多くの若いドライバーが慕った親父への恩返し!
自らもまだ30歳と若いミニサーキットのボスが、早逝した父の後を継ぎ「若者の車離れ」に挑む!
東北の片隅でミニサーキットを営む
宮城県仙台市近郊の村田町にあるサーキット、「スポーツランドSUGO」…の近所に、「サザンサーキット」というミニサーキットがあります。
コース長わずか1100m、採石場の跡地を整備して1990年頃に開設された小さなサーキットは、午前中はミニバイクやカート、午後はドリフトやグリップなど四輪車のフリー走行で賑わい、老若男女のクルマ好きが集まる憩いの場。
そして入場無料という敷居の低さから、クチコミで見物に訪れ、自らも走ろうという人が後を絶ちません。
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「親父さん」と言われた創設者の社長が2011年、震災の年に亡くなった後を継いだのは、若大将、高杉俊太郎さん(29歳)。
高杉さんには、「若者の車離れ」というテーマに対して、明確に意識し、実行しようとしている対策がありました。
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留まるか、離れるかは1年で決まる
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サーキットに来る若者は、そもそも最初はみんなクルマ好き
「若者のクルマ離れと言ってもね、ここはサーキットじゃないですか。そもそもここに来る時点で、クルマに興味があるという事なんですよ。」
“若者のクルマ離れ”に対して、どう対策を取っていくのか聞かせてください、というインタビューの冒頭から、高杉さんは核心をついてきました。
「そうやって興味があって来る若い人って、実は少なくないんです。そうした人たちに、最初に間違っていない方向性を教えるのも大事なんですが、実はその人が続くかどうか、意外とすぐにわかるんです。」
1,000円でもいい、車にお金をかける気持ちが大事
どんな見分け方があるんですか?
「1,000円でもいいんです。その車にお金をかけよう、って気持ちのある人は、続きます。その1,000円を出す気になれない人は、車が壊れたり、お金がかかる時が来ると、もうそこでやめちゃうんですよ。」
あー…確かにサーキットとか走ってて、車が壊れない、お金がかからずいくらでも乗れるって事は無いですからね。私も1年の半分以上は愛車の修理に費やしてた事がありました。
「そうなんです。でも、お金をかけたくない…っていう人ほど、なぜか金を持ってない。」
お金をかけないなら、貯金はあるはずですもんね。でも、現実にはどうでもいい事に少しずつ使ってしまって、大事な事にお金を使うって習慣が無い。
「お金をかけたくない」人は、大抵1年でいなくなる
「それで、普段からのメンテなんかもしてないもんだから車は当然壊れるし、お金かかるからやーめた!って人は見ててわかっちゃうんです。経験上、そういう人は最初は盛り上がってやる気まんまんでも1年でいなくなりますね。」
シーズンオフのメンテナンス時期を乗り越えられないんですね…。
若者が目指す存在として、若手ワークスドライバーを育てたかった
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周りが若手を盛り上げる
ところで、サザンサーキットと言えば、俊さん(高杉俊太郎氏)やベテランのドライバーさん達が、若者を立てて盛り上げようって話をしてると聞きました。
具体的にどんな事をやろうとしてるんでしょう?
「ウチ(サザンサーキット)はZSSというパーツブランド(株式会社ワンガンが展開)の東北地区パートナーって一面もあるんですけど、いわば“ZSS東北”ともいうべきドリフトのワークスチームをウチで立ち上げる事にしたんですよ。」
「で、そのチームはボク(俊)がR33スカイラインで、もう一人がS15シルビアで、そして一人は若手を起用しようと思って、4年前から目をつけてたのがコイツなんです。」
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そう言って俊さんが紹介してくれたのが、高橋俊樹選手(24歳)でした。
「コイツ、去年のD1地方戦イーストシリーズ2位で、岐阜(YZサーキット)で開催された全国大会にも出場してるんです。全国大会での成績はまぁアレでしたが…。」
おお、ちゃんと実績残して選抜として全国大会に出場できるなんて、すごいじゃないですか!
