今のホンダの車を見て思うことはありませんか?「なんかしっくりこない」「つまらない」「ダサい」という感想を抱く人も多いのではないでしょうか。ホンダはトヨタに次ぐ大自動車メーカーですから、尖った車よりも無難な車が多くなるのはわかります。しかし、それでも最近は「デカすぎる」「高すぎる」と言われ、まるで輸出をメインとして日本市場を無視したような車も多くあります。これでは、昔からのホンダファンが不満を漏らすのも無理はありません。時代の流れと言ってしまってはその通りです。ですが、もう少し昔からのホンダファンをワクワクさせる車をつくってもいいのではないでしょうか。
いまのホンダはN-BOXばかり売れるメーカー
現在の日本における新車販売台数は4割近くが軽自動車。完全に孤立した特殊なガラパゴス市場となっています。その日本特有の市場はホンダでも同じ。2018時点でホンダの販売台数のうち33%がN-BOXです。そう、ホンダの3台に1台がN-BOXなのです。かつては安価なスポーツカーを作り、若者の味方のようであったホンダも今は軽自動車を量産するメーカーになってしまったのです。時代に合わせて大衆に合った車を作る。しかし、車好きや古くからのファンには見捨てられてしまっているのが今のホンダです。
販売台数一位は軽自動車のN-BOX
かつてはオデッセイやアコード、ステップワゴンなど新しいスタイルをユーザーに提供して大ヒットしていました。ホンダらしさと言えば、アイディア商品を安く売ることであると思います。それを考えればN-BOXが大ヒットするのもホンダらしいと言えばホンダらしいでしょう。他の軽自動車に比べれば特別安いというわけではありませんが、軽自動車なのに衝突安全性、コンパクトカー並みに優れていて、予防安全性もほとんどフル装備されています。軽でも安全に乗りたいユーザーの心を鷲掴かんでいるのが売れている要因なのです。しかし、それと同時に前述のヒットカー達は衰退。オデッセイはミニバンブームに退けられ、ステップワゴンはエルグランドやアルファードに大敗しています。アコードも現在は400万円近いわりに高級感が薄く、中途半端なセダンになってしまっています。
北米や中国市場に向けた車づくり
もはや軽自動車とミニバン以外は売れない日本市場。セダンやスポーツカーを売るなら北米や中国しか無いと言ってもいいでしょう。欧州には手を出せませんからね。復活した待望のシビックも海外向けに大型化され、コンパクトなスポーツカーという要素は消えました。ホンダ車全体のデザインに関しても、エグさや派手さを前面に出してデザインだけスポーティーなスタイルになっています。完全に北米・中国を意識した顔をした車ばかりと言われています。しかし、日本人にとってはこれといったインパクトがあるわけでもなく、品性や高級感もない。横長に引きつったフロントデザインは「微妙」「つまらない」と言われてしまうのです。
期待外れの車に落胆する声
それでも昔からのファンが多いのは事実。今でも旧車と呼ばれるかつての人気車種は車好きの中で生き続けています。安価で乗れて運転が楽しく、様々な体験をさせてくれたホンダは大衆の味方のような存在でもありました。そんなかつての人気車が復活し、話題になりましたね。しかし、話題になったのに街では全然見ません。期待が大きかった分、満足がいかなかった人が多かったのです。かつてのホンダファンは「なんか違う」という声をこぼしていました。
NSXはファンを見捨てるし、スーパーカーとしても中途半端
