世界最高燃費を誇ったダイハツ・ディーゼルの挑戦

世界最高の省燃費ディーゼル

今やハイブリッドカーでリッター40kmの低燃費は当たり前。
ガソリンエンジンでも軽自動車でリッター40kmの登場も間近と言われています。

この分野では日本の各メーカーがしのぎを削っていますが、かつてフォルクスワーゲン・ルポ3L TDIがリッター42.29kmの新記録を出すまで、リッター36.54kmという、四輪自動車の世界最高燃費を10年にわたって誇った日本車があったのをご存知ですか?

それが今回紹介する「G101Sダイハツ・シャレード・ディーゼルターボ」と「CL型エンジン」です。
ディーゼルエンジン独特の震動を逆手に取り「ロックン・ディーゼル」の名で売り出したダイハツの小さなディーゼルエンジンの、過酷なサファリラリーへの挑戦と合わせて紹介します。

元祖3気筒リッターカー「シャレード」

1967年にトヨタの傘下に入って以降、軽自動車以外の自社開発を認められていなかったダイハツが、数々の新機軸と共に1977年に送り出したコンパクトカーが「シャレード」です。

横置きエンジンFFの小型車でありながら、フロントタイヤの切れ角を確保するために全長の短い3気筒エンジンを搭載し、エンジンの全長=車体に対する幅が狭いだけ、フロントタイヤの左右への切れ角を大きく取って、最小旋回半径を小さくできる仕組みでした。

現在では軽自動車やリッターカークラスで当たり前のように使われている技術の原型は、シャレードにあったのです。
画期的な車として驚きの声で迎えられたシャレードは、1978年カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

CL型ディーゼルエンジン

そのシャレードに3気筒1000ccディーゼルエンジンが搭載されたのは、1983年1月の2代目登場時です。
それまでは、「1気筒あたりの容積が小さいリッターカークラスのエンジンでは、燃焼室が冷えやすく、圧縮熱で点火するディーゼルエンジンには熱効率の面で不向き」と言われてきました。

しかし、3気筒エンジンを搭載していたシャレードでは、4気筒エンジンよりも気筒容積が大きい(3気筒:330cc、4気筒:250cc)ため熱効率の問題はクリアされてました。
さらに燃料噴射ポンプやノズル、燃焼室形状を最適化する事で、ディーゼルエンジン特有の低回転から粘るトルクはそのままに、高回転まで吹け上がるエンジンに仕上げたのです。

ディーゼルエンジン特有のガラガラとした騒音や振動も、大型車では考えにくい「ロックン・ディーゼル」というキャッチコピーの元、むしろその振動を売りにしたコンパクトカーとして売り出されたのでした。

さらに1984年9月にはガソリンNA車並の50馬力を発揮するディーゼルターボが追加され、燃費や燃料代だけではなく、ガソリン車と遜色無い走りを手にいれました。

激闘サファリラリー

ガソリン車並に走れるとなれば、何を遠慮する事があろうか、とばかりに、シャレード・ディーゼルは世界屈指の過酷なラリー「サファリラリー」に投入されます。
当時、現地ディーラーからの要請で国際ラリーに参戦していたダイハツワークス「DRS」が、本命のガソリンターボだけでなく、ディーゼルエンジンのシャレードも出走させたのでした。

まだNAのディーゼルしか無かった1983年頃は、さすがにラリー車としては遅すぎてタイムアウト、完走扱いとはなりませんでしたが、ディーゼルターボの投入で、ついにガソリン車と並んで完走を果たします。

今ではレース等でもアウディやBMWがディーゼルターボ搭載のレーシングカーを走らせて速さを見せつけていますが、その25年以上前からモータースポーツの場で、しかも小排気量ディーゼル車でガソリン車にすがる走りができる事を証明していたのです。

ちなみに当時はディーゼルのシャレードの遅さに棄権を進める声がラリー関係者の内外から、さらにチーム内まで含めて上がったものの、当時のDRS寺尾社長が「モータースポーツにはビリがあるから一番もあるんだ。ビリが走って悪いなんて事は無いだろう。」と笑い飛ばしたと言われています。

決して勝つだけがモータースポーツではない、その気持ちに支えられて、シャレード・ディーゼルターボは総行程5000kmに及ぶサファリラリーを走りきったのでした。

燃費世界一記録

こうして走りの実力を示したシャレード・ディーゼルターボですが、1991年にはディーゼルエンジンの四輪自動車世界最高燃費・36.54km/Lを記録し、ギネスブックに掲載されました。

それまでにも最高燃費を狙うチャレンジ企画で41.1km/Lなどの非公式記録を持っていましたが、公式記録としても世界一として認定されました。
とても小さな車の、とても偉大な記録です。

その記録は2001年に破られますが、その時の「フォルクスワーゲン・ルポ3L TDI」は装備を極力簡素化し、薄いガラスや、重い鋼鈑の代わりに軽量なマグネシウムやアルミニウムを多用する事で、標準モデルより200kgも軽量化した燃費スペシャルでした。

対してシャレードは普通に販売されている標準モデルでの記録ですから、ある意味では「フォルクスワーゲンがそこまでしてようやく追い越せた車」として、ダイハツファンは誇りに思っています。

その後のダイハツ乗用車用ディーゼルエンジン

走りでも燃費でも優れた性能を見せたダイハツの1000ccディーゼルエンジンですが、1993年にシャレードが4代目にモデルチェンジした際、大型化に対して1000ccエンジンそのものが廃盤となったため、廃止されてしまいました。

その後も後継のコンパクトカー「ストーリア」などでスーパーチャージャー付き2サイクルディーゼルエンジンなど、異彩を放つエンジンをモーターショー等で出品しています。

しかし、おそらく振動やコスト面でトヨタにも供給するコンパクトカーへの搭載には見合わないと判断されたのか、最近ではダイハツが乗用車用ディーゼルエンジンを開発している話自体を聞かなくなってしまったのは、とても残念な事です。

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