHVの魅力を理解しておきましょう。
OHVの特徴1:シリンダーヘッドの上に吸気・排気バルブがある
OHVのエンジンは、シリンダーヘッドの上に吸気と排気のバルブが配置されています。OHVならではの構造で、非常にシンプルなエンジン型式といえます。
気筒数によってバルブの数は異なりますが、最低でも吸気と排気のバルブが1つずつで合計2つ配置されるのがOHVエンジンです。とくに古いOHVエンジンでは、バルブがむき出しになっている車両もあり、旧車の愛好家は現代でも所有しています。
OHVの特徴2:カムシャフトをブロックの中に入れている
OHVのエンジンは、プッシュロッドを作動させるカムシャフトをブロック内に配置しています。プッシュロッドがなければバルブの開閉ができないため、カムシャフトをエンジンのブロックの中に配置してエンジンを可動させる仕組みです。
カムシャフトが回ることで、プッシュロッドが高速で上下運動をし、バルブの開閉がされています。非常にアナログな型式ですが、メンテナンスがしやすい構造といえるでしょう。
OHVの特徴3:シリンダーの側面にプッシュロッドがある
エンジンのシリンダー側面に、プッシュロッドが配置されているという特徴があります。外見からも分かる位置に配置されている、棒状の部品をプッシュロッドと呼んでいます。
エンジンの種類によってプッシュロッドの長さ、太さ、本数が異なり、OHVエンジンをスムーズに可動させるためにはなくてはならない部品です。昔から変わらず、修理しやすい部品がプッシュロッドといえるでしょう。
OHVの特徴4:ロッドの先端にロッカーアーム部品を追加している
ロッカーアームという、バルブとプッシュロッドの間に配置される部品が、OHVのエンジンには必ずあります。ロッカーアーム はてこのような働きをします。
形状は違えども、OHV型式のエンジンには必須の部品がロッカーアームです。外観からは確認できませんが、OHVのエンジンには必ず組み込まれていて、適宜修理も可能です。
OHVの特徴5:車・航空機・船舶と幅広く使用されている
OHV型式のエンジンは、車・航空機・船舶などに採用されています。旧式のエンジンですが、単純明快な構造で整備がしやすく、故障箇所が判断しやすいため、いまだに採用されているのでしょう。
用途によっては採用するメリットがあり、一部のメーカーによって今も用いられているのがOHVというエンジンです。
今でもOHV車はある?アメリカ車にOHV式が多く採用される理由5つ
現在も活躍しているOHVのエンジンは、アメリカの車両に用いられることが多いです。5つの理由があるので、それぞれ確認してみましょう。
ここまでの説明で分かるように、OHVのエンジン型式は古いタイプです。ただ、今もなおカーマニアを中心に愛されています。
アメリカ車には、なぜOHVが多いのでしょうか。人気の秘訣でもある、アメリカ車にOHVが多く採用されてきた理由を把握しておきましょう。
採用される理由1:OHVはスポーツカーにとって有利
OHVを採用することで、低重心の車にすることができるのでスポーツカーにとって有利になります。そして、整備性のよさと耐久性の高さもあるといえるでしょう。
スポーツカーは、さまざまなシーンで用いられる車両です。扱いやすいOHVのエンジンは、アメリカの企業が昔から採用してきた歴史があります。高速回転での走行は難しいOHVですが、スポーティーでトルクのある走行が体感できるでしょう。
採用される理由2:アメリカの道路は直線道路が多い
まっすぐで長い道路が多いアメリカでは、OHVのエンジンを搭載した車両が適しています。日本とは違ってアメリカの国土は広大です。道路も長くまっすぐなため、低回転を持続しやすい構造のOHVエンジンが採用されてきました。
今でもOHVの車両は採用されていて、アメリカの広々した道路では比較的見かけやすいエンジンです。もちろん、日本でも愛好家によって所有されているので、国内でも見掛けることはあるでしょう。
採用される理由3:構造が簡単であること
OHVのエンジンは構造がシンプルで扱いやすいため、昔から変わらずにアメリカで採用されています。旧式ですが扱いやすいOHVは、今でもアメリカを代表するエンジンです。