NSXと言えば、1989年に発売されたバブルカー。当時は800万円で販売開始され、最終的には1300万円まで値上がりし、「日本で一番高い車」でした。まさに夢のスポーツカーで販売台数こそ多くはなかったものの、車好きの憧れの的であったことは間違いありません。今でもたまに街を走るNSXは特別なオーラを放っている気がします。そんなNSXが2017年に復活して話題になりました。特に話題になったのが2370万円というポルシェ911ターボやフェラーリカルフォルニアTなどの欧州スポーツカーと肩を並べてしまう価格設定です。そのホンダユーザーを度外視した価格設定はファンを落胆させ、「見捨てられた」と感じさせてしまいました。年間販売目標も1000台で、そのうち日本で売るのは100台だけ。完全に日本で売る気がありません。しかし、欧州車と勝負するにはブランドも品質もデザインも足りない。何回か街で走っているのを見たましたが、リアだけではNSXであることもスーパーカーであることもパッと見じゃ分かりませんでした。「86に似てるけど何だろう」と顔を見たらホンダ顔で「あーNSXか」と気づきましたが、スーパーカーのオーラが感じられず。ミドルスーパーカーと言えども中途半端さを感じます。
CR-Zにシビック、なぜ86のように上手くいかないのか
手頃で手の届くスポーツカーとして1980年代から1990年代に人気を博していた「ライトウェイトスポーツカー」のハチロク(AE-86)、シビック、CR-X。その復活モデルとして大成功したのがFT-86です。街に出れば86を見ない日はないですよね。同じように人気者だったCR-Z(CR-X)、シビックはなぜ上手くいかないのでしょうか。その原因はそもそも「ライトウェイトスポーツカー」ではなくなったというとことにあるでしょう。デカくなり、そして高くなってしまった。従って、世界ではとても売れています。シビックは特に売れていますね。上手くいっていないのではなく、日本では上手くいっていないように見えるだけなのです。
S660も人気だが批判の声も
軽自動車で2シーターオープンカー、世界で初めて量産車としてフルオープンモノコックボディを採用したビートの血を継ぐS660。軽自動車ながらもスポーツカーで走りを楽しめる面白い一台です。この遊べるスポーツカーはとても人気で、特に「遊びたいおじさん」が乗っているイメージですね。しかし、中には「おもちゃっぽい見た目」「所詮軽自動車」といった厳しい意見もあります。まあ人気なので批判があるのも仕方ないですね。
なぜつまらない車になってしまうのか
無難な車はつまらないですし、車にはある程度個性が必要です。しかし、個性があるだけでもかっこよくなければただの変な車です。その「かっこいい」という部分が難しいところですね。これに関しては完全に好みですから、市場やターゲットとなる層の好みに合うかっこよさでなければいけないわけです。では、ホンダ車はどうか。正直なところ、中途半端な印象を受けます。なんとか個性を出そうとしているけどしっくり来ないといったところです。では、なぜそのような車になるのか。問題は社内にあります。
コストと効率性重視の社風
ホンダはコストや効率性を重視し、株主への価値を重要視している傾向があります。大きな会社にはよくあることですが、会社が大きくなればなるほど現場や技術者の声が届かなくなるのです。エンジニアがどれだけ革新的なことをしようとしても、コストを削減され経営陣に止められる。挑戦や進化を必要なリスクとして捉えることができない体質が車にまで出ているように思います。第一にユーザーを考え、次に販売店を大切にすることが自動車メーカーとして一番大切なことです。
保守的で北米向けのデザイン
ホンダ顔は横長でツリ目のヘッドライトに太いアルミのバーが入ったグリル。これは北米や中国でウケるデザインなのです。北米や中国が主戦場ですから、当然北米や中国でウケるデザインの車を作ります。それを日本に持ってきてもウケるわけがないでしょう。また、デザインに関してはかなり保守的で、自社の人気な車のデザインを参考にするそう。つまり、似たような車が量産されるのです。そりゃつまらなくなりますよね。また、欧州の高級車のようにデザインに統一性を持たせて、ブランド力を強化するというのもホンダの将来を考えたら必要なことでしょう。ホンダのデザインは、ホンダがこれからどのようになっていきたいのかが全く見えません。やはり、ユーザーもホンダについていきたいと思わせるには、デザインで方向性を示していく必要があるでしょう。