【不朽の名車】初の本格スポーツ用スバルボクサー・EJ20

前回紹介した三菱4G63のライバル的存在、スバルEJ20です。


スバルのボクサーエンジンはスポーティだったか?

今から50年前、スバル1000でデビューしたスバルのボクサーエンジン。
1リッターから始まり、最終的には1.8リッターまで発展した4気筒のEA系と、末期に高級モデル、アルシオーネ用に開発された6気筒のER系が存在した水平対向エンジンでした。
初期の日本車では軽自動車にコニー(愛知機械工業)が、コンパクトカーではトヨタが空冷水平対向2気筒エンジンを採用していましたが、その後乗用車用エンジンとしてはスバルだけが水平対向エンジンを使い、スバル車最大の特徴となっているのはご存知の通り。
では、そのボクサーエンジンがスポーティだったかと言えば、そうだったとも、そうでは無かったとも言えます。
初期のEA53(スバル1000スポーツセダン)などツインキャブレターで武装したスバルボクサーは確かに当時としてはスポーティで、FFレイアウント(フロントエンジン・前輪駆動)の高い悪路走破性を活かしてラリーなどで活躍しました。
また、1.6リッターのEA71はFJ1600と呼ばれるエントリークラスのフォーミュラカーの公式エンジンに採用され、事実上のワンメイクエンジンとして、現在でも地方のFJ1600レースで使用されています。
ただし、スバルは水平対向エンジンの軽量コンパクトというメリットを追求するあまり、OHVに固執したEA系エンジンは高回転高出力化で立ち遅れ、時代とともに他社がOHC、DOHC化した高性能エンジンを搭載する流れから完全に取り残されたのです。
そのため、1980年代に入ってようやく一部がOHC化した3代目レオーネに至って「水平対向エンジンと4WDが売りではあるが、野暮ったいクルマ」と、あまり芳しい評価を受けられなくなっていました。

起死回生を担ったEJ20

2016年現在、スバルはボクサーエンジンを生かした、左右対称レイアウトの優れた四輪駆動車(シンメトリカルAWD)というコンセプトが好評で、プレミアムブランドとして北米を中心に成功しています。
しかし、1980年代後半は前述のように小型セダンのレオーネとコンパクトカーのジャスティ、軽自動車のレックスとサンバーがそれぞれ「通好み」、悪く言えばマニアックなクルマとしてコアな人気を保ち、4WDが必要の無い地域ではマイナーそのものだったのです。
そのような状況でしたから、レオーネの上級モデルとして2.7リッター水平対向6気筒エンジンを搭載したアルシオーネなどは、明らかに場違いそのもの。
そうした中、起死回生の1台として1989年に登場した新型車、レガシィはスバルのブランドイメージを根底から覆す一台であり、そのトップグレードに搭載された新開発の2リッター水平対向4気筒ターボ、EJ20をはじめとするEJエンジンもスバルボクサーの革命的存在でした。
EA系エンジンで引きずったOHVは消滅して最低でもOHC、トップモデルはDOHC4バルブインタークーラーエンジンを搭載し、一気に他メーカーのトップクラスエンジンに追いついたのです。
中でも2リッターDOHCターボとしてはライバルのトヨタ 3S-GT(185馬力・セリカGT-FOURに搭載)、三菱4G63(205馬力・ギャランVR-4に搭載)を上回る220馬力を発揮、一気に2リッタースポーツエンジンのトップに立ったのでした。

絶え間ない改良で現在に至る

しかし、ライバルもスバルEJ20の登場に指をくわえていたわけではありません。
レガシィがデビューした1989年、ギャランVR-4はEJ20と同じ220馬力へ、さらに翌1990年には240馬力へとパワーアップ。
トヨタも1989年にモデルチェンジしたセリカGT-FOURで225馬力へ、1991年にはGT-FOUR RCで235馬力へとパワーアップ。
それと同時にWRC(世界ラリー選手権)での戦いも始まり、レガシィがインプレッサに、ギャランVR-4がランサーエボリューションへと一回り小さなマシンにそれぞれの主力エンジンを搭載するようになると、それぞれ1996年には当時の自主規制値である280馬力に達したのです。
トヨタはWRC参戦マシンをカローラFXベースに変更後、国内で競技ベース用4WDターボを販売しなかったので、市販用3S-GTはそこまで高性能化しませんでしたが、スバルEJ20と三菱4G63の戦いは2007年にランエボXが新型エンジンにスイッチするまで続きました。
他メーカーのスポーツモデル用2リッターターボエンジンが新世代エンジンに移った現在、スバルもFA20やFB20といった新世代の水平対向4気筒エンジンが登場しています。
しかし、最強モデルのWRX STI用には今でもEJ20ターボが搭載されており、30年近く最強エンジンとして君臨するという、希な例となりました。

今後もまだしばらく健在?

もちろん、それだけ長く作り続けられる間の絶え間ない改良で、初期のEJ20とは全く別なエンジンと言ってよくなってはいるものの、スポーツエンジンとして基本設計がそれだけ優れていたという事なのでしょう。
後継エンジンがいずれもロングストローク、あるいはショートストロークで燃費や低回転トルクの改善を狙ったエンジンばかりなので、典型的な高回転高出力型スポーツ型のEJ20ターボは今後もしばらく使われ続けると思われます。


次回は80年代後半デビューの2リッター級スポーツエンジンをもう少し。
カタログスペックこそ抜きん出てはいなかったものの、日産らしい優れたチューニングベースとして長く使われたCA系 / SR系エンジンを紹介します。

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