【アメ車の魅力!】ダッジ バイパーSRT-10

ド迫力V10スポーツの2代目

アメリカンマッスルカーと言えばお約束なのはV8エンジン、それもOHVエンジンであれば言う事無し! そして古典的なスポーツカーのスタイルと言えば、長いフロントノーズのボンネット下に大排気量エンジンを搭載して後輪を駆動する、ロングノーズ・ショートデッキスタイル。 この2つを兼ね備えたアメリカンスポーツとしてはシボレー コルベットやシボレー カマロ、それにフォード マスタングやポンティアック ファイヤーバードなどがありました。 しかし、ライトウェイトスポーツに対して不釣り合いなほど大排気量ハイパワーV8エンジンを搭載するシェルビー コブラのような例もあり、その現代版として開発されたと言ってよいのがダッジ バイパーでしょう。 その出自(ダッジ ラム用)から「ピックアップトラック用のエンジン」と揶揄されることもある8リッターV10エンジンは、印象とは裏腹にアルミニウム化されてランボルギーニの手が入った、まさにスーパーカー用エンジン。 そして、バイパー(マムシ)の名の通り、低くうねるような流麗なボディの奥から生み出される大パワーを受け止めるサスペンションもランボルギーニの手によるもので、同じくブレーキもブレンボがチョイスされています。 いわばクライスラーがランボルギーを傘下に置いていた時代があったという生き証人というべきバイパーは、1991年12月に初代モデルが発売されるや大人気となり、アメリカンマッスルスポーツの代表格というだけでなく、多くのモデルが登場した事によりコレクターも生んだのでした。 そして2代目バイパーSRT-10が2002年に登場します。

さらなるハイパワー化を誇った「マムシ」

サイド出しマフラーなどが規制に適合しないため、残念ながら日本への正規導入が断念された2代目バイパーSRT-10ですが、外観は初代からイメージを崩さないまま、中身が大幅にブラッシュアップされました。 排気量は8.3リッターに拡大(後に8.4リッターへ)し、初代の450馬力から517馬力(同608馬力)へと向上。 吸排気系やクラッチなど操作系の見直しが行われた事により、ただ大パワーを暴力的に発揮するだけではなく、本格スポーツカーとしての熟成が図られたのです。 前回紹介したコルベットもそうでしたが、1990年代末から2000年代にかけてアメリカンスポーツカーの方向性がかなり大きく変わり、昔ながらの「直線番長」的なイメージから、ヨーロッパの一線級スポーツカーを相手にしても遜色無い、どのようなステージでも速いスポーツカーへと変化を遂げたのです。 その進化に当たっては電子制御デバイスをさほど多用しなかった事や、パワーアップの手法に単純なマルチシリンダー大排気量化で挑み、電子制御で手なずけられた過給機に頼るところが少なかった事からか、いわゆるスーパーカーのような扱いはあまり受けません。 しかし、それがまたアメリカンスポーツの魅力とも言うべきで、圧倒的なパワーを堅実な設計でまとめ、ドライバーが安易に手なずける事を許さないのは評価すべきでしょう。

そしてニュル最速へ

2008年にはレーシングモデファイされたSRT-10 ACRが追加されましたが、パワーユニットのパフォーマンスアップを要せず、空力パーツの充実やサスペンションのハード化のみで対応した事も、SRT-10の素性の良さを表しています。 そしてそれは実際にサーキットでのタイムで証明される事となり、2008年8月には世界中のスポーツカーがその速さの指標とする、ドイツのニュルブルクリンクサーキット北コースで7分22秒1という、当時の市販車最速コースレコードを記録。 2011年9月にはさらに7分12秒13を記録し、現在でもアメリカンスポーツ最速記録である事はもちろん、世界的にもこれを上回るマシンは10台といません。 (日本車で言えば、日産 R35GT-Rにはっやあ劣るものの、レクサス LF-Aより速いのです!)

大記録を作ったバイパーはクライスラーがFCA(フィアットクライスラー)となってからも3代目が生産されていましたが、残念ながら2016年をもって生産終了となりました。 しかし、現在もなお「次期型がある」と言われており、いつかまた復活する日が来るのかもしれません。 次回は「フォードGT」をご紹介します。

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