エンジンは整備のしやすさが重要です。構造が簡単なエンジンは直しやすいというメリットがあるからこそ、アメリカで採用され続けています。これからも消滅することはないかもしれません。
採用される理由4:コストがかからない
OHVのエンジンの修理には、比較的お金がかかりません。OHVのエンジンは手入れがしやすい構造ですので、余計な費用を掛けずに修理できます。煩雑な型式ではないため、メカニックの仕事もスムーズに完結しやすいからです。
個人でOHVのエンジンを修理することもできるので、アメリカでは合理的な車両として人気があります。修理用の部品も数多く製造されていて、OHVのエンジンは故障しても直せる点がメリットです。
採用される理由5:耐久性に優れている
OHVのエンジンは、耐久性が高いので長持ちします。構造がシンプルということが一番の理由です。修理しやすいエンジンですので、それに伴い耐久性も上がります。
交換部品も入手しやすいため、非常にコストパフォーマンスに優れているのがOHVエンジンです。日本にもOHV車両を専門にメンテナンスしてくれる工場があり、数十年も愛車を乗り続けるユーザーもいるほど耐久性に優れています。
OHVが使われているアメリカ車5つ
OHVのエンジンが採用されている、アメリカ製の車両を5種類ご紹介しましょう。
昔ながらの構造を持つOHVエンジンを、今もなお採用し続けるアメリカ車があります。OHVの車が好きな方は多いでしょう。これからOHVのアメリカ車を購入する方も、ぜひご覧ください。
OHVが使われているアメリカ車1:シボレー コルベット
コルベットには、OHVのエンジンが搭載されています。
メーカーごとに車両構成への考え方がありますが、アメリカでの走行性を踏まえてOHVのエンジンを搭載している車がコルベットです。日本でも愛好家が多く、旧車から現行車までさまざまな変遷をしてきたアメリカ車がコルベットです。
OHVが使われているアメリカ車2:シボレー カマロ
カマロは代表的なOHVの搭載車です。個性的なデザインを持つ、アメリカのスポーツカーです。
高級車として名を馳せるカマロには、昔ながらのOHV型式のエンジンが採用されています。国土が広いアメリカならではの設計がされた車は、日本でも多くの方々が愛好しています。独特なフォルムは、アメリカのメーカーならではのセンスといえるでしょう。
OHVが使われているアメリカ車3:クライスラー 300C
OHVを採用しているクライスラー 300Cは、アメリカの車です。
「古臭い」と評されがちなOHVエンジンですが、今でもクライスラー 300Cに搭載されています。OHVのエンジンはアメリカの国土に相応しく、最新型式のエンジンがあっても採用しないアメリカの車両メーカーは多くあります。
日本でもOHVならではの走行性に惹かれ、昔から所有するユーザーも多いため、今後も伝統を守るアメリカのメーカーは多いでしょう。
OHVが使われているアメリカ車4:キャデラック エスカレード
エスカレードは、OHVのエンジンを積んだアメリカ仕様の車です。存在感が大きなエスカレードは、アメリカが生み出した有名な車で、日本でも人気があります。
高級ラインのアメリカ車ですが、今もなおOHVのエンジンを採用しているのがエスカレードです。迫力のある外観からは、アメリカンな雰囲気を大いに感じさせてくれる、個性的なOHV仕様車といえるでしょう。
OHVが使われているアメリカ車5:ダッジ チャレンジャー
アメリカが生んだチャレンジャーは、OHVを使用している車です。レトロな雰囲気を放つチャレンジャーは、アメリカ製の人気車でOHVの魅力を実感できます。
トルクフルな走りは、OHVならではの魅力です。アメリカのみならず、日本でも愛好するドライバーが多く、外観とエンジン型式のそれぞれに魅了されている愛好家は多いでしょう。
OHVが今でも使われる理由や仕組みを理解しよう
OHVがアメリカ車に採用される理由を、仕組みと併せてドライバー自身で理解しておくとよいでしょう。
OHVのエンジンは古い構造ですが、今でも愛好者が多いのも事実です。
修理しやすいという特徴があり、OHV仕様の車両を愛するユーザーもいます。アメリカンなOHVエンジンの車は、今後もファンが増えていくでしょう。