BMWとアルピナ。パッと見て違いが分かる人もいれば、わからない人もいると思います。僕も生まれて初めてアルピナを見たときにはただのBMWのカスタムカーだと思いました。
しかし、アルピナはただカスタムされたBMWというわけではないのです。むしろその逆で、全くの別物なのです。
今回はBMW Japanマーケティングでも仕事をさせていただいた私が、先日(比較対象である)BMWのM5とアルピナのB5を同時に試乗することに成功いたしましたのでその違いのすべてを、特に走りの面にフォーカスしてお話ししたいと思います。
アルピナとは
①BMWの公式、公認チューナーである
アルピナはBMWの公認チューナーなので、通常に購入すればBMW正規保証も受けられます。生産の工程としては、BMWの工場で生産されたボディがアルピナの工場に入り、アルピナ独自のパーツにて補給を受け、BMWのエンジンをベースにエンジンのチューニング等が施され、アルピナ独自のモデルとなって生まれ変わり、販売されます。エクステリアのBMWロゴはそのままで、BMWの正規保証も受けられますが、全くの別物、ということです。ちなみに、ステアリング・ホイールにはアルピナのロゴか付けられています。
②BMWとは全く異なったブランド哲学
BMWの正規チューナーであり、『世界全体』での年間生産台数は毎年およそ2,000台以下。その希少車ぶりはアルピナが手作業にこだわり、品質にこだわっているからこその限定台数であり、コアなファンを魅了する車であることは間違ありません。そんなアルピナは、『感動の極み、アルピナ』というスローガンを掲げ、『最高のもの』を提供するというブランド哲学でこれまでに販売を続けてきました。BMWの『駆け抜ける歓び』とはまた違った、落ち着いたエレガンスな印象を私は受けました。
③その他のアルピナに関する情報
その他企業の歴史やデザインハイライト等はこちらの記事にございますので是非ご覧いただければと思います。
試乗車ハイライト
それでは、今回試乗しましたBMW M5とアルピナ B5についてご紹介していきましょう。
比較できるようにうまく写真が撮れなかったので、公式HPより試乗車と同じカラーのものを引用させていただき、試乗車の紹介をしていきます。
ボディデザインはスポーティVSラグジュアリー?
まずはBMW M5。
そして、アルピナ B5。
いかがでしょうか。エクステリアデザインは基本的にバンパー回り、アルピナ伝統の20本スポークホイール、それにこちらの写真ではわからないですがサイドラインが入りまして、『アルピナらしい』デザインですね。それでもほとんど同じに見えてしまう方がいらっしゃってもおかしくはないと思います。個人的な見解では、BMW M5は大経口エア・インテークやリアバンパー、ホイール等の形状からよりスポーティに、アルピナ B5は逆にフロントバンパーの形状やホイールのマルチスポーク感、各所にクロームメッキを使用している点からかなりラグジュアリーに感じます。
しかしアルピナに関してはラグジュアリーな見た目とは裏腹に、少々攻撃的な4本だしマフラーが秘めたるパワーを予感させてくれるとも思いました。
スペック比較 パワーはアルピナのほうが上?
そして気になるスペック比較をしてみました。
M5の方が車重で60㎏も軽くて低回転域(1,800rpm)からのトルクがあり、加速も早いということが分かった一方、B5の方が車重が重いですが馬力があり、トルクは3,000回転から最大81.6kgmを発揮するというM5より5kgmも高いということが分かりました。
そして、アルピナ B5はちなみにM5ではなくノーマルのBMW 5シリーズ(ラグジュアリー)のボディがベースとなっています。その少し控えめなボディにM5同じ排気量の4.4LV型8気筒のエンジンを積んでいます。数字だけで見れば同じエンジンのようですがもちろん全く同じものではなく、アルピナチューンが施されたBMW製4.4L V型8気筒エンジンです。
このように同じ大きさのパワートレインでも、見た目も少し変わってきます。M5(右)のエンジンの方が気持ち上めにレイアウトされている気がするのは僕だけでしょうか。しかしともかくどちらもエンジンルームはしっかり詰まっていてマッチョな印象です。
今まで正直アルピナはBMW Mモデルの『ライバル』ではないと勝手なイメージを持っていましたが、いざこうして並べてちゃんとスペックも比較してみると、もはや『最大のライバル』ともいえるほどのものを持っていると感じました。
試乗レポート
そしていよいよ、この2台を乗り比べてみます。
インテリア
BMW M5
僕実はこの車、将来買うことを夢に見ていますので、乗る前から外から見ているだけでワクワクが止まりませんでした。マリナベイ・ブルーのボディの中のホワイトレザーシートを備えた車内に乗り込むと、ヘッドレスト付近のライトアップされたM5バッジに迎えられ、そこには上質なナッパレザーに張り替えられたノーマルの5シリーズとはまた違ったラグジュアリーな空間が広がっていました。
アルピナ B5
アルピナ B5ですが、インテリアはM5よりもノーマルの5シリーズがベースになっています。しかしレザーも多用され質感はかなり高く、ステアリング・ホイールに光るアルピナのロゴで一気に別の車のイメージを加速させてくれました。ブラックのフルレザーシートに乗り込むと、M5とはまた違った、全身にわたるホールド感は感じなかったです。(M5のシートは肩から太ももまでにかけて幅広くホールドしてくれている感覚でした。)
