技術体感・LSDの効果を体感するには!?仕組みと実践方法

「LSDを入れてみたけど、何か効果が体感できない」そんな人もいると思います。クルマを速く走らせるには効果的なパーツですが、その効果を体感するにはどうすれば良いのかを紹介します。

LSDの前に、デファレンシャル(差動装置)の解説

「リミテッド・スリップデフ」すなわちLSDとは何かを説明する前に、簡単にクルマの仕組みについて説明します。

私たちが乗るクルマは左右にタイヤがついているわけですが、もし左右のタイヤが同じ回転数で回っていたらどうなるでしょう?

カーブを曲がる時には外側のタイヤは多く回り、内側のタイヤは少なく回らないといけません。

もし同じ回転数だとすると、外側のタイヤに合わせれば内側のタイヤもそのまま真っ直ぐ進もうとして、曲がろうとする力を邪魔します。

逆に内側のタイヤに合わせれば、外側のタイヤは必要な回転数に不足して、引きずられるような形で曲がる事になります。

人間の動きで例えれば、歩いていて急に方向変換をしようと思えば、カーブの内側の足を止めたり、緩やかに動かさなければいけないのと一緒です。

その時、左右のタイヤの回転数を歯車などで調整するのが差動装置、すなわち「ディファレンシャル・ギヤ」です。

通称「デフ」と呼ばれるこの装置の発明で、自動車は実用化にこぎつけたと言えます。

なぜLSDが必要なのか

その「デフ」の役割を制限するのがリミテッド・スリップデフ、すなわち「LSD」なわけですが、なぜ曲がるために必要な装置を制限する必要があるのでしょう?

理屈を全て書くと難しい話になりますが、簡単に言えば「デフ」とは「カーブを曲がる」事に特化した装置なので、「前に進む」ための装置では無いからです。

カーブで曲がるためにデフで左右のタイヤの回転数を調整している間は、クルマを前に進ませようとする力は弱くなります。

そうしないと、前に進ませようとする、すなわち「真っ直ぐ走らせようとする」力ばかりが強くなるので、曲がりにくくなるからです。

そのため、左右の回転数の調整はある程度行いつつも、その機能を制限して前に進ませようとする力を高めるのがLSDだ、と考えておおむね間違いありません。

当然「曲げるための力」は弱まるので、クルマを曲げるための方法や、走行ラインはLSDが無い車とは異なってきます。

LSDの効果を体感できないのはなぜか

それでは、なぜLSDがついていながら、普通のクルマと同じように走ってしまい、何の体感もできないのでしょう?

それは、先に書いたように「曲げるための力」「真っ直ぐ走る力」の調整を行うために、LSDにも効きが強いものから弱いものまで、さまざまなものがあるからです。

最初の「デフ」の説明で、「もしタイヤの回転数が左右同じだったら、曲がるのが困難になる」事は書きました。

実はそれと同じ効果を生み出すため、完全に「デフ」の機能をストップして左右のタイヤを直結する「ノン・スリップデフ」あるいは「デフロック」というものもありますし、LSDでも効き目を強くすればそれに近い効果を出せます。

さらに、先の項で「LSDがある車と無い車では、曲げ方も走行ラインも異なる」とも書きました。

すなわち、体感できるほど効果を高めたLSDは、普通に公道を運転するようなレベルではとても走れたものではない、という事であり、逆に言えば、公道を走っても違和感が無い程度の効き目しか無いLSDだから、普通に走れるわけです。

もし効き目の強いLSDを装着していた場合、普通に走ろうとしてもタイヤを引きずるなど抵抗ばかりが多く、逆に遅くなったり燃費が悪くなったりタイヤが減ったりと、いい事がありません。

FFや4WD車の場合はさらに、真っ直ぐ走らせようとする力が前輪、すなわちハンドルに直結した操舵輪に作用するので、勝手にハンドルを真っ直ぐしようとする力が働きます。

パワーステアリングでアシストしていればいいのですが、それが無い「重ステ」の場合は人力でその力に対抗するにはかなりの腕力が必要で、油断しているとドライバーの指をへし折るくらいの力が働くのです。

そのような事が起きないよう、市販車に純正装着されるようなレベルのLSDでは、利きが非常に弱くなっています。

本当に体感できるLSDというのは、サーキットやオフロード走行で本気で走るためのものなのです。

LSDをどうしても体感したい場合

それでも、純正装着レベルのLSDで効果を体感してみたい場合はどうすればいいでしょうか?

そのためには、フカフカの新雪や、砂利道など極端に路面の摩擦係数が少ない場所にクルマを持ち込むのが一番です。

LSDやデフロックの無いクルマでは、そうした場所で急発進しようと思っても容易にスタックしてしまい、マトモに走るどころか発進すら困難になる場合もあるでしょう。

しかし、LSDがついていれば左右のタイヤをいかなる状況でも前に進ませようとするので、効き目の強弱にもよりますが、何とかクルマを走らせる事ができます。

あるいは、FRのクルマであれば停止状態で目一杯ハンドルを切り、アクセル全開でクラッチをつなげてもいいでしょう。

もっとも、LSDの中でも左右両輪がしっかり接地していないと効果を発揮しない構造、あるいは効き目が非常に弱いタイプ(「スーパーLSD」や「ダイレクトトラクションLSD」と呼ばれるタイプ)だと、それでも体感できない事はあります。

先にも書いたように、LSDは普通に走行する限りにおいては抵抗でしかありません。

それでもドライバーが確固たる意思をもってクルマを前に進ませなければならないならば、デフを溶接などで直結してしまうか、ラリー競技でも使えるようなスポーツ用の電子制御式LSD、あるいは「機械式LSD」と呼ばれる、調整によって利きを強めて走行に積極的な干渉ができるタイプのLSDが必要ですね。

最近の電子制御式のクルマとは相性が悪い

また、LSDはクルマが本来持つべき「左右のタイヤの回転数を調整する機構」である事から、アクセルを踏んで加速する時だけ効くものではありません。

ブレーキング時や何もしていない時でも同様の効果がある事から、機械的なLSDはABSやトラクションコントロールなどの電子制御との相性が悪い場合も多く、LSDの効果がフィードバックされた結果、こうした電子制御がセイフティモードで働いて車のスピードを緩めようとする事さえあります。

そのため、最近の電子制御が多いスポーツカーでは、LSDも電子制御に組み込み、必要が無い限りは走行に干渉させないものが増えています。

最近のクルマで「LSD装着と書かれているけど、よくわからない」というケースは、電子制御でそれとわからないようにしている場合もあるかもしれませんね。