実際はもう少し安く済んだようですが、ブレーキだけでそんなにメンテ費用がかかるなんて、買う前には想像もできなかったでしょう。
テスラの維持費には、相応の覚悟が必要なようです。
近年は話題に上ることの多いテスラですが、そのメンテナンス費用についてはあまり語られることがありません。
たしかに、「モデルS」はデビューが比較的最近なので、一番古い車両でもまだそこまでガタが来てはいないはずですし、電気自動車ということもあって平均的なオーナーならそう何万kmも乗り回してはいないでしょう。
しかしここへ来て、あるカナダ人ユーザーがテスラを所有することに対し、驚きの告発をしてくれることになりました。
この人物がブレーキ部品の交換のため、テスラ・モーターズクラブ(サーヴィス工場)にモデルSを持ち込んだところ、なんと8500カナダドル(1ドル=83.5円として、70万9750円)もの見積もりを提示されたというのです。
このクルマは2012年に新車で購入されたもので、走行距離は10万3000kmほどでした。
参考までに、気象条件としては、ここ4年の間にそれぞれ2回の寒冬と暖冬を乗り越えています。
症状としては、踏んだときの具合が甘いと感じられたため、整備工場に持ち込まれたということです。
それ以外にも運転席側後方のどこかから、ガタガタいう異音もしていたそうです。
3週間後に整備工場に向かうと、うれしくない結果が判明しました。
実は、4つあるブレーキのピストンすべてが動かなくなっていたのでした。
その修理見積もりが、例の71万円になったというわけです。
参考までに、内訳も記しておきましょう。
ブレーキキャリパーアッセンブリー(ピストン込み)が約6万2207円。
リヤローターが2つで約2万7638円。
フロントローターは2つで若干安くて約2万4215円。
パーキングブレーキのキャリパーとパットで、約10万3122円。
ドライヴァー側のコントロールアームも要交換で、こちらは約2万1793円でした。
幸いにもピストンのうち1本だけは交換せずに済み、実際にかかった金額は5824.75ドル(48万6366円)、つまり「なんとか」50万円弱に収まったのでした。
さて壊れた要因を探ってみると、ピストンはブレーキを踏む頻度が低すぎると、機能しなくなってしまうということが分かりました。
それは、EVゆえ発電用の回生ブレーキを多用するためとされます。
このほか、北国であるトロントには付きものの、凍結防止剤による塩分が、ブレーキ部材の劣化を早めたと考えられます。
モデルSは高級車の1つと見なされていますが、この手のトラブルはさすがにオーナーに非のないものです。
少なくとも、そこまで気を遣うプロでもなければ、なかなか気が回らないでしょう。
こういったテスラに特有の問題に加え、それに精通したメカニックが少なく、簡単につかまらないのもまた厄介な事実です。
テスラCEOのイーロン・マスク氏は、新型車開発のスピードアップに情熱を傾けているようですが、それと同じくらい、中古車のメンテナンスにも熱心になってほしいと願わずにはいられません。