そういえば水素自動車(燃料電池車)ってどうなった?普及しない理由と未来の話

環境問題が叫ばれる現代において、自動車というのは環境破壊の道具のように呼ばれてしまっています。日本ではプリウスを始めとしたハイブリッド車が、軽自動車を除けばおよそ20%近くまで普及しており、5台に1台がハイブリッド車であると言われています。また、100%電気で動く電気自動車も車そのものがバッテリーとして使えるという便利さから、震災の影響もあってよく目にするようになったかと思います。しかし、同様に環境にいいとされていた「水素自動車」は全然見ませんよね。「排ガスはなく、水しか出ない」といったアピールで環境性能は抜群に思えますが、最近はニュースにすらなりません。話題になったあれから、水素自動車はどうなってしまったのでしょうか。水素自動車が普及しない理由と、今後の開発についてお話したいと思います。

水素で動く?水素自動車(燃料電池車)とは?

環境問題の解決として、燃費が良いということも重要視されていますが、排気ガスがクリーンであることも重要ですよね。ハイブリッド車はガソリンも動かしますので、排気ガスは少なからず排出しています。反対に、水素自動車は水しか排出しないので、非常にクリーンな車であると言われていました。

実は、水素自動車と言っても大きく分けると2通りの種類があります。一般的には、シンプルにガソリンの代わりとして水素でエンジンを動かすものを「水素自動車(FCHV)」と呼び。水素を補充し、燃料電池内で化学反応を起こして発電、その電力でモーターを動かすのが「燃料電池車(FCEV)」です。

水素でエンジンを動かすFCHV

水素もガソリンと同様に可燃性の高いものですので、水素でエンジンを動かすというのも不思議なことではないですよね。エンジンも既存のガソリン/ディーゼルエンジンを改良して、水素でも動くようにしています。既存のエンジンを使用するのでコストもかからず、公害性の低い車を作ることができます。液体水素の取り扱いに関しても研究が進んでおり、タンク容量に関する課題も解決されつつあります。電気自動車や燃料電池車とは違って、エンジンで動くため、燃焼機関ならではのフィーリングを味わうことができるメリットがあります。エンジンには暖炉や蒸気機関車のようにロマンがありますからね。

しかし、「水素を燃やす」という工程から事故を危惧する声が多く、ガソリンとは違って炎が目に見えないことや、燃焼範囲が広いことから「急に爆発するのではないか」というイメージが定着してしまっています。水素と言うと中学校の理科の実験を思い出しますよね。水素と酸素を試験管の中に入れ、火をつけて爆発させるという実験がありました。日本人にとって「水素=爆発」というイメージが定着しているのは事実でしょう。

水素で発電するFCEV

トヨタの「MIRAI」が市販化されているように、燃料電池車は多少普及してきていますね。燃料電池車は電気を自ら発電するため、火力発電所などを使用せず、発電段階でも公害を起こさないという特徴があります。また、電気自動車は充電に時間がかかりますが、水素は気体なので瞬間的に補給することができて、MIRAIの充填は3分で完了します。3分ならガソリンとも大差無いですし、カップラーメンは出来上がってしまいますね。その3分の充填で650kmの航続が可能です。ハイブリッド車には劣りますが、ガソリン車とは変わりませんし、むしろMIRAIに負ける車種もあるでしょう。また、電気自動車の日産リーフは400kmなので、航続距離では燃料電池車に軍配が上がります。安全性においても既に量産化されているので、解決済みと言えます。MIRAIは仮に水素が漏れたとしてもセンサーが感知してバルブを自動的に締めるシステムがあります。水素を扱う部品は車外に設置されており、「漏れても溜めない」という構造になっています。

車の中で発電する燃料電池は火力発電所並みの効率

その航続距離から分かる通り、燃料電池車の発電効率はかなり高いと言えます。「車の中で発電なんて大してできないんでしょ」と思うかもしれませんが、その発電効率は火力発電所並み。つまり、少ない水素で多くの電気を電気を生み出せるということです。

燃料電池車FCHVの問題点と普及しない理由

 

こんなにもメリットがあり、「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車ですが、なぜ普及しないのでしょう。全世界の自動車全てが水素自動車になったら環境問題なんて解決するのに。そう思うのはまだ早いということです。そこには多くのデメリットや課題が壁となって立ちはだかっています。環境性能についてもあまり表立っては言われていませんが、「実はエコじゃないのでは?」と言われています。燃料電池車(FCHV)が普及しない理由を紹介しましょう。

エネルギーコストが高い

上記では、燃料電池の発電効率が高いと述べました。しかし、全体を通してみるとエネルギーコストが高すぎるのです。水素自動車で使用する水素は空気中にあるものを捕まえている訳ではありません。現状では天然ガスを分解して取り出しています。この取り出す作業には当然電力や火力を必要としますし、効率も非常に悪くなっています。水を電気分解して水素を取り出すにしても、電気を使いますからね。

