最近のAMGは特別感をなくしてしまった。そう思うことはありませんか?
現状を見る限り、そう言わざるを得ません。
ドイツ高級車の御三家と言われるアウディ・BMW・メルセデスベンツは、常にセールスバトルを繰り広げています。
そしてこれらのどのメーカーも、それぞれ高性能車専用の部門をかかえています。
アウディ「A4」なら「S4」、BMW「5シリーズ」なら「M5」や「アルピナB5」、そしてメルセデス「Cクラス」ならば「C63 AMG」という具合に、専用部門が造り上げたトップモデルが存在するわけです。
しかし、その中でもメルセデスに限って言えば、創業時からの変化が一番激しいと言わざるを得ません。
そしてそれは、あまり良い兆候とは言えません。
最大のライバルたるBMWのMパフォーマンスブランドに対抗するため、そしてAMG全体の販売台数を増やすため、メルセデスは限られたモデルにのみ与えられた「AMGスポーツ」の名を切り捨て、その代わり本来のAMGに似つかわしくないモデルを多数、”AMGファミリー”に迎え入れるという戦略を採り入れつつあるのです。
こうなると、もはやAMGの名はこれまで通り機能しなくなります。
もちろん、今後もメルセデス車をベースとして、最速を争う素晴らしいスポーツモデルが出てくることは間違いありません。
それでも、AMGを取り巻く戦略の方向転換は、同部門を完全に変質させてしまったと言うべきでしょう。
AMGはそもそも、メルセデスの標準車をレーシングモデルに限りなく近い車両へと(サーキット用に)チューンする小さい会社からスタートしたものでした。
1980年代半ばより部品供給という形では関係があったAMGとメルセデス・ベンツですが、1993年に初の共同開発車としてC36を発表します。
そして、その後、1999年になると、AMGはダイムラーベンツと契約を交わし、同社の一部門となります。
このクルマがBMW「M3」に挑戦状を突きつけるためにデビューしたことは、自然な成り行きと言えます。
つまり、メルセデスベンツとAMGが、「打倒BMW」の士気を高めるためにタッグを組んだということになり、それは賞賛に値する戦略でした。
もちろんC36 AMGは、多くのパーツをオリジナルのCクラスから流用したものでした。
しかしその目玉は、AMG自身が開発した3.6リットルの直列6気筒エンジンだったのです。
メルセデスとAMGの共同開発車という意味では、成功例でもあり、何より特別の響きを持つモデルでした。
ところがそんな栄光が、新しいAMG戦略によって失われつつあります。
最新型の「AMG C43」は、中身が「C450」とほぼ同じもので、新型トランスミッションを採用した以外には、ネーミングを変えた程度のものになりました。