放置すると車が燃えるかも?ブレーキの不具合と分解整備【ベテラン整備士が教えます!】

自動車において最も基本的な走る・曲がる・止まるの3要素の中のひとつを支えるブレーキでは、気にならないほどの小さな異常が大参事に繋がることもしばしば。安全に走る上では最も重要な部分です。

今回は、実際にブレーキの不具合で入庫した車の症状と分解整備の様子を紹介していきます。

ブレーキキャリパーって何?

今回、分解整備していくのはブレーキキャリパーという部品です。ブレーキキャリパーとはブレーキペダルからの力を液圧を介して受け、その力でブレーキピストンを押し出す働きをする部品です。このブレーキピストンを押し出す力を使ってタイヤと一緒に回転しているディスクローターをブレーキパッドで挟み込み摩擦力を生み出しています。上の写真でいえば赤い部品がブレーキキャリパー本体で左の丸い部品がディスクローターです。

症状と原因

錆が発生したブレーキピストン

今回はブレーキが常に効きっぱなしになる”引きずり”と呼ばれる症状が発生していました。この症状を放置すると異音が発生したりハンドルが左右に取られたりします。またブレーキパッドの消耗が早く進み金属同士がこすれると火花が発生し、最悪の場合車両火災を引き起こすこともあります。ブレーキがかかりっぱなしになると普段より大きな熱が発生します。この熱によってフェード現象やべーパーロック現象が起きると重大な事故につながる可能性もある大変危険な現象です。
この引きずりという症状は、押し出されたブレーキピストンが定位置に戻らず押し出されたままになることで発生します。ではなぜブレーキピストンが戻らなくなるのかでしょうか。ブレーキキャリパーには水分や空気、汚れの侵入を防ぐためのダストブーツやピストンシールと呼ばれるパッキンがはめ込まれています。このパッキン類が劣化してひび割れたり硬くなったりすると隙間ができます。そこから水分や空気、汚れなどがブレーキキャリパー内部に侵入しピストンが錆びつきピストンが固着してしまいます。ブレーキシステムの液圧は非常に強い力なので多少錆びついてもピストンを押し出すことができますが、ピストンを定位置に戻すのはピストンシールと呼ばれるブレーキピストンにはめ込まれているリング状のパッキンの弾性力です。この力がそれほど強くないためピストンが戻らず引きずりが発生します。

オーバーホール

修理の概要

今回は修理のために劣化したダストブーツ、ピストンシールと錆が発生したブレーキピストンを新品に交換していきます。ブレーキピストンは錆びたまま再利用すると錆がシール類を傷つけまたすぐに同じような症状が出てしまいます。軽い錆であれば研磨して再利用することも不可能ではないですが、ブレーキピストン自体がそれほど高価な部品ではないので新品に交換するのが望ましいです。シール類やダストブーツは経年劣化する材質なので基本的に再利用することはありません。

部品交換のためにブレーキキャリパーを分解していきますが、この時に異常が発生していない所もついでに点検しておきます。また交換するブレーキピストンにも傷やへこみといった錆以外の異常がないかチェックしておきます。ここでなにかおかしなところが見つかればダストブーツの劣化以外にも不具合が発生している可能性が高く、さらに詳しい点検が必要という事になります。今回はダストブーツの劣化によるブレーキピストンの錆という事で部品交換を進めます。

分解・部品交換

ブレーキキャリパーと新しいブレーキピストン

古いピストンをエアーやブレーキの油圧を使って取り出し、劣化したブーツやシールも取り外していきます。必要なところまで分解したらキャリパー内部やシリンダーの内側も綺麗に清掃していきます。その後に新しいピストンやシール類、ダストブーツを組み込みます。ダストブーツは無理やり組み付けをしようとすると切れてしまうことがあります。切れてしまったらそれはもう使用できないので、傷をつけないよう丁寧に組み付けを行います。さらに、必要な部分にブレーキグリースを塗布しブレーキフルードが触れるところにはあらかじめブレーキフルードを塗り、くみ上げていきます。

安全のために

今回分解整備したブレーキキャリパーは構造的にもそれほど複雑ではなく部品点数も少ないものです。しかし車を止めるという働きを担っている大変重要な部分です。ダストブーツやピストンシールなど、経年劣化が避けられない部品もありますが、日ごろ車に乗るときに様々な方向に目を向けて、少しでも異変を感じたら整備工場へ相談することをお勧めします。小さな異変を早期発見できれば致命的で修理が高額な故障を避けられるかもしれません。


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