国産エンジン史軽自動車・新世代軽自動車用パワーユニット

ロングストローク、高圧縮化で各社ほぼ横並びとなったエンジン

1998年10月の新規格以降後も、しばらくは旧規格時代の、メーカーによっては550cc時代からの改良型まで使用されていた軽自動車エンジンですが、2005年のダイハツ・KF型エンジンの登場以降は順次各メーカーとも新世代エンジンへの以降が進みます。
その最大の特徴が「ロングストローク化」と「高圧縮化」で、従来のエンジンよりカタログスペックは落ちても低回転域での実用性を増し、電子制御による緻密な燃焼制御や、CVTの採用とエンジンとの統合制御により、効率化を極限まで推し進めた事です。
そのため、新世代エンジンは軒並み似たようなエンジンが増え、高回転での効率が落ちた事から昔のように「MTを駆使して小気味良く吹け上がるエンジンを楽しむ」のが難しくなりました。
普通車のようにコストや重量、物理的スペースの問題からハイブリッドシステムやクリーンディーゼルの搭載が難しい事から、「究極の高効率ガソリンエンジン」を追い求めた結果です。
一方で複雑な制御を行うための電子制御システムや副変速機を組み込んだ駆動系、エンジンを走行に専念させるためのマイルドハイブリッドの採用などには惜しみなく高い技術が採用され、より精密機器化が進んだのも特徴でした。
ハイブリッドシステムを組み込めない一方で、シティコミューター的な用途なら航続距離の少ないEV(電気自動車)でも通用するとして、モーターを動力とした軽自動車も登場しています。

段階的に能力向上したダイハツのKF型と幻の2気筒エンジン


新世代軽自動車用エンジンで先行したのは、2005年登場の新型コンパクト軽乗用車・エッセにKF-VEを搭載したダイハツでした。
NA(自然吸気)のKF-VEとターボ化したKF-DET、ターボ車にも可変バルタイミングのDVVTを採用したKF-VETの3種類があり、段階的に燃費改善のための能力向上が図られています。
550cc時代のEBを改良したEF、それを1,000cc化してEJとし、トヨタと共同で開発するコンパクトカーにも供給していたダイハツのエンジンですが、基本設計が古いためさすがに更新が求められていました。
そこでEFより思い切ってロングストローク、高圧縮化した上にオールアルミ化で軽量化、燃費と低回転域での性能を向上させ、1,000cc化された1KR-FEも引き続きトヨタに供給されています。
本来はさらに次世代エンジンとして直列2気筒エンジンが開発されていましたが、3気筒のKFより振動が多く、特に1,000㏄化してトヨタ車に搭載する用途で難がありました。
結局、新型2気筒エンジンで予定されていた性能がKFの改良で実現されてしまったため、この2気筒は「幻のエンジン」になったと言われています。

P型で失敗し、S型の開発を余儀なくされたホンダ

実はKF型より先にホンダが新世代の軽自動車エンジンとしてP07Aを作っていました。
しかし先行しすぎたゆえに方針を誤ったのか、軽自動車は高回転を多用するものとしてショートストロークの高回転型エンジンにしてしまい、燃費面でライバルのリードを許してしまいます。
そのため現在でもアクティやバモスに使われている旧型のE07Aエンジンより早く更新される事になり、新たにロングストローク、高圧縮で低回転域での性能を向上させ、DOHC化で緻密な制御を可能にしたS07Aを開発、N-WGN以降Nシリーズ軽自動車やS660に採用しました。
燃費や使い勝手が劇的に向上した一方で高回転域を犠牲にしたため、「ホンダのエンジンなのに上まで回らない」と、特にS660への搭載時に酷評されたS07Aですが、一般ユーザーには好評で、輸出を行わず国内需要のみのホンダ軽自動車を支えているのです。
S660への搭載でも実際には軽自動車初の6MT採用やギア比の最適化で大きな問題とならず、同車の好調の一因になっています。

副変速機付CVTやマイルドハイブリッドでなりふり構わぬスズキ

他社に比べれば新しいオールアルミエンジン、K6Aを旧規格時代から使っていたため更新が遅れていたスズキも、2011年登場のMRワゴンから新型のR06Aへ順次更新中です。
ライバル同様にロングストローク・高圧縮エンジンで低回転での性能を向上させていますが、スズキの場合は何としてもライバルより燃費やドライバビリティで優位に立つため、なりふり構わぬ勢いで新技術を採用しています。
それが日産のコンパクトカーも採用しているジャトコの副変速機付CVTであり、S-エネチャージと言われるマイルドハイブリッドです。
ハイ/ロー2段変速の副変速機を使ってコンパクトなCVTでも無段変速範囲を拡大した事で、燃費と動力性能を改善。
さらに、エンジンを稼働させるためのバッテリーと別にエアコンやオーディオなどのためリチウムイオンバッテリーを搭載。
回生ブレーキなどで充電しエンジン側のオルタネーター(発電機)の負担を減らして燃費を改善する一方、高出力化したオルタネーターでエンジンを駆動し、限定的ながらモーターアシストやEV走行も可能としています。
副変速機やマイルドハイブリッドシステムの搭載による重量増大、それに対処するための車体本体の軽量化などで、コスト増の割に効率が上がっているわけではありませんが、それでもスズキは現状、カタログ上ではNo.1の燃費性能を誇っているのは確かです。

新世代エンジンとして中途半端だった三菱は、EVに活路を見いだせるか


最後に三菱ですが、旧世代の3G83から更新すべきエンジン開発余力に乏しく、その割にはリアエンジン式の奇抜な軽乗用車、i(アイ)専用エンジンとして2006年に新型の3B20を開発してしまうなど、チグハグな印象がありました。
結局、ロングストロークではないため低回転域での効率が悪く、燃費面で不利な3B20をどうにか新世代エンジンとしてモノにするしか無くなり、開発陣の努力で大幅に燃費性能を改善します。
しかし、その間にも進化したライバルが3B20の限界以上に燃費性能を高めたため、結果的にカタログ燃費を偽る燃費偽装事件を起こしてしまうのでした。
三菱のトピックはむしろ、EVのi-MiEVやミニキャブMiEV用のY51モーターや、リチウムエナジージャパン、あるいは東芝から供給されるリチウムイオンバッテリーかもしれません。
軽EVは物理的にモーターの搭載量が制限されるので航続距離が約100km前後となりますが、シティコミューターとしては問題になりません。
走行性能そのものは車重が重いとはいえ低速トルクがあるモーターの使用で問題無く、走行可能距離が短いとはいえ電気代はガソリン代より安く、エンジンオイルの交換なども不要なので、維持費は優れています。


最後に三菱のEVを取り上げて今後の期待としましたが、次回は「次世代軽自動車用パワーユニットの行方」を紹介してこのシリーズ最終回とします。
ガソリンエンジンはこれ以上の発展が可能なのか、EVへの切り替えは進んでいくのか、他の次世代パワーユニットはあるのか。
ある意味では「軽自動車そのものの未来はあるのか」という話になっていきます。

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