「ただ、シリーズ第1戦はクルマが間に合わなくて出場できなかったとか、いざ全国大会って時に仕事の都合が難しいから出れないかもって話もあったんですけどね。それでも結局はこうして結果を残してくれたから、良かったです。」
私も昔、ジムカーナで全日本出ろって言われた時に同じような思い出があるので、何となくわかります。
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「2015年はそうやって結果を作ってくれた事だし、ZSS東北のワークスドライバーに起用したんです。地元の若い選手がそうやって注目を浴びる事で目標にもなりますしね。東北では今まで、ステップアップの目標になるようなものが無かったから、作っちゃいました。」
「マシンもちゃんとZSSワークスカラーの赤で、バイナル(ステッカー類)も統一したから、ちゃんとワークスカーとして仕上げてます。」
プライベーターだとここまでキレイに車を仕上げませんから、雰囲気が全く違いますね!
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「そうでしょ?イベントの時だとフリー走行と違って入場無料じゃないんで、せっかくだから入場料払って見てもらう目玉が欲しいじゃないですか。」
レースの時もパドックパス買って、レーシングカーとか間近で見られますもんね。
「そうそう。それで入場料払えば、ZSS東北のワークスマシンが見られて、しかも若い人にとっては自分と年がそう違わない若いのがワークスドライバーとして出場してる。いい目標になると思うんです。」
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「あと、このフロントガラスに貼ってあるやつ」
派手なハチマキ(レーシングカーなどのフロントガラス上部に貼ってある、横長のシート)ですね。
「これが2015年のD1地方戦全国大会に出たっていう証なんですよ。そういう奴だから若くてもワークスドライバーやってますって、なんかこう、わかりやすいじゃないですか。」
ハクがついてイイ車に乗れる、確かにそうですね。
若者への支援は?
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ところで、そうやってワークスドライバーに若者を起用する上で、具体的な支援は何かしてるのですか?
「いえ、パーツやらタイヤやらは全部自分持ちです。ウチで提供するのはとにかく練習の場としてサザンサーキットを開放するだけ。」
そこは厳しいですね。
「その分、車イジリなんかはここ(サザン)でできますし、ピット作業も自分でしてほしいと開放してるんです。あとは金をかけると言っても、金を払わないと雇えないメカニックは呼ぶな!とは言ってます。」
なぜでしょう?
「人付き合いを大事にして、手弁当で手伝ってくれるような有志を募って集めてほしいんですよね。“自分のチームを作れ!”とはいつも言ってます。」
クルマってのは続けていく上で、大人との付き合いが大事になりますもんね。
「ここでいろんな出会いを大事にして、人との付き合い方を覚えて、D1も地方戦から始めて大きな大会にステップアップして、それで旅立ってくれたらと思うんです。いつまでもここ(サザン)にしがみついてくれ、という想いも無いですから。」
若者を呼び込むだけでなく、育てるという発想
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サザンサーキットの若大将、高杉俊太郎さんの話はまだまだ続きますが、4年前に出会った若者と付き合いを深めて、ついに自身で作ったチームのワークスドライバーに起用するまで育てた、という話はとても印象的でした。
もちろん俊さんだけでなく、もっと上の世代のドライバーさん達の助けやアドバイスもあって実現できた事であって、その意味では「自分はいろんな人との出会いで本当に助けられてます。」と口癖のように何度も言っています。
だからこそ、「若者には出会いが必要だ」という視線から、イベントなどを通してさまざまな機会を作ろうとしているのですね。
ある意味、「若者の車離れ」への対策の一つとして、「出会い」というのは重要な要素かもしれません。
【サザンサーキット】
〒989-1301 宮城県柴田郡村田町菅生長谷小屋5−1
電話:0224-83-5632
E-MAIL:info@southerncircuit.info
![宮城のアットホームなミニサーキット"サザンサーキット"](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/ancar-wordpress/pages/d3a7820ddee881bc01bf94b756373935.jpg)