日本が誇る名車 【R32 スカイライン GT-R】の伝説とは?

日産スカイラインGT-R。
「GT-R」と聞くと、そこまで車に詳しくない人でも「日本を代表する最強のスポーツカー」という認識がある人は多いのではないだろうか?

そんなGT-Rの歴史の中でも16年の空白期間から復活を遂げ、新たな伝説のスタートとなった「R32  GT-R」を振り返っていく。

日産 スカイライン GT-Rの歴史


GT-Rは皆さんが周知の通り、日産を代表する超高性能スポーツカー、いや日本を代表する…と言っても過言ではない。

初代誕生から50年の歴史があるGT-R、「日産スカイライン」の中でも自動車レースでの使用、そしてレースに勝つ為に開発された車種、グレードだ。

自動車レースにおける、あらゆるレギュレーションの中で、最大の性能を発揮する専用設計エンジンと、最新の装備が特徴であり、出場したレース全般で数々の輝かしい勝利を上げている。

【初代】前期PGC10型・後期KPGC10型
1969年に初代GT-Rが誕生した。
デビューはベース車両がセダンだった事から4ドアでの誕生となる。おとなしいボディに獰猛なエンジンという意味の「羊の皮を被った狼」のキャッチフレーズが先代プリンス・スカイライン2000GT-Bからそのまま受け継がれた。

翌年1970年にはクーペモデルが誕生し、今でも「ハコスカGT-R」の愛称で人気を誇っている。

【2代目】KPGC110型
1973年から販売開始された2代目のGT-R。
「ケンメリ」の愛称で親しまれた2代目GT-Rは、2ドアハードトップ2000GTをベースに1973年1月から4月の、3ヶ月間のみ「2000GT-R」として販売されていた。
わずか3ヶ月間…総生産台数は197台、うち195台が市販されたこのモデルは「幻のGT-R」とも呼ばれている。

しかし、使用されていたS20型エンジンが昭和48年排ガス規制に適合しなくなった為、レースへ参戦することは無かった。

【3代目】BNR32型
1989年、16年ぶりのGT-R復活!
R32GT-R開発当時、日産社内にて1990年代までに、技術世界一を目指すという、901運動が行われていた。
そして、その技術の集大成として生まれたモデル、車種のひとつが「R32 GT-R」だ。

当時、最強エンジン、2.6リットル直6ツインターボRB26DETTを搭載し、電子制御トルクスプリット4WDシステムATTESA E-TS、電子制御四輪操舵システムSuper HICASなどを装備し、レースに勝つ為に最新デバイスが投入されたモデルだ。

【4代目】BCNR33型
1995年、先代R32に引き続き、RB26DETTエンジンを搭載して「R33 GT-R」がデビューした。

R32に比べ、ボディーが大型化された事により、一部のファンなどからは不満の声がでたモデルではあったが、プロトタイプにてドイツ、ニュルブルクリンクのテストにおいて「7分59秒」というラップタイムを叩き出し、先代のR32より、21秒ものラップタイムを短縮したことで、「マイナス21秒のロマン」という言葉が、セールスコピーに使われた。

【5代目】BNR34型
1999年デビュー、「スカイライン」の名称が付くGT-Rとしては最後の型である。
この「R34 GT-R」も先代のR32、R33同様に、RB26DETTエンジンを搭載している。

先代R33で不評だったボディーサイズを縮減、ホイールベースを55mm、全長では75mmサイズダウンさせた。
記憶に新しいところだと、ワイルドスピードにて主人公のオコナー刑事が乗っていたこともあり、アメリカでも人気のモデルである。

現在では国内にて車両の程度にもよるが、新車価格を大幅に上回る、、2000万円以上などで取引されているモデルとなっている。

その後「スカイライン」の名称が外れ、「日産 GT-R」の名称で現在もR35として伝統を引き継いでいる。

R32 GT-Rの伝説


そんなGT-Rの数々のモデルの中、「R32 GT-R」は、なぜ伝説の始まりとされているのか?

16年の時を経て、復活デビューをしたGT-R、「R32 GT-R」
レースに勝つ為に開発されたこのモデル。
まさにその戦績が物語っている。

それは、遡ること1990年、全日本ツーリングカー選手権のグループAに参戦した「R32 GT-R」は、とてつもない速さで自動車ファン、モータースポーツファンに衝撃を与えた。

当時、国内外のツーリングカーレースにて最強とされていた、フォード・シエラRS500。
なんと!レースの1/4を終えた時点で、フォード・シエラRS500を周回遅れにして「R32 GT-R」はデビューと同時にレースで圧勝した。

そして、その後のレースでも勝ち続け、1990年から1993年の4年間、全日本ツーリング選手権、無敗、29連勝という伝説を成し遂げたのだ!

