国産エンジン史エコカーその5・GDIとD-4やNeo DI、対照的だった初期の直噴エンジン

国産エンジンの歴史をジャンル別の観点から解説していくシリーズ、エコカー編その5は「直噴エンジン」です。画期的なエコエンジンとして「GDIエンジン」を全面的に売り出した三菱に対し、量販車に搭載せず慎重に直噴エンジンの熟成を進めたトヨタや日産との差は今の目から見ても興味深いところです。


直噴エンジン「再登場」

吸気系配管であるインテークマニホールド内にインジェクターと呼ばれる燃料噴射装置を設け、圧力をかけて噴射する事で空気と燃料の混合気を安定供給可能な「インジェクション式」と呼ばれる燃料供給方式は、日本でも1967年のダイハツ コンパーノをはじめとして、採用車種が次第に拡大していきました。
それが飛躍的に増えたのは1970年代のマスキー法やオイルショックがきっかけで、燃料噴射を電子制御化する事で排ガス中の有毒物質を低減するための燃焼や、燃費向上に大いに役立ったのです。
しかし、インテークマニホールドではなく爆発燃焼行程が行われるシリンダーに直接燃料を噴射する「直噴エンジン」の方が効率的な事は以前から知られており、既に第二次大戦中には主にドイツで航空機用エンジンに採用されていました。
ただ、自動車のようにスロットルの増減が激しく、航空機ほど頻繁な整備が必要だと実用性が低いエンジンでの採用は難しく、電子制御による燃焼制御技術などの発展でようやく三菱自動車が「GDIエンジン」の名で直噴エンジンを量販車に世界で初めて採用したのは、1996年の事でした。

期待のエコエンジンだった三菱のGDI

小さい排気量の割に大出力を狙えるため、結果的に良好な燃費が得られる直噴エンジンとして、三菱はGDIエンジンを「画期的なエンジン」として大々的に宣伝し、「GDI CLUB」のステッカーをユーザーに届けて「GDI会員」のような扱いをしていました。
実際、最初期の1.8リッター4G93型GDIエンジンを搭載したギャラン/レグナムは当時の自動車メディアでの燃費テストでも良好な結果を残し、東京から九州まで1000km以上を無給油で走破するなど、「パワフルで燃費の良い、環境に優しいエンジン」として注目されたのです。
また、電子制御式直噴エンジンの特性として排気温度を制御しやすいため、主に冷間時の排ガスから有害ガスを低減する効果も見込めたのでした。

慎重にスタートした他社の直噴エンジン

一方、三菱以外の国産他メーカーは直噴エンジンに慎重でした。
Neo DIという名称で直噴エンジンを開発した日産が1997年に初搭載車として選んだのは、量販車とは言えないシーマの、かなりマイナーな兄弟車である4代目レパードです。
トヨタも1998年に2リッターの直噴エンジン3S-FSE型「D-4」エンジンを投入しますが、地味な小型セダンのコロナプレミオに本革シートなど高級なオプションを装着し、232万7千円と高額な40周年記念車にD-4エンジンを搭載してきます。
その他のメーカーに至っては2000年以降にようやく実験的に採用し始めたほどで、国内では三菱ただ1社のみが積極的になり、ヒュンダイやボルボ、PSA(プジョー・シトロエン)にGDIの特許を販売していったのです。
三菱に続いた日産やトヨタが量販車種にいきなり採用せず、不人気車や特別仕様車で様子を見ながら次第に採用車種を増やしていったのとは対照的でした。

リーンバーン型直噴エンジンの難しさ

他メーカーが慎重だったので「直噴といえばGDI、GDIと言えば三菱」という勢いでしたが、その一方でデビュー直後から「今までのガソリンエンジンとの違い」に関する声があがっていました。
「何か常に異音がする」「排ガスが独特の臭いがする」「思ったより燃費が良くない」というユーザーレビューが多数見受けられるようになったのです。
異音については直噴エンジンの高圧インジェクターが発するカチカチと言ったノイズへの防音が不十分で、ディーゼルエンジンのようだという印象を与えましたが、これは明らかに熟成不足でした。
また、シリンダーに直接噴射するた燃料が気化する時間が十分に無いため燃焼制御が難しく、ススの発生頻度が上がって専用エンジンオイルを使わないとオイル汚れも著しかった事や、付着、堆積したススでアイドリングが不安定になったりしたのです。
また、基本的にはリーンバーンエンジン(希薄燃焼)だった事から、排ガスの窒素化合物の量が増えたり、高回転・高負荷ではリーンバーンではなくなるため、ユーザーの運転次第ではあまり燃費が良くならないという事もありました。
つまり三菱は先頭を切って技術をアピールするのと引き換えに少しばかり勇み足をしてしまったわけで、2007年頃にはGDIエンジンを断念したのです。

現在では熟成も進み、各社で採用

しかし直噴エンジンそのものは緻密なエンジン制御による燃費性能や排ガス浄化のための燃焼制御技術には不可欠だったので、むしろ三菱が直噴エンジンへの批判を一手に引き受けている間に熟成を進め、実用化と本格的な量販化を進めています。
中でもヨーロッパの自動車メーカーはダウンサイジングターボに小排気量でも大出力を出せる直噴エンジンが不可欠だったため、積極的な開発が行われました。
日本でもトヨタのD-4など各社地道に開発を進めましたが、あくまで数々の最新技術の1つという扱いで特に宣伝で強調する事も無く、今では当たり前のような技術になっています。
GDIエンジンの最大の問題点は、他社が採用した「ストイキバーン(理想空燃比での燃焼)型直噴エンジン」ではなく、「リーンバーン(希薄燃焼)型」だった事から、以前からのリーンバーンエンジン同様に排ガス中の窒素酸化物が多く、その対策に手が回り兼ねた事にありました。
しかし、ある意味では反面教師のような形でその後の直噴エンジンの発展に貢献した、とも言えるでしょう。
なお、排ガスとインジェクター音以外で当時のGDIエンジンに発生しやすかった問題の多くはエンジンオイルの性能が上がった事で発生しにくくなったため、現在でもGDIエンジン車に乗っている人はあまり問題を感じる事は無いそうです。


当時のGDIエンジンのインパクトは良くも悪くもかなり激しく、その後他社で当たり前になった時でも直噴エンジンである事はむしろあまり宣伝されなくなりました。
しかし、スバルのように「直噴ボクサーエンジン」を大々的に謳っているケースもあり、エコカー向けエンジンというより、高性能エンジンの陰に直噴あり、というのは間違いありません。
次回は、いよいよエコカーの大本命、ハイブリッド車のパワーユニットについてご紹介します。
国産エンジン史エコカーその6・大本命!ハイブリッド車の登場

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