【トヨタ×ベンチャー】自動車メーカーによるオープンイノベーション

イノベーション。それは新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産することだ。
イノベーションは単なる技術革新に留まらない。これまでとは全く違う考え方、仕組みを取り入れることにより新しい社会的価値をも創造することができる。昨今、「オープンイノベーション」が高まりを見せている。時代の変遷とともに数多くのイノベーションを起こしてきた自動車業界もまた、その例に漏れない。

そこで、今回は自動車業界の中でもトヨタやホンダといった大手日本車メーカーを中心にオープンイノベーションについて取り上げたい。

オープンイノベーションとは?

従来の「クローズドイノベーション」

企業の研究開発においては常に「競争に勝つために達成すべきレベル」と「自社で達成できるレベル」の間にギャップがある。今まではそのギャップを埋めるために自社のみで努力することが一般的であった。これは主には自社の技術を保護するためである。

しかし昨今、求められるレベルが高まり、達成するまでに許される時間が短くなった。つまり、従来の自社資源に依存した「クローズドイノベーション」では短い期間に市場ニーズを満たす製品・技術を開発し、収益を上げ続けることが難しくなったのである。この大きな要因がインターネットの登場をはじめとしたIT技術の急速な発展・普及だ。IT技術の進歩によって製品は高度化・複雑化し、製品寿命は短くなった。またグローバル化は競争を激化させた。この分かりやすい例がスマートフォン。通話以外にも多数の高度な機能を備え、次々と新機種が発売され、その製造には世界中の企業が携わる。こうした環境変化によって、企業が自前でイノベーションを生み出すことが限界となったのであった。

“クローズ”に対する“オープン”なイノベーション

ではこの変化のスピードに追い付き、かつ新たな価値を生み出すためにはどうしたらよいのか。答えは簡単。社内だけでは対応できないのだから社外に頼るしかない。自社を取り巻くネットワークの外にある技術や知識、人材を活用する。これこそがオープンイノベーション。自前が無理なら出前を取ろうというわけだ。

つまり、オープンイノベーションとは「自社のみでは解決できない研究開発上の課題に対して既存のネットワークを超えて解決策を探し出し、それを自社の技術として取り込むことで課題を解決する」ことである。また昨今、製造業のサービス化が加速しているが、オープンイノベーションも研究開発だけでなくサービス領域にまで拡大してきた。これによりサービス領域で出会う顧客の生の声を直接製品・サービス開発に活かせるようになった。つまり、オープンイノベーションがまた新しいイノベーションを起こす“種”となっているのだ。

自動車におけるオープンイノベーションの事例

自動車業界は長い間ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを主として製造販売していた。そこから現代までハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車のような新しいタイプの自動車が次々とグローバル市場に投入されてきた。目まぐるしく変化する環境下にある自動車業界において、各社はどのようなオープンイノベーションを進めているのだろう?

ホンダ×ソフトバンク『感情エンジン』

「Honda NeuV」https://www.honda.co.jp/news/2017/c170106.html

ホンダは人々の生活の質を高める新しい価値の提供に向けて人工知能(AI)、ビッグデータ、ロボティクス技術を活用したオープンイノベーションを加速させると発表。人とのコミュニケーションを行うAI『感情エンジン』を搭載した「Honda NeuV(ニューヴィー)」を公開している。感情エンジンはホンダとソフトバンクグループ傘下のcocoro SB社が開発したAI技術。機械自らの感情を疑似的に生成することができる。ドライバーの表情や声の調子からストレス状況を判断して安全運転のサポートを行うほか、ライフスタイルや嗜好を学習して状況に応じた提案を行う。ホンダといえば、2018年に生産終了し惜しまれたASIMOがある。一方、cocoro SBの中心事業はといえばペッパー。人とのコミュニケーションに重きを置いているところに“両社らしさ”を感じるオープンイノベーションだ。

オープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」

トヨタは新たなサービス案を社外から募集、実現するプログラムを実施。「全ての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス」「もっと快適で楽しい移動を提供するクルマの利用促進サービス」など『人を中心とした』テーマに関して共同開発を進めていく。例えば、カウリス社とは自動車の各利用シーンにおいて利用者本人を特定する技術の共同開発を行い、パーソナライズドされた各種自動車サービスの実現に努めている。また、ナイトレイ社の持つロケーションデータ解析技術を駆使し安心して生活できるモビリティ社会を目指す。その他にもe-ギフトを扱うギフティ社とも協業しており、これら企業との協業からは自動車という枠組みをはるかに超えているところにオープンイノベーションの可能性を感じる。

デンソーがハンドクリーム?!

トヨタ系部品メーカーのデンソーは「これまでは系列関係の“縦の関係”が中心だったが、今後は“横の関係”構築が必要」と語る。デンソーは省庁・大学・自治体と連携して藻類バイオ燃料の研究および実証を行ってきたが、なんとその結果ハンドクリームを開発し販売。筑波大学が保有する藻類から産生されたオイルをもとに生まれたものだ。もちろん、その発端はCO2削減による地球温暖化防止やエネルギー対策という自動車製造とは切っても切り離せないところにあるのだろうが、グループの枠組みを超えている点、産学官との連携から生まれたイノベーションという点でたいへん面白い事例だと思う。また、デンソーは国内だけでなくシリコンバレーにあるベンチャー企業ともオープンイノベーションを行っている。「自身の独自技術だけでは対応できない」と認める柔軟さがこうしたパートナーシップに結びついている良い例だろう。

日産による「ベンチャー企業展示会」

日産はAIによる画像認識などの技術を求め、ベンチャー企業展示会を開催している。ベンチャー企業の多くは導入先となる大企業をどう探すか、どう会うかが難しい場合も多い。逆に大企業にとっても、どこのどのような企業が自社の求める技術を有しているかは見えにくい。「TOYOTA NEXT」もそうだが、まずは接点を設けて両社の考えをすり合わせることがオープンイノベーションにとっての第一歩だといえそうだ。

オープンイノベーションが自動車の新たな姿をつくる…

社会が発展する際には必ず交通革命が起きた。自動車の動力源は蒸気に始まりガソリン、さらには電気や水素へと変遷を遂げてきた。そして今まさに「100年に一度の大変革期」を迎えている。それも今までに類を見ない速いスピードで劇的に変わろうとしている。その中でオープンイノベーションは自動車各社にとって必要不可欠であり、思いもよらないさらなる気づきを与えるだろう。今後生まれてくる新たな自動車の、そして社会の姿はどんなだろうと、胸を弾ませている。


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