今年、2019年は天皇陛下が御退位し新たな天皇陛下が御即位する節目の年となりました。年号も平成から令和へと変わりましたがその新たな天皇陛下の即位に合わせて「恩赦」が行われることとなりました。昭和になった時も平成になった時も行われていた恩赦ですが皆さんは恩赦についてどのくらい知っていますでしょうか。おそらく、刑を軽くしたり無くしたりするということは多くの方がご存知だと思います。では、その刑というのは交通違反などの比較的軽い罪でも適用されるのでしょうか。大きな罪を犯してしまった人はいなくてもうっかり軽い交通違反を犯して違反切符を切られてしまったという人は多くいることと思います。そこで今回は令和に行われる恩赦について交通違反にも適用されるのかをお話していきたいと思います。
そもそも恩赦はなんのために行う?
まず恩赦について、そもそもなぜ恩赦は行われるのでしょう。刑を軽くしたり無くしたりするのはなんのために行われるのかについてここでは説明していきます。
反省した犯罪者が社会に戻るのを促進するため
恩赦が行われる理由としてタイトルの通り反省した犯罪者が社会に戻るのを促進するためというものがあります。恩赦は犯罪者を世に出すものではありません。反省した者を社会へと戻すのを促進するものなのです。そのため対象者についても社会の反応や被害者のことを考慮した上で慎重に決められます。しかし、年々恩赦に対して社会のあたりが強くなってきているため、恩赦の対象者やどこまで刑を緩くするのかといういわゆる恩赦の規模は小さくなっていく傾向にあります。
もちろん反対意見も
単純に考えて、罪犯した人が軽減で罪犯してない一般の人に何の得もないっておかしい事って、何故気づかずに公布するのか!!!
胸糞悪すぎる慣習、昔に倣ってとかいらんのだよ!!#恩赦— ほいみん (@hoimin1209) October 22, 2019
恩赦:恩赦が正当化されるなら、裁判の量刑の決定が妥当でないことになる。裁判の量刑の決定が妥当なものなら、恩赦を行うべき根拠はない。
— 孫崎 享 (@magosaki_ukeru) October 21, 2019
そんな恩赦ですがこのようにもちろん反対意見も存在します。恩赦を行うことに関しては真面目に生きている人には何も恩恵がないのに刑を受けている人だけが恩恵を受けるということに納得できない人も多いようです。確かに昔、天皇陛下の権力が強かった頃は恩赦を行うことにより天皇に忠誠を誓うことで社会に貢献しやすくなったとういこともあったかもしれません。しかし、現代の天皇陛下、政府、裁判所の三権分立の時代においては恩赦は通用するのかというところは疑問に思います。
恩赦の適用範囲
今回の恩赦においてはどの範囲の人たちに適用されるのでしょうか。
被害者のいない軽微な罪
今回政府が閣議決定した内容では「恩赦は被害者のいない軽微な罪に限る。」としています。軽微な罪とは懲役になるほどの罪ではなく罰金刑のみが課される罪に限られます。また、その効果についても罰金がなくなるということはなく、罰金を払った人は国家資格などの資格を受けることができる権利を回復するという「復権」というものです。ここまで規模が縮小した背景としては社会の風当たりだけではなく、天皇陛下が譲位によって新たな天皇陛下が御即位したという事実も踏まえられているようです。
恩赦は刑事処分を受けた人のみ
恩赦というものは刑事処分を受けた人のみが受ける対象となります。刑事処分とは裁判によって正式に刑が確定した者です。そのため裁判に行って正式に罰則を受けそれが罰金だった場合に今回の対象に入ります。もう少し分かりやすく言いますと刑事処分は前科のつく罪です。
交通違反に適用は?
それでは本題の恩赦は交通違反にも適用するのかについてお話してきます。
交通違反にも限定的に適用
今回の恩赦の対象となる大半は交通違反者だとされていますが、交通違反を犯した人の中では対象となる人はとても限定的です。まず、交通違反の中で行政処分か刑事処分に分かれるのですが、基本的に酒気帯び運転や無車検運行など違反点数が6点以上の交通違反は重大な交通違反として刑事処分による「罰金」が課され、前科がつきます。こちらは刑事処分となるため今回の対象となります。一方の信号無視や通行禁止違反などの比較的軽度な交通違反は刑事処分ではなく行政処分による「反則金」が課されるため今回の対象とはなりません。反則金は刑事罰ではないため強制力はなく任意とされていますが、払わないと裁判所に起訴される場合もあり、そこで敗訴すると刑事処分になってしまいますので注意が必要です。
罰金を受けた人の中でも…
重大な交通違反を犯し罰金刑を受けた人の中でもさらに恩赦を受ける対象は絞られます。罰金を受けた人でも納付して3年以上経った人が対象となります。つまり2016年以前に罪を犯して2016年までに納付した人が対象ということです。直前に罪を犯した人も対象にしてしまっては天皇陛下の即位に合わせて犯罪が多くなるということも起こってしまうかもしれませんからね。
ブルー免許がゴールド免許に変わることはある?
ここまで記事をみて下さった方ならおそらく察しはついていると思いますがブルー免許がゴールド免許になったりすることはあり得るのでしょうか。
違反点数がなくなることはない
結論から申しますとブルー免許がゴールド免許に変わったりすることはありません。なぜなら、今回の恩赦は復権になるため資格を取ることを罰金刑を受けたことによって禁止させられた人がもう一度資格を取ることができる権利を得るということになるため、以前に受けた罰や違反の点数がなくなることはありません。ですのでブルー免許がゴールド免許にといったこともないわけです。
免許を取得停止させられた人がもう一度免許を取得するといったことは可能なのか
復権で資格を取る権利をもう一度得ることができると聞いて思うのが普通免許を停止や取り消しさせられた人がもう一度免許を取得する権利を得ることができるのかということです。一見可能に思えますが果たしてどうなのでしょう。
免許の停止や取り消しは行政処分
実は免許の停止や取り消しはとても重い罪の刑事罰に思えますが、これらは行政処分となります。理由として免許停止や取り消しは一回の違反で行われることはなく軽微な違反を何回も起こすことで課せられる処分だからです。そのためそもそも恩赦の対象にも選ばれません。よって今回の恩赦でも免許を停止や取り消しさせられた人がもう一度免許を取得する権利を得ることができるといったことはありません。
まとめ
恩赦が行われるのか行われないのかといったところから問題となっていた「今回の即位礼正殿の儀」ですが、実はこの恩赦を行うのかどうかといった話し合いの場で法務省は「合理性がなく反対。」との立場を示したそうです。最終的には官邸の意見が通り、対象者は少ないながらも実施された今回の恩赦ですが、法務省が反対と恩赦に異を唱えたということは今後行われるであろう天皇陛下の退位の礼などでもこれから恩赦はどうあるべきなのか、本格的に政府も天皇も必要なのかそうではないのかはっきりさせなければいけなくなってくるでしょう。