車のデジタル化、電動化は加速的に進んでいます。ナンバープレートでさえも。
移動という行為そのものはアナログなものですが、車の中身はコンピュータだらけです。エンジンすらもモーターへと置きかわり、唯一アナログチックなメーターもディスプレイに。鍵も挿して回す時代は終わりました。シート位置はメモリーで記憶され、ドアも自動で開きます。もはや電動化、自動化されていない箇所を探す方が困難なほどに車のデジタル化は進んでいるのです。しかし、どんなハイテク車でも共通して装備されているのがナンバープレートです。このご時世に、金属の板に数字を書いて貼り付けるなど、少し古臭い気がしないでしょうか?車体を識別するのなら、ETCのように通信によって識別すればいいのではないかとも思います。今回は、そんなナンバープレートのデジタル化についてお話いたしましょう。
そもそも、ナンバープレートはなぜ必要?
デジタルナンバープレートについてお話する前に、そもそもなぜナンバープレートが必要なのか知っておく必要がありますね。ナンバープレートはその名の通り、車を番号化するためのものです。個人が所有する物の中では不動産の次に高いであろう自動車。そんな高くて危険な物が街をぞろぞろと走っているわけですから、番号を振り分けるのは非常に合理的です。しかし、デザイン面では非常に邪魔ですよね。車の美しさを半減させてしまっているというのは言い過ぎかもしれませんが、デザインを制限しているのは事実です。特に輸入車は相性が悪く、日本のナンバープレートをつけただけでダサく感じてしまうものです。そんな意見もありますから、ナンバープレートの必要性を改めて考えるべきでしょう。
自動車登録の証明
ナンバープレートが担う一番の役割はこれです。自動車というのは国に登録する必要があります。人も会社も飲食店も、同じように国に登録をします。それは国が管理する必要があるからです。一番は税金を管理するためですね。さらに、車は危険なものですから、「保安基準を満たしているか確認する」「事故を起こしたり、違反をした時に識別できる」必要があります。猟銃や刀剣と同じですね。また、犯罪にも利用されやすいですから、保管場所の確認や、犯罪グループが利用しづらくなるという役割もあります。少し難しいですが、身近なのはオービスによるナンバーの識別でしょうか。ナンバープレートは「速度違反自動取締装置」には欠かせないものです。
高速道路や駐車場での種別分け
登録自動車 軽自動車 自家用 事業用 自家用 事業用 白地に緑文字 緑地に白文字 黄色地に黒文字 黒地に黄色文字
これは副次的な役割ですが、ナンバープレートは自家用と事業用で色が違います。車のサイズによってもナンバープレートが異なるため、高速道路や駐車場ではナンバープレートを一目見ただけで適切な料金を判断できます。黄色ナンバー(軽自動車)なら高速道路料金が安くなりますし、駐車場では軽専用の区画に止めることができます。バイクであれば、ピンクナンバーの小型自動二輪車は高速道路を走れないので、目撃されれば一発で通報されます。このように、入り口でいちいち測定しなくても、ナンバープレートだけで種別を判断することができます。
バスやタクシーの違法営業防止
上記のように、事業用の車両には事業用のナンバープレートを付ける必要があります。つまり、「白タク」と呼ばれる白いナンバープレートをつけたタクシーはすぐに違法だと判断できます。バスも無料のシャトルバスや送迎バスは白ナンバー、市バスなどは緑ナンバーと分けられています。消費者は「なんか怪しいな」と判断することができるのです。
デジタルナンバープレートとは?