エンジンサウンド
BMW M5
そしてひとたびエンジンをかけると、6気筒のM3やM4とはまた異なったエンジン音でV8エンジンが起動しました。それは太くて低いけどシャープで、程よい大きさで上品ともいえるような、とにかく最高にアドレナリンを刺激する音でした。走り始めるとその音はみるみる大きくなり、只者ではない音を発しながら都心の街中を進んでいきます。
アルピナ B5
エンジンをかけると青く光る独特なデジタルメーターパネルが点灯され、比べてはいけないほど落ち着いた音とともにV8エンジンが起動しました。M5とはまた違った音で、イメージとしてはノーマルBMWの6気筒もしくは4気筒のエンジンをかけたような落ち着きと静けさでした。
走り
BMW M5
コンフォートモードでの走りは思っていたよりも乗りやすく、これなら普段使いも余裕でいけてしまうと思いました。しかしスポーツモードに入れるとその車体は戦闘モードに入ったようにエギゾースト音を変えて音の振動で車体も細かく揺れるほどになり、その走りは豹変しました。低回転からのトルクがあり、直線での加速はまるでスペースシップに乗っているような(乗ったことはないですが)、ロケットランチャーにでも打ち出されたかのような、景色が一気に変わってしまうという今まで味わったことのない感覚に襲われました。そして直進の安定性ももちろん感じましたが、それよりも楽しく、そしてB5との違いをかなり感じたのが下に書きますがコーナリングでした。
アルピナ B5
走り出すと同じV8のエンジンとは思えないほどなめらかで、M5に比べると走り出しは少し非力なイメージでした。しかし落ち着いた音と共に走り進めていくと、非力なイメージは完全に拭われました。なんともなめらかで安心感のある落ち着いた走りだろう、と思いました。そしてその安心と落ち着きは、M5をも凌駕する強大なパワーに支えられた走りだったのです。ステアリングホイールにはパドルシフトは装備されておらず、裏側に取り付けられた小さなボタンで変速が可能なんですが、低速に入れて引っ張ってみると少し力強い音と共にとんでもないトルクを発揮し、M5とはまた違った加速を見せました。そしてその安定性はM5よりも高く、何よりも乗っていてストレスがなく、落ち着いて乗れました。
コーナリング
BMW M5
長さ5mに迫る巨体ですが、コーナリング時にはノーズも軽く、リアもしっかり付いてきてくれました。M5に『もっと速く走れ。コーナーを攻めろ。』といわれているような感覚でした。これらの挙動はやはり噂のMモデル初搭載のM xDriveという電子制御式四駆システムのおかげでしょうか。コーナリング時ではFR(フロントエンジン・リアドライブ)駆動の様に動いたのがすごく印象的で、楽しかったです。
アルピナ B5
コーナリングではM5よりノーズが重い印象で軽やかに攻めていけるとは少し違う走りでしたが、そういう車ではないことはすでに理解していました。別にこの車で飛ばしたい!とも思わなくなっている自分がいました。
同じV8の使い方でクルマはこんなにも変わる
乗ってみて個人的に思ったのは、M5は大きなエギゾースト音と攻撃的なデザイン、軽快な走りでまだ若くて元気のある人にぜひ乗っていただきたいクルマでした。反対にB5は圧倒的パワーに裏付けされる落ち着いた走りをしたい大人な人にぜひ乗っていただきたいクルマでした。
冒険を取るか、優雅を取るか
他のアルピナモデルに乗ったことがないので一概に言えるかわかりませんが、BMWとアルピナではその車を作るメーカーそれぞれの哲学の違いを深く感じました。
BMWはどんどん攻めたくなる『楽しさ』
アルピナは大トルクに後押しされる『安心』
こんな印象を持ちました。
個人的にはまだ20代で、まだまだ冒険をしていきたいのでBMW Mモデルを選んでしまうと思いますが、将来はあえてアルピナを選んで乗ることもカッコイイと思いました。
車の奥の深さ
そして何より今回の試乗を終えて改めて感じたのが、『車ってどれだけ奥が深いんだ』ということでした。なぜなら同じ排気量、むしろもとは同じV8のエンジンの使い方、もちろんそれだけではなくサスペンションの硬さが違うなどの変化はありますが、しかし外からではそこまでの大きな変化はないように見えていました。ですがやっぱり乗ってみると全然違いました。極端に例えるならV12エンジンをランボルギーニとして使うか、ロールスロイスとして使うか、、クルマとはそのクルマを作るメーカーたちのその哲学と思いで全く違った車になるのです。
これからもどんなクルマが登場してくるのか、非常に興味深いところですね。
内面からも見るクルマ選びを
今回のM5とB5の比較試乗を通して改めて車の奥の深さを知りました。それと同時にこれからは見た目や数字に騙されず、クルマをもっと内面や作ったメーカーたちの思いなども感じながら分析していきたいと思いました。
これから車を買うにあたってもまだまだ分からないことだらけ、車の本質などなかなか深くまでは知る機会がありませんが、新車なら安心でしょう。
しかし中古車となればどうでしょう?実は値段や見た目、一応表示されている走行距離などで『なんとなくイイな』と判断してしまっていませんか?僕はしてしまっていました。
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Mシリーズも出品されており、お安く購入可能です。アルピナも少ないですが出品されていることもあります。「Ancar」で乗りたかった憧れの車を探してみるのは、いかがでしょうか。