超小型車の時代・「現在実証実験中の超小型車」

まだ確定していない「超小型モビリティ」

既に日本において超小型車に相当する原付3輪「スリーター」やトライクの類が存在する事は前回書きましたが、実際に普及を目指すシティコミューターとしての超小型車の定義は、一部車種の販売が始まった今もなお、まだ確定していません。

国土交通省が「超小型モビリティ」の名で、普及のための実績やデータを取得するため、ある程度の規制緩和を行いながら実証実験を行っている段階です。
その「超小型モビリティ」の要件ですが、以下のようになります。
・全長、全幅、高さは軽自動車の規格内
・乗車定員は2名以下(ただし、年少者用補助乗車装置を2個取り付ければ3名以下)
・定格出力8kw以下(内燃機関の場合は排気量125cc以下)
・高速道路など最高速度60km/h超の道路は走らない
・地方公共団体などにより、交通の安全と円滑を図る措置を講じた場所で運行するもの
さらに、実証実験の段階では以下が緩和されます。
・二輪自動車の特性を持ち車幅1300mm以下のものは、二輪自動車の基準で灯火を設置できる。
・設計上、またはリミッターにより30km/h以下でしか走行しない場合は衝突安全基準を緩和。
ただし、安全性向上のために以下の要件が必要です。
・EVの場合は歩行者等に車両接近通報装置を義務付け
・車両前後面に基準緩和マークの表示義務
・運転手への速度警報装置、衝突警報装置、その他事故防止装置の取り付け推奨

要件から想像できる「超小型モビリティ」

 

実証実験のため緩和されているとはいえ、超小型モビリティの要件は結構厳しいものがあります。
まず乗員2名が乗って、最高時速60km/h以下となればそれなりの衝突安全性能を求められます。
認められている軽自動車並のボディがあればそれは可能ですが、本気で衝突安全性能を満たした上で2名乗ると、125ccエンジンや非力なモーターで60km/hも出せるのか疑問です。
どのみちスピードが出せないのならと割り切って、衝突安全性が緩和されたボディに、ラゲッジを増やした方が得策でしょう。
あるいは、スピードを重視するなら縦に2名乗車するタンデム式として、荷物は積まないものと割り切る考え方もあります。

実際の実証実験例・沖縄県本部半島でのトヨタ コムス

トヨタは2016年1月中旬から同年12月末まで、沖縄県本部半島で観光客を対象とした超小型車のカーシェアリング実証実験「ちゅらまーい Ha:mo」を行っています。
使われているのはトヨタ車体が製造した1人乗りEVミニカー「コムス」で、家庭用100Vコンセントから6時間かけて満充電を行い、200V電源やEV用の充電スタンドには対応していません。
満充電なら約50km走れるので、ちょっと海岸線の道路を海風に吹かれながら走る程度(コムスの最高速度は60km/h)なら最適でしょう。
宿泊施設などに30台のコムスが配備され、搭載された「おすすめ案内ルート」アプリで効率的に観光ができるようです。
予約は配備されたホテルやJTBグループの旅行予約サイトで受け付けているので、利用してみてもいいかもしれませんね。

飛鳥の地でゆっくりと何かを見つけに行くための「MICHIMO」

こちらも観光用で、奈良県飛鳥地方をゆっくり旅をしながら散策するための超小型車、日産 New Mobility Conceptが使われています。
コムスと違って2名乗車が可能なので運転免許を持たない同乗者がいてもOKで、本部のコムス同様にタブレットのアプリによるナビゲートで、一度に多くの名所を効率的に回れます。
近鉄吉野線の飛鳥駅前にあるレンタル施設から借りられるので、宿泊などでなくてもぶらり旅の途中で予約を入れて、レンタルしてみるのもいいかもしれませんね。
コムスと違って市販車ではないので、コンセプトカーに実際に乗れるという楽しみもありそうです。

渋谷の実験的シティコミューター「i-ROAD」

もっと生活に密着した実証実験を行っているのが、東京都渋谷区で2015年11月21日から実験が始まったトヨタの「OPEN ROAD PROJECT」の一環として行われる、超小型車トヨタ i-ROADの貸出です。
子育て世帯など実際に2人乗りが想定される家庭に1ヶ月貸出、通勤から子供の送迎まで日常生活で使ってもらい、その使い勝手を検証します。
i-ROADは1人乗り、2人乗り両方が準備されていますので、シチュエーションに応じて貸出を希望すると良いでしょう。
ただし、都市の中心部でシティコミューターを使う場合には駐車場所がネックです。
バイクや原付でも駐輪場所に困るような都心で、果たしてミニカーの実用性がどれほどあるのか、自動車のように駐車場を使ったらコストがそれなりにかかってしまいますし、イタズラなども心配です。
本当の都心のど真ん中よりは、すぐ近くに郊外型店舗があるような「ほどほどの都会」向きでは無いかと考えてしまいますが、そこを検証するための実証実験ですから、まずその結果をまた確認したいと思います。


いかがでしたか?
コムスのように既に一般販売されて様々な用途に使われているミニカーもあれば、コンセプトカーをそのまま実験に使用してデータを取るような斬新な実験も行われています。
これらはだいたい1年、MICHIMOのように1年以上続いているものもありますが、それらのデータからシティコミューターや観光用ビーグルとしての超小型車にどんな未来があるか見えて来るまでには、もう少し時間がかかりそうです。
次回は、実際にフランスで活躍している超小型車をご紹介します。

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