実は、すでに海外ではナンバープレートのデジタル化が進んでいます。わかりやすく、「デジタルナンバープレート」と呼びましょう。そのままですね。
アメリカの一部の州で試験運用、法律で認められた
このデジタルナンバープレート、「RPlate」はアメリカのシリコンバレーにあるスタートアップ企業「Reviver Auto」が開発しました。そして、そのRPlateに対応する法改正が行われています。使用できるのはミシガン州・カリフォルニア州・アリゾナ州。テキサス州やフロリダ州でも試験運用がされています。やはり、自動車で新しいサービスを始めるには法律が大きな壁となります。特に、ナンバープレートに関しては行政が管理していますし、データも膨大です。法整備やインフラ整備には多大なコストがかかりますし、権利問題も発生するでしょう。ナンバープレートで儲けている組織もありますからね。こうやって法改正が行われていくのは大きな一歩です。さすが自由の国アメリカですね。ナンバーの登録変更など、面倒な手続きもアプリ上で行うことができるというから驚きです。
ディスプレイには「$NDHLP!(助けて!)」などの文字が表示可能
デジタルナンバープレートの大きな特徴は、ディスプレイであることです。強化されたガラスにタブレットのように映像を映し出します。番号や地名、有効期限などは当然表示されますし、盗難車であることを知らせるメッセージや後続車への挨拶を表示することもできます。また、ディスプレイの可能性は無限大で、駐車券や広告も表示可能です。季節ごとにデザインを切り替えたり、会社のロゴを表示することもできるかもしれませんね。金属の板からディスプレイに変わっただけでも考えられる機能はたくさんあります。
トラッキングや通行料の支払いもできる
デジタルナンバープレートはサーバーと繋がっていて、位置情報も判断できます。アプリ上で自分の車の位置を知ることもできますし、盗難を検知することもできます。また、日本で言うETCのような通行料決済機能も搭載しており、至れり尽くせりなプレートです。
日本で普及するのはまだまだ先か
そうなれば、日本でも普及していくのかと思いますが、なかなか怪しいように思います。アメリカで完全に普及すれば、日本の行政も使用を許可するしかありませんが、まだ随分と先の話になるのではないでしょうか。
ひと昔前のスマートプレート導入も延期
実は、日本でも2003年を目処にナンバープレートの電子化を行おうという動きがありました。ナンバープレートにICチップを埋め込み、そのデータを街頭のセンサーで読み取るもの。現在進んでいるコネクテッドカーの先代モデルと言えばわかりやすいでしょうか。ICチップを全ての車に埋め込めば、色々な応用ができます。車検データの読み取り、ナビ機能の精密化などなど。車の流れが全て可視化することができるので、公共交通機関は大助かりです。駐車場などでも車を識別して案内をすることができます。そんなスマートプレートもコストを理由に延期されています。
スマートプレートに搭載されるデータは車検証情報だけ
スマートプレートに搭載される予定だったデータは車検証情報だけでした。車検証情報も情報量は多いですが、デジタルナンバープレートのようにトラッキングもできませんし、使い道が狭すぎました。リアルタイムの走行距離やメンテナンス情報なども記録できればいいですが、まだまだでしたね。
膨大なデータを扱うことができるのか
デジタルナンバープレートが普及すれば、膨大なデータが街を走ります。しかし、それを整理し活用するインフラが整備されるのは何年も先の話です。また、セキュリティ面の問題もあります。ユーザーの位置情報や行動記録はデリケートなデータです。また、登録情報をハッキングされる可能性だってあります。車は目の前にあるのに、ネット上で所有者情報を書き換えられて、他人のものになってしまったり…。そういった犯罪は対策されますが、今までに色々なデータを流出させてきたお役所が管理できるのかという反発もあるでしょう。
ナンバープレート自体がなくなるのはもっと先
これは筆者の個人的な意見ですが、デジタルナンバープレートが普及するよりも前に、コネクテッドカーや自動運転が普及するでしょう。コネクテッドカーは、車がありとあらゆるものと通信を行い、走るスマホのようなるものです。車の情報、車検証情報や位置情報、メンテナンス情報や走行距離など。地図会社や通信会社、信号や他の車、歩行者とも繋がるのです。そうなればナンバープレートは必要なくなるのではないでしょうか。コネクテッドカーが普及するのは新たな通信規格5Gが普及する2020年以降です。遠い未来ではないですね。