国産エンジン史スポーツカーその7・プリンス/日産といすゞのDOHC

「国産エンジン歴史シリーズ」スポーツカー編、その7は、プリンス/日産と、いすゞのDOHCです。

「泣くな鈴鹿の華」から生まれたプリンスのレーシングDOHC「GR8」

1964年の第2回日本グランプリに、プリンスは小型セダンのスカイラインのフロントを延長、バランスを崩してでも無理やりグロリア用の直列6気筒SOHCエンジン「G7」を搭載したS54スカイラインGTで挑み、そして突如参戦してきたポルシェ904に敗れ去りました。

たった1周とはいえポルシェ904の前を走ったスカイラインGTに翌日の新聞は「泣くなスカイライン、鈴鹿の華」と大エールを送り、その後現在の日産 R35 GT-Rまで続く長い長いポルシェとプリンス/日産の因縁が始まったわけです。

しかし当時のプリンスとしては負けは負け、いくら国産車に勝ててもポッと出の輸入車へトンビが油揚げをさらうように勝たれてはたまりません。

そこでポルシェが来ても勝てる純レーシングカーを作ろうと第2回日本グランプリ直後から早速開発を開始、翌1965年に第1号者が完成したのがプリンス R380です。

パイプフレームシャシーにアルミ製、後にFRP製となった軽量ボディは非常に流麗で、世が世ならスーパーカーとして市販を期待されそうなほど美しいマシンでしたが、圧巻はそのエンジンでした。

グロリア・スーパー6やスカイラインGT-Bと同じ2リッターSOHC6気筒のG7エンジンをベースにビックボア&ショートストローク化し、2バルブSOHCから4バルブDOHCにヘッドを換装、初期のウェーバーのダブルチョークキャブ3連装から後にルーカスの機械式燃料噴射装置に変更するなど改良を重ね、初期型で200馬力、最終的には255馬力を発揮したのです。

1966年の第3回日本グランプリでGR8を搭載したR380は見事優勝、同年プリンスが日産に吸収合併されて日産 R380となってからも改良を続けられ、1970年まで国内外のレースで長く活躍したのでありました。

「GT-R不敗神話」を作ったDOHCエンジン、日産「S20」

一方、R380のような純レーシングカーが出場するレースとは別に、市販車ベースのレーシングカーで戦われるツーリングカーレースでは、引き続きプリンス改め日産 S54BスカイラインGT-Bが活躍していました。

しかし、搭載していた2リッターSOHC6気筒のG7エンジンが規則改正もあってライバル相手に戦闘力を失いつつあった事もあり、R380用のGR8エンジンを改良した市販車用GR8Bエンジンの開発に着手します。

2リッターDOHC4バルブ6気筒で160馬力を発揮したこのエンジンは最終的に「日産 S20」と名付けられ、プリンス時代からS50系スカイラインの後継車として開発されていた、日産 C10系スカイラインに搭載されてデビューします。

そう、1969年デビューのPGC10型 スカイラインGT-Rの誕生です。

国産初の市販車用4バルブDOHCエンジンを搭載したスカイラインGT-Rはデビュー戦でトヨタ 1600GTに勝利すると、2ドアハードトップ版のKPGC10型スカイラインGT-Rも含めてレースで連勝伝説を作り、その後挑んできたマツダ・ロータリー勢(ファミリアやカペラ)を寄せ付けない圧倒的なパフォーマンスで「GT-R不敗神話」を作り上げます。

最終的に1972年にマツダ RX-3(サバンナGT)に敗れるまで3年弱で49連勝を上げ、通算では57勝を残しました。

PGC10/KPGC10型スカイラインGT-R意外にも、フェアレディZ432やKPGC110スカイラインGT-Rにも搭載されたS20ですが、シャシーとのマッチングや重量の問題もあり、レースで活躍したのはC10系のスカイラインGT-Rに留まっています。

美しきハンドメイドボディに収められたいすゞのDOHC「G161W」と、「もう1つのR」

一方、トヨタ 2000GTより1年遅れ、日産 スカイラインGT-Rより1年早い1968年には、もう1台のDOHC市販車が誕生しています。

ジウジアーロデザインの美しいボディを何とか実現するため、あえて機械生産ではなく職人による鋼板叩き出しハンドメイドボディという異色のスポーティ2ドアクーペ、いすゞ117クーペです。

ベースとなったいすゞ117こといすゞ フローリアンは決してスポーティなクルマではありませんでしたが、117クーペにはフロントのボンネットフード下にフローリアンには無かったDOHCエンジンが搭載されていました。

それが1.6リッター4気筒DOHCエンジン、120馬力のG161Wです。

トヨタやプリンス/日産の2リッター6気筒DOHCほどエレガントかつパワフルではなく、ホンダの4気筒DOHCのように小排気量超高回転のピーキーなエンジンでも無い中間的な性格だったのがG161Wで、低中回転域からのパンチがあり、2000回転も回っていれば十分な実用トルクがあるトルクフルなエンジンだったのが特徴です。

117クーペ自体はその後1973年のマイナーチェンジで1.8リッター4気筒DOHC140馬力のG180WEエンジンに換装されますが、それまでの間G161Wが少量生産のハンドメイドモデル専用エンジンではもったいないとばかりに、ベレットGTにも搭載される事になりました。

それが1969年に登場し、スカイラインGT-Rと並んで「もう1台のR」となったベレットGT typeR(ベレットGT-Rとも)です。

まずはレース用のベレットGTXに搭載されて鈴鹿12時間耐久レースで優勝した後でデビューし、つや消し黒のボンネットにフォグランプを装着したバンパーが特徴的だったベレットGT typeRは、今でもC10系スカイラインGT-Rやトヨタ 2000GT、いすゞ117クーペやホンダSと共に旧車イベントの常連となっており、往年のDOHCサウンドを響かせています。


以上、ここまで1960年代にデビューした各メーカーのDOHCエンジンでした。

他にダイハツなどレーシングカー用のDOHCエンジンを開発していましたが、日野のようにスポーツカー用に発展させるためのものでは無い純レーシングエンジンだった事から、ここでは割愛します。

次回はいよいよ1970年代、2T-Gや18R-Gで名を馳せた「トヨタ・ツインカムの時代」をご紹介いたしましょう。

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