1968年に公開された『2001年宇宙の旅』ではHAL9000というAIが登場します。宇宙船ディスカバリーの船内すべてを制御するHALは極秘裏に与えられたモノリス探索の任務に沿わない乗組員を排除しました。この映画は名作で様々な考察ができますが、私は制御できなくなったAIの恐怖を感じ、AIに全ての制御を任せるのはどういうことなのかと疑問を持つきっかけとなりました。車の自動運転に関しても、メリット・デメリットがあるはずです。中には危険性の高い欠陥など、社会問題も危惧されます。改めて、自動運転に人の命を預けるということについて考えていきたいと思います。
自動運転に期待されていること
自動運転のメリットは様々あり、使い方によっては地方活性化に貢献することも考えられます。問題となっている配送業界の人手不足は自動運転の発展で解消でき、配送業界全体の発展にも貢献すると言われています。自動運転のデメリットを見る前に世の中で謳われている自動運転の基本的なメリットのおさらいをしていきたいと思います。
自動車による事故の減少
現在でも道路交通法や信号、標識などでシステム化されていますが全ての人がそのシステムを守っているわけではありません。また、注意していてもヒューマンエラーは必ず起き、人の力では細心の注意を払っても完全に事故を防ぐということが不可能である予測がつきます。これから先、人の手を介さずに車が動く時代が来れば事故はほとんどなくなることが予想されており、自動運転でしっかりシステムに沿った動きを取らせることで車が接触することはほとんどなくなるでしょう。
渋滞の緩和
道路には制限速度が決まっており、車はその速度以内で走らなければいけません。しかし実際は速度を守って制限速度で走る車もいれば速度制限を無視して速度を超えて走行している車などが存在し、それぞれ車の速度が違います。特に緩やかな上り坂などでは速度が落ちていることに気づきません。後続車がブレーキを踏んでしまうことで起きるブレーキの連鎖が渋滞の原因となります。自動運転が標準化すれば路面の傾きを感知し速度を自動で調節でき、一定の車間距離を保つことで無駄なブレーキが少なくなり渋滞が緩和されることが予想されます。
駐車場の不足の緩和
休日の駐車場不足は深刻な問題で、都心に近づくほど駐車場の大きさは狭くなります。休日は大型ショッピングモールですら駐車場難民が続出します。しかし、実際に駐車場が全く空いていないということはほとんど無く、入り口から遠く離れたところは空いていることが多いです。もし自動運転が普及した場合お店の前で人が降り自動で駐車場を探し駐車することができれば快適にショッピングを行えます。お店の入り口で降りたら駐車場の距離を気にする必要がなくなり駐車場の距離を気にする必要は無くなります。駐車場を探す時間を買い物に当てることが可能となり、入り口から最短の場所で乗り降りできるので時間を有効活用できます。
運転する作業がなくなり他の作業が可能に
同じ交通手段として電車と比べた時、車は自由であり不自由な交通手段と考える事ができます。電車では乗っているだけなので読書をしたりゲームをしたり時間を好きに有効活用できます。それに対し車は様々な危険を予知しながら運転する必要があるデメリットがあり、目的地に到着するまでの道のりに融通がきく点がメリットだと思いますが運転以外の作業は不可能です。しかし高度な自動運転が搭載されれば車内で運転以外の作業が行えるようになるので移動中の時間も有効活用できます。
期待の自動運転は本当に安全?
自動運転をなぜ危険視するのか、それは人の命を預けるシステムだからです。世の中で期待されている自動運転は本当に安心安全なのか、本当に命を預けていいのか疑問に思います。様々なメリットが期待されている自動運転ですが、実際に普及した際に考えられる危険性を考えていきたいと思います。
次世代回線5G
第4世代から第5世代へと通信規格が変わり超低遅延、超高速化する新しい技術が近い未来に実用化すると日常が変化することが考えられます。自動運転の車に5Gが搭載されると車の状況や交通情報といった様々なデータをやり取りします。今後自動運転車の規格が新しくなる度に外部との繋がりが強くなっていくことが予想されます。しかし、この繋がりに問題があります。膨大なデータをやりとりして走行している際に通信障害が発生した場合車自体の性能に依存し判断力が低下します。データ不十分な状態の自動運転搭載車は判断力の低さから事故の危険性が向上すると思われます。
自動運転搭載車のハッキング
自動運転には様々なバージョンが存在していますが将来一般化するとされているレベル5の自動運転が最も危険だと考えます。自動運転はハードウェアに依存しソフト側で対応するには限りがあります。同じレベル5であっても初期型と最新型では性能が異なります。ソフトウェアアップデートで対応することも不可能ではないですが永久的に新しいバージョンのソフトを使用するのは不可能です。
5Gになり車がインターネットにつながることが当たり前になる世界が来ます。車がインターネットにつながることで、できることの幅が広くなり自由度が増しますが危険性も増します。現在の車はセキュリティが脆弱と言われています。もし今のセキュリティが改善されないまま車にインターネットが標準搭載されたら簡単にハッキングされてしまいます。ハッキングされた時の危険度は自動運転のレベルによって変わると推測されます。自動運転のレベルが上がりシステムがハンドルやアクセルなどの操作を支配している場合、ハッキングによりシステムが乗っ取られ暴走する危険性が考えられます。
現在の自動運転レベルは実用性が低く開発段階であり、普及するにはまだ程遠いレベルです。しかし自動運転を犯すジャックウイルスが存在します。このウイルスはランサムウェアの一部であり、ウイルスに感染した車はドアがロックされたり走行不可になったりする危険性があります。ランサムウェアは利用者がシステムにアクセスできなくなるウイルスです。これから先の時代、自動運転が普及したときジャックウイルスよりも危険なウイルスが登場する可能性が高いでしょう。
自動運転が及ぼす影響
自動運転は人の生活を豊かにしてくれる存在として認識されていますが、環境に対しては不明な点が多いです。現在考えられている利用法から環境負担について考えます。
排気ガスの排出量が上がる?
駐車場に使用されている土地が別の用途で利用できれば土地の価値が上がると言われています。そして、自動運転車はドライバーが不在でも走行できるので、常に走らせ続ることができます。つまり、現在仕方なく乱立している全国各地の駐車場も自動運転が普及したら他の用途で利用しようという動きになっていきます。その場合、停まる場所をなくした車は持ち主が戻るまで走り続けることとなります。駐車場が少なくなり止まる場所を失った車はエネルギーを無駄に消費します。ガソリン車では排気ガスが出ますし、EV車は電気ですが日本の電力の主流派火力発電です。非常に便利なシステムですが環境には良いとは言えません。
ドライバーの運転技術の低下
自動運転が増えれば車は乗るけど実質ペーパードライバーな人が一気に増えます。もちろん自動運転は楽で多くの時間をドライバーに与えてくれます。しかしそのレベルまで自動運転が到達するには時間がかかります。人の介入が想定されるレベルの自動運転がさらに危険です。普段自動運転でしっかり運転していない人がとっさの判断をするのは難しいです。レベル5の自動運転が実用化するまでは自動運転による事故が多発することが予測できます。