製造段階でのCO2排出量が多い

製造段階で電力を使う。では、その電力はどうやって作るのか。そうです、ほとんどが火力発電でしょう。火力発電はバンバンCO2を排出しますし、結局は水素を使ってもCO2を排出してしまうわけです。

ご覧の通り、ガソリン車程ではありませんが確実にCO2を排出します。クリーンなエネルギーという一番の謳い文句も現状では嘘になってしまうでしょう。将来的にCO2を排出しない形で水素を生成したり、工場などで余った水素を利用すればクリーンと言えるかもしれませんが、まだ難しいようですね。

水素ステーション整備コストが膨大すぎる

2018年3月の時点で全国商用の水素ステーションは92ヶ所。その3分の1が移動式で常にあるわけではありません。また、24時間営業のところもかなり少なくなっています。これは、充填時間が短いというメリットも待ち時間で意味のないものになってしまいそうです。「じゃあ増やせばいい」と言っても簡単にはいきません。水素は圧縮しないと大量に容積できないため、高圧化タンクを用意しなければいけません。配送網も新たに作らなければいけないのです。水素ステーションの新設には1基あたり4〜6億円かかると言われています。全国の空白地点を埋めようと思えば国家予算並みのコストがかかりますね。

反対に、EVステーションの設置コストは格安です。電気を通すだけでいいですからね。ポール型の充電機はかなりコンパクトでスーパーやコンビニの駐車場にも簡単に設置できます。家庭用の充電機も10万円程で設置できてしまいます。もちろん、そういった安価なスタンドは充電速度が遅いですが、スーパーなどの駐車場に設置されていることで、買い物中に充電することができます。充電が遅いというのも設置コストの低さと場所を取らないという利点で解決できています。急いでいる時には急速充電機のある施設を探せばいいですし、電気自動車にはあまりデメリットを感じませんね。

安全性の認知が難しい

やはり、「水素=爆発」というイメージが定着しているため、ガソリンよりも危険に感じる人が多いのではないでしょうか。上記の通り、トヨタのMIRAIなどでは水素漏れ検知機能など安全性に力を入れていますが、まだまだ認知には至りませんね。また、事実として水素は爆発しやすいです。水素は燃焼速度も拡散も早いので、一気に燃えます。また、空気よりも軽いので天井部に溜まりやすく、臭いがしないので気づかないという危険性があります。もちろん、水素が爆発しやすいからといって、車が爆発しやすいというわけではありません。そもそも、ガソリンだってエンジンの中で爆発しているわけですから、普通に考えたら危険なような気もしますよね。

燃料電池車の今後は…

EVの普及で音沙汰がなくなったように思える燃料電池車ですが、果たして未来はあるのでしょうか。私個人としてはある程度普及するべきかと思います。エネルギーというのはいつ何があるかわかりませんし、一つのエネルギーに依存し過ぎるべきではないと思います。世界情勢や災害などでガソリンや電気が使えなくなるなんてこともありえなくはありません。そんな時に水素という選択肢があってもいいのではないでしょうか。特に日本は石油産出国ではないので、自国で生成できるエネルギーというのが必要なのかもしれませんね。

政府は普及を諦めていない、東京オリンピックに向けた動き

政府が燃料電池車の普及をなんとしても成功させたい。それがわかるのがトヨタMIRAIの補助金でしょう。国から202万円の補助金、東京都からは101万円の補助金が降ります。また、港区事業者は50万円程の補助金も貰えるようです。そして、一番凄いのがトヨタ。なんと4年後に半額で買い取ってくれるのです。4年間の分割払い、75,420円×48カ月で良いのです。分割で買って、補助金はすぐに全額支給されるので、余裕で月々の支払いができますね。これもオリンピックに向けた施策の一つです。政府はいち早く水素自動車を普及させて世界にアピールしたいのです。もしそこでアピールに成功すれば、水素技術において世界から一歩リードできますからね。

ガソリンと併用が可能なマツダのロータリーエンジン

燃料電池車ではなく、水素でエンジンを動かすFCHVも普及に向けた開発が進んでいます。マツダは水素ロータリーエンジンを開発し、RX-8 ハイドロジェンREを企業などに向けてリース販売しています。また、ハイブリッドのプレマシー ハイドロジェンREハイブリッドも開発・販売しています。水素はガソリンエンジンを多少変更すれば使用できるため、こういった開発も容易にすることができます。また、ロータリーエンジンはバックファイアなどの水素特有の課題を解決できるので、有望視されています。

次々に撤退していくメーカー、EVに注力

しかし、世界的に見れば水素自動車産業から次々にメーカーが撤退してます。もう見切りをつけられたということでしょう。1990年代から試作車を発表し、水素自動車開発の先頭を走っていたダイムラーも開発から撤退。続いてフォード、日産・ルノーのアライアンスもFCV商品化を凍結しました。FCVに開発・運用に莫大なコストをかけるよりもEVに注力したいということでしょう。流石にFCV、EVの開発を並走させられるのは世界トップのトヨタくらいなのでしょう。トヨタには水素自動車メーカー代表として頑張って欲しいですね。

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