国産エンジン史エコカー・リーンバーンエンジンとは何だったのか?

国産エンジンの歴史をジャンル別の観点から解説していくシリーズ、エコカー編その4は「リーンバーンエンジン」です。ほんの一瞬、一時期のみエコカー用エンジンの代名詞のようにもてはやされ、エコグレードに搭載されたエンジンのリーンバーン(希薄燃焼)とは何だったのかを解説します。

「リーンバーン」とは何か

内燃機関、つまり通常のガソリンエンジンのように燃焼室内で燃料と空気の混合気が爆発・燃焼するタイプのエンジンでは、空気と燃料を理想的な割合で混ぜ、効率的な爆発燃焼を起こす「理論空燃比」という値が存在します。
それより濃い燃料で強力な爆発を起こし、パワーを得るのが「リッチバーン」、対して薄い燃料で小規模な爆発を起こす事で、燃費の面で有利となるのが「リーンバーン」です。
高回転で最大出力を得る事が必要ないようなシチュエーションでは、薄い燃料で低いパワーでも通常の走行が成立する事から、低回転、低速走行のような低負荷域でリーンバーンを行うエンジンが、1980年代半ばから1990年代にかけてのほんの一時期、大衆車のエコグレードを中心に、軽自動車に至るまで多くの車に採用されました。

70年代に始まるリーンバーンの歴史

1973年のオイルショックを契機に、燃料を絞って薄い混合気で燃焼室での爆発、エンジンン駆動を行う希薄燃焼型のエンジンはいくつか登場していました。
代表的なのがトヨタの「TTC-L」で、触媒で排気ガスを浄化する「TTC-C」や、ホンダからCVCCnライセンスを購入して副燃焼室を使い排ガスを浄化する「TTC-V」と合わせ、希薄燃焼はトヨタトータルクリーンシステム(TTC)の一角を担っていたのです。
1975年12月にはTTC-L方式の12Tエンジンがカローラとスプリンターに搭載されてデビューし、その後もTTC-Cとの組み合わせで、「触媒」+「希薄燃焼」でトヨタは燃費と排ガス規制をクリアしました。
当時既にトヨタ系だったダイハツも新しい軽自動車用4サイクルエンジン「AB型」にTTC-Lを応用した「DECS-L」を採用してリーンバーンを実現、TTC-Cの触媒と組み合わせて厳しい規制をクリアし、規制を突破できずに苦しんでいたライバルのスズキにエンジン供給したエピソードは有名な話です。

最初にリーンバーンを名乗ったカリーナ

それらの集大成として、1984年にモデルチェンジした6代目のカリーナでは「リーンバーンエンジン搭載」を盛んに宣伝しました。

国内で初めてリーンバーン(希薄燃焼)エンジンという言葉を盛んに宣伝し、ハイパワーグレードの他に一般グレードでのリーンバーンエンジン搭載車を増やして行き、スポーツ性とエコロジーの両立が可能な大メーカーとして、トヨタの日本最大の自動車メーカーとしての立場を確実なものにしたのです。
その一方で、三菱はスタリオンやギャランΣに搭載していたG63Bエンジンを3バルブ化したシリウスDASH3×2を開発し、低負荷では吸気側の1バルブを停止させて2バルブエンジンとして希薄燃焼させる可変バルブタイミング&リフトエンジンを投入。
その後もミラージュ、ランサー用などに3バルブ方式のリーンバーンエンジンを投入します。
ホンダも可変バルブタイミング技術VTECを希薄燃焼用に応用したVTEC-Eを開発してシビック系に投入、スズキやダイハツなどもリーンバーンエンジンの軽自動車を投入していきました。

立ちはだかる排ガス規制強化

しかし、リーンバーンエンジンには「燃費がいい」というメリットがある一方で、酸素過多による窒素酸化物の排出増大というデメリットがありました。
ある程度は触媒で対応していましたが、排ガス規制の強化に伴って対応しきれなくなってきます。
さらに、低負荷時のリーンバーンに対し、高負荷時には電子制御でストイキ(理論空燃比)燃焼に切り替わる事で必要なパワーを得る事から、実燃費が思ったように上がらないという評価を受けました。
リーンバーンも結局は「カタログスペックだけの低燃費」として、ユーザーからの不信を招く結果に終わり、排ガス規制の強化で多くのスポーツエンジンや、その派生エンジンが息の根を止められた2000年頃には、ほぼ消滅したのでした。


「燃費と排ガス」この2つは片方を立てればもう片方が立たなくなる微妙な関係です。
それを解決する目処が立った頃にリーンバーンもその役目を終える事になりますが、それまでの20年ほどの間に、ユーザーのエコや省エネに対する意識も大きく変わった事が、リーンバーンエンジンの流行につながったと言えるでしょう。
次回は、期待のエコエンジンだった、三菱のGDIなど、初期の直噴エンジンについて紹介したいと思います。
国産エンジン史エコカーその5・GDIとD-4やNeo DI、対照的だった初期の直噴エンジン


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