スバル待望の第2世代大衆車
1966年、トヨタ カローラや日産 サニーの同期として大衆車スバル1000をデビューさせたスバル。 水平対向4気筒エンジンを搭載したことで他社の直列4気筒エンジンと比較して、エンジン縦置きでも前後方向のエンジン全長が短いことから、そのぶん乗車スペースを大きく広く取れるという、スペース効率に優れたモデルでした。 また、フロントブレーキには現在の車のほとんどで採用されている、タイヤ側(外側)にブレーキを持つアウトボード式ではなく、エンジン側(内側)にブレーキを持つインボード式で、左右重量物を極力中心近くに置くなど、特徴的なモデルでもあったのです。 ただし、それまでスバル360や商用車のサンバーをヒットさせて「軽自動車メーカー」としては有名だったスバルも普通車メーカーとしては新参で、市場にはなかなか受け入れてもらえませんでした。 ライバルに対する競争力を上げるため、排気量の拡大や、ツインキャブレターを装着したスポーツモデルも設定したものの、パっとしないまま1970年代を迎えます。 そしてわずか5年でスバル1000シリーズ(ff-1 1300Gなど)のほとんど全てに見切りをつけたスバルは、待望の第2世代大衆車「レオーネ」でライバルへの追撃を図ることにしたのです。
特色の多くを失った初代レオーネ
1971年10月に初代レオーネはデビューしますが、スバルは1968年に日産と提携していました。 その3年後に登場したレオーネは日産の影響を受けた、よく言えば「一般受けしやすい普通の車」として作られます。 まずデザイン面では、当初2ドアクーペが先行してデビューしたということもありますが、ライバルと同じようなロングノーズ・ショートデッキ型。 これは見る者に躍動感を与えますので確かに一般受けはするのですが、水平対向エンジンを活かしたショートノーズ・ロングキャビンを実現していたスバルでは不要なレイアウトです。 ブレーキも一般的なアウトボード式になりましたが、こちらは整備性向上という面もあるため、あながち悪いばかりでもありません。 とはいえ、どちらもスバル車を特徴づけていたポイントでしたので、それまでスバルを支持していた層からレオーネはソッポを向かれる形となりました。 何しろ、せっかく水平対向エンジンを採用していながら、それを全く活かしていないのですから当然のことです。 新規ユーザーがそれ以上に増えてくれれば取り返せる話でしたが、フロントマスクが他社と比べてアクの強い一般受けしにくいもので、これはレオーネの最終型やレガシィでスリムなデザインが採用されるまで、スバルの特徴となります。
水平対向エンジン+4WDの始まり
1972年には待望の4WDモデル、エステートバン4WDが追加されました。 当初エステートワゴン4WDとしてデビューする予定が、当時の日本ではステーションワゴンが一般受けしなかったこともあり、商用ライトバンとしてのデビューです。 さらに1975年にはセダンにも4WDが追加され、「ジープ型以外で世界初の4WD車」が生まれました。 とはいえ、4WDシステムそのものは東北電力の要請で宮城スバルが実験的に製作したスバル1300G 4WDバンと変わらず、必要に応じて手動で2WD⇔4WDの切り替えを行うパートタイム式4WDでした。 つまり乗用車の形はしているけれどもジープと同じメカニズムを持っている車ということで、悪路走破性をよほど重視するユーザーからは、一般向けの車では無いイメージを高めることにもなります。 4WDが乗用車にも便利なメカニズムとして広くいろいろな車種に搭載されるには、1980年代を待たねばなりません。
排ガス規制もうまく乗り切るが、長く売り過ぎた感も…
この頃のスバルは、デビュー後のオイルショックや排ガス規制の厳しい時期をうまく乗り切っています。 ツインキャブレターを搭載したスポーツモデルも含め、排ガス規制に適合した上でパワーダウンを補うため排気量アップを行うなど、この時期のライバルがパワー不足で悩む中、うまく乗り切ったのは、さすが技術のスバルと言うべきでしょう。 ただし、アクの強いデザインをシンプルでスッキリさせるなどデザインの変更は行ったものの、1971年から1979年にわたってモデルチェンジも行わず販売するということは、ライバルに対して古臭いイメージを持たれることにも繋がります。 結局、スバル1000以来の「なかなかヒットととは呼べない」といったところからは抜け出せないまま、「デザインが野暮ったい」「4WDをラインナップに加えているなど特殊な車」としてのイメージが染み付いたまま、スバル製としては最後になる3代目までずっと苦労することになるのでした。
結果、レオーネとは
レオーネ自体は販売台数ではパッとしなかったものの、その後のスバル車の原型を地道に積み上げたモデルと言えます。 初代から少しずつ近代的な姿になっていきますが、初代の「何か特殊な車」というイメージを払拭するため、いずれ名前を捨てざるを得ない(後継車はインプレッサ)境遇にいたる始まり、それが初代レオーネだったと言えるでしょう。 次回は、「マツダの栄枯盛衰・サバンナとグランドファミリア」をご紹介します。
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