皆さんが普段、運転をしていてそんなに気にすることはないであろうワイパー。しかし、ワイパーというのはおよそ100年もの間、形が変わっていないというのを知っていますでしょうか。100年前といいますと、やっと大衆車の量産化が成功した時代の話です。最近では自動運転に近づく技術もでてきて、その頃からの自動車の進化は凄まじいものであるのにワイパーだけ形が変わらないのはなんだか不思議ではないですか?実は、ワイパーというのも他の部品と同様に様々な技術の結晶です。そこには様々な歴史があります。そこで、今回は普段はあまり気に留めないワイパーの裏にある歴史、そしてワイパーがここまで100年以上も同じ形のまま現代まできた理由について考えてみようと思います。
ワイパーの機能と役割
そもそも今現在のワイパーにはどのような役割や機能があるのでしょうか。ここではまずワイパーについての基本的な機能、そして役割について簡単に紹介していきます。
窓ガラスについた水滴やゴミを取り除く
これはワイパーの中でも一番重要でありこのためにワイパーは作られたと言える最も根本的な役割でしょう。ワイパーが取り除くのは何も水滴だけではありません。窓についた虫や鳥のフンなどのゴミを取り除くためにもワイパーは存在します。しかし、ただ拭くだけでは水滴は取り除けてもゴミまで綺麗に取り除けはしません。そこで次にあげる機能が重要になってきます。
ウィンドウォッシャー液で窓を洗浄する
虫や鳥のフンなどはただ拭くだけでは取り除けなく、さらに広げてしまうだけになってしまうこともあります。そんな時に役に立つのがこのウィンドウォッシャー液で窓を洗浄する機能です。ウィンドウォッシャー液は水ではなく、エタノールと界面活性剤でできています。界面活性剤は洗濯の洗剤などにも使われている汚れを取ることができる成分なので、窓の汚れもしっかりと取ることができます。また、ウィンドウォッシャー液はそれだけではなく豪雪時窓についた雪が凍ってしまった際、その雪を溶かすためにも使われます。
ワイパー発端の歴史
今となってはついているのが当たり前となっているワイパーですが、その発端には様々な歴史がありました。なぜ現代のワイパーのような形に至ったのか、どのようにしてワイパーは作られたのかについてワイパーの歴史をたどって見ていきたいと思います。
ワイパーの生みの親
ワイパーの歴史が始まったのは1903年のこと。当時37歳のメアリーアンダーソンという機械設計や不動産開発を行っていた女性が“フロントワイパーという車の中から操作できる自動車窓清掃装置”として特許を取りました。当時のワイパーは主に木とゴムとバネでできており、室内にあるレバーによって操作するという手動方式でした。それまでの自動車にはついない画期的な技術でしたが当時の車はそこまでスピードは出るわけではなく、必要ないとして実際にそのワイパーを採用する企業が現れず特許の期限である1920年に特許は失効しました。
間欠式ワイパーの誕生
1920年以降、車が進化しスピードも上がるにつれワイパーの必要性は増していきました。多くの車メーカーがワイパーの開発に乗り出します。1926年に電動によるワイパーがドイツのボッシュ社によって開発され、さらに1964年には現代のワイパーの主流である一定の間隔で窓を往復する間欠式ワイパーの特許がアメリカ合衆国のカーンズにより取得されました。カーンズの特許取得については大手自動車メーカーがその特許を無視して間欠式ワイパーの装備車両を販売し、カーンズはそれに対して裁判を起こし続け勝訴したといった歴史もあります。その争いは2008年に「幸せのきずな」という映画にもなっています。
現代まで同じ形の理由
それではここからはワイパーが発明された当時から変わっていない理由ついて考えてみたいと思います。
なくすことができない
ワイパーというものが現代まで変わらない形のままきた理由として大きく挙げられるのが、どれだけ時代が進もうと技術が進もうと物理的に拭く必要がどうしても出てきてしまうというところです。もちろん水滴や雨だけを防ぐのであれば、実際に2013年にマクラーレンが開発をしていたように超音波によって水滴を弾くという技術は実現できるとこまで来ています。しかし、それが実際に装備されないのは結局ワイパーの仕事は雨だけではなく虫や鳥のフンなどの水以外のものも弾く必要があるからです。つまりワイパーをなくすことはできないのです。
これ以上進化しようがないとこまで来ている
今現在のワイパーは、運転中の視界を確保するための窓ガラスを掃除するという機構として、理想的な形です。車の窓に沿うように曲線的にデザインされた形や動きはとても洗練されています。恐らく皆さんもワイパーに関してそこまで不満に思ったり、「ここがこうだったら良かったなあ」と感じることはあまりないのではないでしょうか。そういったところも進化が必要ない理由かもしれません。
現代のワイパーの形は全車種同じ?
昔から変わっていないワイパーの形は変わっていないということとその理由がわかりましたが、それは車種によっても違いはないのでしょうか。現代のワイパーについて車種ごとの違いはないのか、車の大きさや規格が変わっても本数は一緒なのかについて見ていきます。
スポーツカーや高級車などもワイパーは同じ形
画像のワイパーを見てもらえればわかる通り、ワイパーの形は一般的なスポーツカーや高級車などでも同じです。とても高速で走るスポーツカーや多くのお金をかけられる高級車でも同じということは、まさに今のワイパーの形が完成形まで来ているということを表しているでしょう。
レーシングカーやトラックなどは少し違う?
ワイパーの形は高級車でもスポーツカーでも同じですが、レーシングカーやトラックなどでは少し変わってきます。まず、レーシングカーですが、レーシングカーにおいては軽量化と空気抵抗の軽減が最優先となるためワイパーは一本になり、使わない時はフロントガラスの真ん中に縦で配置してあります。ワイパーを横にして置くよりも縦にしておくほうが空気抵抗が少なくなるからです。
次にトラックなどの大型の車両ですが、車体の大きい車両となると必然的にフロントガラスも大きくなるためワイパー二本ではカバーできず、ワイパーが三本になります。しかし、もともとの形状や動きが変わるわけではないので同じ動きのまま三本になるという本数のみの違いです。
これからも進化することは…
ここまでワイパーについてお話してきましたが、皆さんが想像していたよりもワイパーには様々な歴史や形が同じである背景がお分かりいただけたのではないでしょうか。ほぼ完成形へと近づいているワイパーがこれからさらに進化をするには、今にない新しい素材や新しい技術が必要になってくるでしょう。逆に、そういった新しい何かが発見されればいつか100年、200年同じだったワイパーの形に変化が訪れる時がくるのかもしれません。