不正ソフトなど、元から必要なし!
ヨーロッパ市場とは正反対で、元来ディーゼルに対する印象が良くなかったアメリカ市場において、昨年のフォルクスワーゲンの排ガス事件は、ディーゼル車全体に対するさらなる一撃となってしまいました。
「もうディーゼルの時代は終わった」と言わんばかりの、世論の変化だったわけです。
ただし、信頼性そのものを失ったというよりは、厳格化が進む排ガス規制を乗り越えるには適さない技術だ…という印象づけのほうが、より大きかったとも言えます。
しかし、メルセデスベンツは諦めていませんでした。
どんなライヴァルも寄せ付けない新型エンジンをアメリカ市場に持ち込み、巻き返しを図ろうというのです。
メルセデスがラインナップしていた旧世代のディーゼルエンジンと比べ、今回ご紹介するパワーユニットは、出力が大幅にアップしています。
しかし特筆すべきは、排ガスのクリーンさも段違いだという点です。
ところで、フォルクスワーゲンは数年前にアメリカにディーゼルを導入したとき「新技術を開発したため、燃費と排ガス性能双方を高い次元で達成できた」と述べるに留まっていましたが、メルセデスは安全策として、従来からある排ガス浄化技術(排ガス還元装置や予燃焼室など)は継続して採用しています。
賞賛すべきなのは、今回のエンジンでメルセデスベンツが、全体のシステムを一体型として、エンジンブロックに組み込むことに成功したことでしょう。
これは特に目新しいパッケージと言えます。
旧世代のエンジンでは、上記のシステムはアンダーフロアに収められていました。
その点、エンジンにすべてが組み込まれている新型は、非常にコンパクトに仕上がっているのです。
注目の新型ディーゼルエンジン、まずは新型「Eクラス」に搭載されてのデビューとなります。
参考までに、アメリカ市場向けに公表されている燃費は31.35km/Lで、二酸化炭素排出量もわずか102g/kmと、このサイズのセダンにしては上出来です。
ちなみにプリウスはデータ上で91g/kmなので、ほとんど変わらないと言えます。
メルセデスは、この新世代エンジンのため、実に3700億円もの投資を行いました。
ディーゼルにかける期待が伺えるというものです。
排ガスを巡る各種規制にしっかり適合するだけでなく、実用上も変わらない性能を発揮するとされる新型ディーゼルエンジン。
まだ、アメリカ市場へ導入されるかは確定していませんが、将来性ある話題として、大いに拍手を送りたいと思います。
日本でも近い将来、街をスムーズに走り回る新世代のクリーンディーゼル・メルセデスを早く見たいものですね!