国産エンジン史軽自動車・90年代の個性的な軽自動車エンジンたち・前編

1990年代は軽自動車エンジンが個性的だった時代

今思えば、1990年に軽自動車の排気量が660ccに上がってから1998年にさらにボディを拡大、安全性を向上させた現在の新規格軽自動車になるまでの8年間は、日本の軽自動車にとってものすごく「濃い」時代でした。

まだスバルが軽自動車を作っていましたし、マツダもエンジンこそスズキから供給されていたものの、オリジナルの軽自動車を販売していたのです。

三菱もEVに力を入れる前で個性的な軽自動車を作っていましたし、トールワゴン型やオープンスポーツなど、現在の高付加価値型軽自動車の原型が生まれた時代でした。

エンジンもそれ以前は大した種類が無かったのが、SOHC2バルブからDOHC4バルブまで、はたまたDOHC5バルブまで存在し、キャブレター式もあればインジェクション式も、それも3連スロットルまであり、エンジンそのものも3気筒と4気筒が混在していたんです。

現在ではそれらはコストカットもあってバッサリ整理され、あるいは軽自動車メーカーを作らなくなったメーカーまであって寂しくなりました。

あの90年代、今は亡き高名な自動車評論家の1人はその著書を「どれでも同じ。お好きなものをどうぞ。」と紹介していましたが、あの時代ほどいろいろな軽自動車、いろいろなエンジンを乗り比べられる時代も無かったのです。

NAでもターボでも傑作だったスズキのK6A

660cc時代初期にスズキの軽自動車用エンジン、F6Aは550cc時代のF5A/F5Bを660cc化したものですが、その前身は意外と古くて1970年代にジムニーの普通車版に搭載された4気筒800ccエンジン、F8Aです。

ボア・ストロークを上げて1,000ccまで排気量を上げたF10Aなど引き続きジムニーの普通車版に使用された事からもわかるように、元々普通車用エンジンでしたが、厳しい排ガス規制に対応するため4ストロークエンジンを作る事になった時、このF8Aを元に1気筒減らして軽自動車用3気筒エンジンとしたのがF5Aで、660cc時代になってからもF6Aとして引き続き使われました。

F5A時代から最廉価モデルのSOHC2バルブではエンジンの機械音や振動が激しく、またDOHC4バルブターボ版もよく回るエンジンでチューニング用のアフターパーツも多かったものの、それを搭載したアルトワークスがラリーやダートトライアルでダイハツのミラやスバル ヴィヴィオに対し芳しい成績を上げられなかった事もあって、軽自動車メーカー各社の中では比較的早めに新エンジンが投入されます。

それが1994年にアルト/アルトワークスのモデルチェンジでデビューしたK6Aで、20年以上作り続けたF系エンジンとは決別した完全設計のオールアルミエンジンでした。

軽量エンジンでビックボア・ショートストロークな事からパンチ力あるトルク感からDOHCターボだけでなくNAのDOHCエンジンでも最強クラスとの呼び声が高く、1998年以降の新規格軽自動車に限定されたレースでは、NAのVVTつきK6Aが最強と言われています。

また、DOHCターボ版のK6Aはアルトワークスでモータースポーツにデビューするや、軽自動車No.1エンジンとしてダイハツやスバルの追従を全く許さない活躍を見せ、後にダイハツがストーリアX4やブーンX4など排気量を上げた普通車で対抗した時に、唯一互角の戦いができる軽自動車となる源となりました。

スバル以外にも4気筒が乱立

550cc時代末期に660cc化を見越してスバルは4気筒化していましたが、ホンダを除くスズキ、ダイハツ、三菱も相次いで4気筒化エンジンをデビューさせた時代でもありました。

スズキはF8Aに先祖帰りさせたようなF6Bをセルボ・モードに、ダイハツは新開発したJB型エンジンをミラやムーヴに、三菱などは5バルブエンジンである3気筒15バルブDOHC版の3G83から、4気筒20バルブDOHCターボという、トヨタの4AGを軽自動車エンジン化してターボをつけたような超豪華エンジン4A30を開発したのです。

スズキは高級グレード用に、ダイハツも高級グレードとスポーツモデル用に4気筒エンジンを使いましたが、三菱の4A30はスポーツモデルのミニカ・ダンガンやミニカトッポ、トッポBJのスポーツグレードだけでなく、1BOX軽ワゴンのブラボーGTやタウンボックス、クロカンのパジェロミニにまでこの4気筒エンジンを搭載したのです。

ダイハツのように販売台数が多く、モータースポーツでも多用したJBエンジンであればともかく、三菱のそれは販売規模が小さい中で従来型の3気筒エンジン3G83と並行して存在しており、モータースポーツにも投入されなかったので、やや過剰なスペックなエンジンだったかもしれません。

実際、スズキもセルボ・モードに搭載したF6Bはその1代限りのレアなエンジンとなり、ダイハツでさえも4気筒はJBの改良型を長らく生産し続けるのみだったので、三菱で3気筒エンジンと4気筒エンジンが混在できたのは贅沢な開発費をかけられたバブル時代の名残だったかもしれません。


このように90年代というのは個性的な軽自動車エンジンの乱立があったので、とても1回では書ききれません。

次回はダイハツとホンダ、スバルのこれも個性的な90年代軽自動車エンジンを紹介します。

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