国産エンジン史スポーツカー・トヨタツインカム VS 日産ターボ!その意外な結末

国産エンジン史スポーツカー編その10は、量産ツインカムエンジンとターボ、どちらが優れているのかです。

カタログスペックよりイメージ戦略のトヨタ

1970年代、段階的に厳しくなる排ガス規制の中で唯一の量産DOHC(ツインカム)エンジン、S20を廃止していた日産は、一貫してL型などSOHCエンジンを採用していました。
DOHCエンジンをスポーツモデル向けに残していたトヨタと比較した場合、以下のような差があります。
[2リッターエンジン] トヨタ 18R-GEU(4気筒DOHC):最高出力135馬力/最大トルク17.4kgm
搭載車種:カリーナ、コロナ、セリカカムリ、マークIIの2000GTモデル
日産 L20E(6気筒SOHC):130馬力/17.5kgm
搭載車種:セドリック、グロリア、スカイライン、ローレル、ブルーバード、フェアレディZ、レパード
[1.6リッターエンジン] トヨタ 2T-GEU(4気筒DOHC):最高出力115馬力/最大トルク15.0kgm
搭載車種:カローラレビン、スプリンタートレノ、カローラ、スプリンター、カリーナの1600GTモデル
日産 L16E(4気筒SOHC):115馬力/14.6kgm
搭載車種:バイオレット、オースター、スタンザ
このように、実はカタログスペック上の差はそれほどありません。
それでも「スポーツエンジンならばDOHCエンジン」と謳ってしまえばユーザーには説得力があるものです。
日産のSOHCエンジンも排ガス規制によりエンジンフィーリングの悪化は問題となっていましたが、それはトヨタのDOHCエンジンでも同じ事。
レースや競技の世界ではむしろL型やOHVのA型など日産エンジンが優れていたといったところで、イメージ戦略ではトヨタの勝利と言えました。

大排気量車並のトルクを誇るターボエンジンの登場

その状況を打破したのが、日産が1979年6月にモデルチェンジした430型セドリック、グロリアに採用した日本初のターボエンジン、L20ETでした。
[日産 L20ET] 6気筒SOHCターボ:145馬力/21.0kgm
採用車種:430型セドリック、グロリア、C210型スカイライン、S130型フェアレディZなど
これは馬力では2.8リッターのL28に、トルクでは2.4リッターのL24に匹敵するエンジンで、当然トヨタの18R-Gよりもハイパワーでした。
そもそもは「5ナンバーの2リッターセダンで、大排気量並のパワーと2リッター車の燃費を両立する」というコンセプトで販売されましたが、ターボのブーストがかかった瞬間に目に見えて燃料計の針が下がっていくなど、実際にはエコ志向ではなくパワー志向だったのは明らかです。
対抗するようにトヨタも1980年10月には6代目クラウンにターボ車を設定します。
[トヨタ M-TEU] 6気筒SOHCターボ:145馬力/21.5kgm
採用車種:MS110クラウン、MZ10ソアラ、MA60セリカXX、X60系マークII、チェイサー、クレスタなど
日産のL20ETとほぼ同じスペックでしたが、特徴的なのはセダンやクーペの高級モデルへ設定した事で、トヨタにとりスポーツモデルは未だにDOHCエンジンを搭載するものだったのです。

ターボか?DOHCか?

日産がスポーツモデルにもターボを採用したのに対し、トヨタはスポーツモデルにはあくまでDOHCエンジン搭載にこだわった事から、1980年頃の一時期「ターボとDOHC、どちらがスポーツモデルとして優れている?」という論争が真面目に起きました。
今考えるとなぜそのような議論があったのか不思議に思うところですが、ターボを使うかDOHCエンジンを使うかは、そのメーカーや車種のキャラクターを決める重大事だったのです。
確かにカタログスペック上、特にトルクではターボエンジンは優れるものの、当時のターボエンジンは低速トルクがスカスカ、ブーストがかかると途端に爆発的に加速する「どっかんターボ」でした。
なおかつオイル消費が激しい、ターボの寿命が短い、走行後にクーリングしないと熱で破損するなど初期のターボは耐久性にも難があるという評判でしたから、激しいスポーツ走行には扱いにくいとも言われていたのです。
そのため、電子制御化でレスポンスを取り戻したDOHCエンジンの方がトルクには劣っても扱いやすく燃費がいいとさえ言われ、圧倒的なパワーのターボと俊敏なレスポンスのDOHCのどちらが優れているという議論は尽きませんでした。
日産ユーザーですら、L型をNAのままでチューンする「メカチューン」(Lメカ)とターボチューンで意見が分かれたほどです。

早い話、両方あれば!

しかし、その論争はアッサリと決着がつきました。
1982年10月、TA63型カリーナ、TT142型コロナ、TA63型セリカに、18R-GEUの後継として日本初のDOHCターボエンジン、3T-GTEUが搭載されたのです。
[トヨタ 3T-GTEU] 1.8リッター4気筒DOHCターボ:160馬力/21.0kgm
日産のL20ETより小さい排気量でトルクは同等、馬力はよりハイパワーな3T-GTEUの登場で、「なんだ、DOHCエンジンをターボ化すればすごいエンジンになるんじゃないか。」という事で決着がついたのでした。
その後カリーナやセリカは3T-GTや国際ラリー用の4T-GTなど、ラリーでDOHCターボの威力を存分に発揮します。
その頃の日産同クラスエンジンのスペックは以下の通りでしたから、またもやトヨタが一歩先を行ったのでした。
[日産 Z18ET] 1.8リッター4気筒SOHCターボ:135馬力/20.0kgm
搭載車種:910型ブルーバード、S110型シルビア/ガゼール


ただし日産もトヨタと同じ結論に達してはいて、DOHCエンジンのFJ20EをベースにしたFJ20ETや、CA18DETといったDOHCターボが翌1983年から登場します。
次回はトヨタ・日産に加えて他社のSOHCターボやロータリーターボといった「80年代前半初期ターボ車の時代」をご紹介します。

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