ついに東京オートサロンでGRヤリスがワールドプレミアを迎えました!コンパクトカーでありながら高いパフォーマンスを誇り、価格もコンパクトとは言えない域に達しているこの車ですが、今回はこの賛否両論あるGRヤリスの価格設定について性能や他車種との比較を交えて考察していこうと思います。
GRヤリスとは!
まずはじめにヤリスという車についてお話します。ヤリスという車名に馴染みのない人も多いと思います。というのも、ヤリスとはもともとトヨタが海外で販売していた車であり、日本国内での名称はヴィッツでした。しかしトヨタは2020年からヴィッツの名称を廃止し、全世界での名称がヤリスに統一されました。そのヤリスをWRCで勝つためにTOYOTA GAZOO Racingが手掛けたのがGRヤリスです。WRCで使用されるWRカーはベースとなるBセグメントの市販車が必要なためトヨタではヤリスが選ばれました。86や90スープラがそれぞれスバル、BMWとの共同開発だったことを考えると、GRヤリスは久しぶりの純トヨタ製スポーツカーといえるでしょう。

スペックと価格
やはりこの手の車で一番気になるところは性能とお値段。スポーツカーは強気の価格設定をされることが多いですがGRヤリスはどうでしょう?
エンジンと車重
<エンジン形式> 1.6L直列3気筒ターボ
<最高出力> 272PS (200kW)
<最大トルク> 37.7kgf・m (370N・m)
<車両重量> 1280㎏
一般的には2Lターボのエンジンで250~300PS程度に設定されることが多いので、GRヤリスの1.6Lターボで272PSはかなりの高出力エンジンと言えます。1280㎏という車重はコンパクトカーという枠で見ると少々重く感じられますが、ボディ補強などが施してあることを考えれば妥当な重さでしょう。また、エンジン性能を考えれば十分に軽量です。
価格
360万円(税込み396万円) ※RZの価格
トヨタ車でいえばランドクルーザープラドと同じ価格帯です。車格を考えるとやはり少し高めに思えます。
他車との比較
ライバル車としてコンセプトの似ているシビックタイプR、WRX STi、ランサーエボリューションXと比較します。車両重量を最大出力で割ったパワーウェイトレシオ(PWR)と最大トルクで割ったトルクウェイトレシオ(TWR)を用いて比べた結果、以下の表のようになりました。一般的な軽自動車のPWRは10~20程度、TWRはおおむね130前後で、数値が小さいほど車体の重さに対して強力なエンジンが搭載してあるということになります。
最大出力(PS) | 最大トルク(kgfm) | 車重(kg) | PWR | TWR | |
GRヤリス | 272 | 37.7 | 1280 | 4.7 | 34.0 |
シビックR | 320 | 40.8 | 1390 | 4.3 | 34.1 |
WRX STi | 308 | 43.0 | 1480 | 4.8 | 34.4 |
ランエボX | 300 | 43.0 | 1520 | 5.1 | 35.3 |
最大出力、最大トルクは一歩劣っていますが、PWR、TWRにおいては1280㎏という軽量な車体のおかげで同価格帯のライバルカーと比べても全く見劣りしない結果となりました。”いかついスポーツカーと張り合えるコンパクトカー”と表現すればとても魅力的に感じられませんか?
RZ “High Performance”
GRヤリスにはRZの上位グレードとしてRZ”High Performance”が設定され、前後トルセン®LSD、インタークーラー冷却スプレー、ブレーキダクトといった装備が追加され、ポテンシャルが高められています。
LSD
LSDとは左右輪の回転差を制限する機構のことで、タイヤの回転する力を左右均等に近づける働きがあります。これによってコーナリング時の駆動力のロスを減らすことができます。スポーツ走行ではLSDの有無によって大幅に車の動きが変わるため必須とは言わずとも、あるとうれしいアイテムです。
インタークーラー冷却スプレー
インタークーラーとは過給機(ターボチャージャー、スーパーチャージャー等)で圧縮されて温度が上がった吸入気を冷やすための装置です。RZ”High performance”ではこのインタークーラーに液体をスプレーすることでさらに冷却効果を高めることができます。
ブレーキダクト
ブレーキはローターとパッドの間の摩擦熱によって高温になります。スポーツ走行ではこの発熱が非常に大きく、温度が上がりすぎるとブレーキ性能の低下やブレーキの故障につながるためダクト(導風口)を設けてブレーキシステムの冷却を行うことがあります。
上記の装備によりRZ”High performance”は手を加えずとも十分にサーキットを走れると思われますが、機械式LSDや社外インタークーラーなど自分好みのアイテムでチューンナップしたい人はRZを買った方がお得です。
結局高いの?
トヨタがラリーで勝つために作り上げたGRヤリスはその価格に見合うだけの装備と性能を備えていると言って良いと思われます。WRカーにはベース車両とは別物と言って良いほどの大幅な改造が施されているとは言え、WRCの空気を少しでも感じるために惜しまず400万円を出すエンスージアストはそう少なくないでしょう。