誰かに乗って欲しいと切に願うフィアット・ムルティプラ
イタリアの個性的な車の象徴 フィアット・ムルティプラ
イタリアの車はとにかくスタイリッシュというよりはクリエイター受けするデザインが多いものですが、時々度を越して「ギョッ!」とするデザインが現れます。
個人的にその代表と思うのが、このフィアット・ムルティプラ。
…どうでしょう?
この車を見た時に、筆者なら絶句とか茫然自失以外の何ができるとも思えません。
ある意味では「クルマってこういうデザインでもいいんだ?」そう思わせるスタイルです。
さらにもう一枚、これが同じ「ムルティプラ」の後期型です。
えっ……何が起きたんでしょう?????
やっぱり、やっぱりイタリア人でもこのスタイルはダメだったんでしょうか?
この手の凄まじいばかりのイメージチェンジというと、国産車なら前期型のヤツメウナギ風ヘッドライトが大不評だった2代目ホンダ・インテグラや、これがミラージュ・サイボーグ後継ですと言われて絶句してしまった前期型ミラージュ・ディンゴのような例もありますが。
いくら何でも、前期型であそこまでやっておいて、後期型でこれはどうなんだ?と言わざるをえません。
ビックリしました。
しかも前期型には全長を4m未満(正確には3999mm、日本輸入モデルの車検証では4005mm)に抑え、欧州でのカーフェリー料金を安くあげるという目論見があったにも関わらず、後期型ではデザイン変更により4,097mmに拡大!
これじゃカーフェリー高いじゃないですか。
ラテン系の大らかな心でも受け止められなかったこのデザイン、実は筆者はあまり嫌いではありません。
是非一度所有して、「見られる快感」を味わいたいと思っている一台なのは確かです。
実はこのムルティプラ、6人乗り。
とはいえ全長の短い車ですから、3列シートがあるわけではありません。
そう、3人乗り2列シートなんですね。
国産車でも日産・ティーノやホンダ・エディックスという例があるので(どちらも全く売れませんでしたが)、馴染みが無いレイアウトというわけではありません。
ムルティプラの問題はそんなところには無くて、何と6人乗りミニバンでありながら、5速MTの設定しか無いんです。
一応「ツインモードクラッチシステム」というオプションがあって、シフトノブのスイッチでクラッチ操作ができるのですが、クラッチペダルはそのまま残っているので、日本の法規上AT限定免許では乗れません。
搭載している1600ccエンジンに対して車重が重すぎ、非力だからオートマなんて無いんです。
マニュアルミッションだったら、ブン回せば走るでしょ?
そういうところはしっかりラテンなんですね。
かくして3人乗りの前席の真ん中の人は、インパネシフトの5速ミッションを駆使するドライバーの邪魔にならないのかはとても気になりますが、たぶんそのへんは些細な話なのでしょう。
筆者が知人から
「家庭の事情でミニバン買わないといけないんだけど、中古でいいからマニュアルミッション車は無い?」
と相談された事があります。
もちろん迷わずムルティプラを薦めました。
知人はしばし絶句してメールの返事もなくなり、もしかしてあまりのショックで絶交されたかと不安になった頃、「やっぱりフォレスター買いました。」との知らせが来ました。
ミニバンじゃなくても良かったんですね…。
どのみち他の選択肢としては、2000ccターボ積んだ三菱シャリオ・リゾートランナーGTくらいしか無かったんですが。
今でも誰かから同じような相談来たら、やっぱりムルティプラを薦めると思います。
もちろん前期で。
何だかんだで、こういうラテンな車は大好きです。