この当時、チームTAISANの「R32 GT-R」にて参戦していた、ドリキンこと土屋圭市氏は「R32 GT-R」が大好きで、
今までにR32だけで、5台も乗り継いだことがあるそうだ。
youtubeの公式チャンネルなどでも「R32 GT-R」について今でもよく語っている。

レースに勝つ為に開発された最強エンジンRB26DETTの誕生


上記の通り、レースでの敵なしの速さの要因の一つに、最強エンジン「RB26DETT」の存在がある。

日産の開発者達は、まずレースレギュレーションを徹底検証するところから始めました。
その中で出されたひとつの答えが「2568cc」という中途半端な排気量であった。

排気量がクラス分けのベースとなる当時の規程では、ターボ車に対する”調整値”が設けられていたのです。
具体的には、実際の排気量に1.7を掛けた数字を排気量としてみなすというもの。

グループA規定は、排気量枠500cc刻み、使えるタイヤの幅と最低重量に制限が設けられていた。
グループAで勝てるエンジンパワーを600ps+αと想定した日産の開発者達は、必要なタイヤ幅と車両重量を考慮しながら、4500cc以下のクラスが最適だと判断。

2568ccなら、係数1.7を掛けて4366ccにおさまる為、4500cc未満の有利な条件で参戦が可能だったのだ。

その上で目標とされるパワーは、フォード・シエラRS500を上回る「650馬力」
この目標に余裕を持って達成させるべく、開発をされた。

こうして直列6気筒ツインターボエンジンの名機「RB26DETT」は誕生したのだ。

速く走る為の最新デバイスを搭載

圧倒的なエンジンパワーを、いかに効率よく駆動力として路面に伝えるかが「R32 GT-R」のポイントだった。

日産開発者達は、この解決策として駆動力を可変させる、配分式電子制御4WDを考案。
「ATTESA E-TS」正式名称「Advanced Total Traction Engineering System for All  Electronic-Torque Split」と、
名付けられたこの電子制御4WDは、通常はハンドリングに優れたフロント0、リア100のFR駆動配分で走り、リアタイヤが空転した時に、前輪に余分な駆動力を配分し、効率的にトラクションを稼げるとともに、車両挙動の安定化を図った4WD方式である。

この結果、一つのタイヤに対してのパワー伝達が分散され、タイヤにも優しいというメリットも生んでいた。

そしてレースでは使用が断念されたが、「スーパーHICAS」も最新デバイスの一つであった。

正式名称「High Capacity Actively Controlled Suspension」

通常、自動車の操舵は、ステアリング操作によるフロントタイヤのみだが、スーパーHICASは、フロントタイヤの操舵にプラスして、油圧シリンダーにてリアタイヤも操舵を行う機構となっている。

しかし、レースではコーナリング中の横Gが強く、シリンダーが押し戻されしまい使用を断念。
レース車両ではシリンダー位置に金属製のロッドを装着し固定してあったそうだ。

ちなみに、このスーパーHICASに似たような機構として、現在ではポルシェが、『リアアクスルステアリング』として
様々な車種に取り入れている。

R32 スカイライン GT-Rの魅力


R32 GT-Rは前記にもある通り、”レースに勝つ為”に復活し、生まれてきた”超硬派モデル”という事。
そして、それを圧倒的な強さで有言実行した、まさに男らしいクルマであると言える。

600psを生み出す事を想定され開発されたエンジン「RB26DETT」という、R32、R33、R34と、3代に渡って搭載されてきた名機、そしてその圧倒的な「速さ」。全幅1800mm以下のボディーでありながらブリスターフェンダーの様なボディーライン。

不思議とエアロパーツなどが似合わない、むしろ完成されたデザイン!
30年経った今でも、そのストイックで硬派な、圧倒的存在感が魅力のひとつかもしれない。

そんなR32 GT-Rは、現在では高いものでは新車価格を大幅に上回る1000万円オーバーというものも珍しくない。

これは、デビューから30年以上が経過し、伝説のクラシックカーとして価値が見出されたのはもちろんだが、アメリカへの輸出、25年ルール(登録から25年経過車両はクラシックカー扱いとなりアメリカに持ち込みが可能となる)に該当するようになった事も要因のひとつ。

日本が誇る伝説の車「R32 GT-R」がどんどん海外に流出してしまうのは寂しいものだ。

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