何人かで車に乗っているとよくこんな話になることがありませんか?「助手席が一番危ないから気をつけて運転してね。」といった会話。理由を聞くと運転者は危機的状況では自分のことを第一に考えてハンドルを切るため結果的に助手席の人が犠牲になりやすいからとのこと。それを初め聞いた時は確かになるほどなあと思っていたのですが、しかしよく考えるとそうしたら運転席の人はもっと助かっていても良いんじゃないかと思えるようになってきました。そこで今回は実際のところ座席と事故時の死亡率に関係はあるのか、関係があれば一番安全な席はどこで、一番危険な席はどこなのか、実際のデータを見て考えていきたいと思います。ただ、データの解釈はそのデータの見方によって大きく変わってきます。なので今回はあくまでも一個人の見方として読んでいただけると幸いです。
各席ごとの死亡者数の推移
まず大前提として警視庁が公表している自動車乗車中の座席別死者数の平成28年までの10年間、上半期の推移を見てみると年々交通事故の件数とそれによる死亡者数は減少しています。その大きな一因として衝突被害軽減ブレーキが多くの車に標準装備されたりACCが登場したりと車の最新技術が年々進化しているということが挙げられます。では、そんな全体の事故件数が減っているという情報を踏まえた上で各席ごとの死亡者数を見ていきます。
運転席
運転席はどの年度においてもダントツで事故件数とその事故による死亡者数の多い席です。見てみるとその数の差は他の座席に比べ一番差の少ない時で約4倍、一番多い時で約9倍ほどの差があります。では、一番危険な席は運転席ではないかと思うかもしれませんが、そう決めつけるのは少々早計です。運転席というのは他の席と違い車を運転する際には必ず座っていなければなりません。そのため、そもそもの母数が他の座席に比べ圧倒的に多いのです。運転席のみの事故死亡者数で見てみると平成18年度で947人、平成28年度で502人とその数がおよそ半分近くまで減少しています。
助手席
よく一番危ないと言われる助手席ですが、実際のところ助手席における事故死亡者数は全体の傾向同様、年々減少の一途をたどっています。平成18年度上半期の死亡者数が165人なのに対し平成28年度上半期の死亡者数は68人とその数は半分以下にまで少なくなっています。これを見てみると、確かに昔は助手席が危ないと言われていたとしてもおかしくない割合で、助手席の人の死亡者数は多いですが現在に近づくにつれその割合は助手席が危ないと言えるものではなくなってきているかもしれません。
後部座席
後部座席の死亡者数の推移は昔から横ばいのまま待ったく変わっていません。平成18年上半期が99人、平成28年上半期が96人です。これだけ聞くと別に普通のことだと思うかもしれませんが、これはどういうことを表すかというと年々死亡者数が減っているのにも関わらず後部座席の人の死亡者数は変わっていない。つまり事故死亡者数における後部座席の人が死亡する割合が多くなってきているのです。
一番安全なのは実は助手席?
先ほど示したデータでは助手席が一番危ないとは限らないということを言いましたが実は今、一番安全なのは助手席なのかもしれません。その理由をお話ししていきたいと思います。
衝突安全性能評価の影響
年々助手席の死亡者数と運転席の死亡者数が減少してきている要因の一つとして国土交通省が定めている衝突安全性能評価というものがあります。これは車が衝突した時の安全性を点数で示しているものです。これがあると企業は高い点数を取りにいこうと安全性に力を入れるため年々死亡者数を減らすことができている大きな要因でしょう。しかし、この衝突安全性能評価では全ての試験でダミーを乗せているのは助手席と運転席だけで後部座席は乗せている試験と乗せていない試験があります。運転席はその死亡者数の多さから、例え元々の母数が多くても一番安全だとはお世辞にも言えないでしょう。そのため安全性が高いという意味では多くの事故状況を想定されているかつ死亡者数の少ない助手席が一番安全かもしれません。
一番危険なのは後部座席
今度は逆に一番危険になるのは後部座席でしょう。これは後部座席の死亡者数の推移でも話した通り年々事故死亡者数は減少しているのに対し後部座席の死亡者数は変わっていないからという理由ももちろんあるのですが、それともう一つ大きな理由があります。
差をつけるのはシートベルト
後部座席が危険なもうひとつの理由、それはシートベルトをつけない人が助手席と運転席に比べて圧倒的に多いということです。先ほどのデータ同様警視庁の死亡事故における状態別分析を参照して見ると死亡事故における死者のシートベルト着用率は52%とおよそ半分の人がシートベルトをしていなかったということになります。そして後部座席のシートベルトの着用率は58%。他の座席がシートベルトを着用している人数の方が多いのに対し後部座席はシートベルトを着用していない人の方が多いという結果になってしまっています。シートベルトは着用するとしないとでは事故時の死亡率におよそ14.5倍ほどの差があります。したがって後部座席において事故が起きてしまった時の生存率はシートベルトの有無が大きく差をつけるといっても過言ではないでしょう。
チャイルドシートはどこにつけるべき?
ここまで座席ごとに一番安全な席と危険な席を話してきましたが子供がいる人が一番気になるのがここ。まさか一番危険な席にお子さんを乗せたくはないですよね?では一体チャイルドシートは一体どこにつけるのが一番良いのでしょう。
一番は後部座席
先ほど一番危険なのは後部座席などと言っておいてチャイルドシートは後部座席につけるべきなんていうのも矛盾しているようですが後部座席が一番危険なのはシートベルトの着用率が関係しているから。チャイルドシートに関して言えばシートベルトは着用する前提の人が大半だと思いますのでシートベルトを着用していると考えると一番は後部座席になります。助手席がダメな理由として助手席では事故の際エアバッグが作動してしまいます。エアバッグは大人の人を対象にして作られていますのでもしチャイルドシートに座るような小さなお子さんがエアバックを受けてしまうとそれだけで事故の影響に関わらず窒息死してしまう可能性がとても高く返って危険です。また、助手席では隣にいる子供のことがちらちら気になってしまいあまり運転できないかもしれませんのでやはりそういった意味でも後部座席が一番でしょう。
3列シートの場合は、、、
家族が増えるにあたって今まで自分が持っていた車からミニバンなどのいわゆるファミリーカーとよばれる車に変えた人も多くいるのではないでしょうか。ファミリーカーと呼ばれる多くの車にはシートが3つあります。後部座席が二つあることになりますがその場合は前の後部座席につけることをおすすめします。これは一番の理由は子供を乗り降りさせる時の利便性です。他にも後ろから追突された時に一番衝撃が強くなってしまうという理由もありますが、やはり普段生活をする上でいちいち三列目から子供を乗り降りさせたのでは相当な手間です。二列目でも三列目でも多少は違えどどこまで二列目も三列目も安全面で違いはないので普段頻繁に利用することを考えれば二列目の方が賢明でしょう。