クルマにもそんな呪文のような略語がありますよということをお伝えしたく、今回は車名の愛称に関する略語のご紹介です。
何代にもわたるクルマは、車名で呼ばない事が多い
クルマにあまり興味が無い人からすると、「このクルマ何?」と聞かれたら迷わず車名を答えると思います。
付け加えるとしても、せいぜいグレード名や、4WDかどうかくらいでしょうか。
ただし、クルマ好きともなると車名に加えて型式名や愛称で呼んだり、ひどい時には車名をすっとばす事もしばしばです。
車名があるんだから、何でわざわざ型式や愛称で呼ぶのか…と言えば、同じ名前でもその代のクルマと、先代や次の代、別な代のクルマは、オーナーからすれば全く別なクルマだからです。
2代続いた段階でその傾向が出てきますから国産車では1代限りで終わらない限りほとんどのクルマにそうした呼び方が略語や愛称として存在します。
メジャーなものからマニアックなものまで、いくつか紹介しましょう。
型式で呼ばれるクルマの代表「ハチロク」(ただし33年前の方です)
日本車の中でも型式で呼ばれるクルマの代表といえばトヨタの「ハチロク」でしょう。
ええ、FT86というFRスポーツクーペがありますね。
違います。
ソッチではなくて、1983年デビューの「AE86」という型式のクルマの方です。
ドリフト漫画・アニメとして有名な「頭文字(イニシャル)D」で「ハチロク」として一般人への知名度も高まったもので、「ハチロク」というクルマと思い込んでいる人もいるかと思いますが、正式な車名は「カローラレビン」および「スプリンタートレノ」。
同じ型式で名前が2つあるのは、トヨタカローラ店で販売していた「カローラレビン」と、トヨタオート店(現在のネッツ店)で販売していた「スプリンタートレノ」で外装を別々にしてそれぞれの販売店で販売していたためです。
このように「兄弟車が同一型式」というのは日本ではよくある話です。
「頭文字D」で主人公が乗っていた「ハチロク」は、「AE86 スプリンタートレノ」の方ですね。
クルマ好きだと「ハチロクのレビン」とか「ハチロクのトレノ」と言ったりします。
「ハチロク」だけだと、「レビン?トレノ?もしかしてFT(FT86)?」と聞き返されますね。
ちなみに同じ代のカローラレビン/スプリンタートレノでもAE86のエンジン違いで、「頭文字D」だと主人公の親友、イツキが乗ってたAE85という型式のクルマもあり、そちらは「ハチゴー」と呼ばれます。
愛称で呼ばれるクルマの代表「スカイライン」
型式以外に、愛称の略語で呼ばれる事があります。
クルマの特徴や、当時のCMキャッチコピーなどを略して呼ぶわけですが、その代表が日産 スカイラインですね。
その前にまず歴代スカイラインの簡単な解説をしますと、初代は1957年デビューで同じ名前のまま約60年も作っているものですから、おおまかに分けて4つの世代に分かれます。
第1世代が、現在の日産と合併する前に「プリンス自動車工業」という会社で作られていた時代のプリンス スカイライン。
第2世代が、日産 スカイラインとして作られ、1980年代末までのスカイライン。
第3世代が、1989年にデザインやコンセプトを一新してスポーツセダン/クーペとして作られていたスカイライン。
第4世代が、2001年以降高級スポーティセダンとして作られ、米国では高級ブランド「インフィニティ」のクルマとして販売されているスカイライン。
なぜ最初にこのような説明をしたかと言うと、それぞれの世代で「スカイライン」へ持っているイメージが異なり、全く違うようなクルマとして扱われ、ファン層もあまり被らないからです。
その中で略語での呼び方の話をすると、第1世代のプリンス スカイラインと、第4世代の高級なインフィニティ スカイラインはあまり略称で呼ばれません。
せいぜい型式で呼んだり、ポルシェとレースで名勝負を繰り広げた伝説が残る2代目のスカイラインGT-Bが「GT-B」と呼ばれるくらいです。
特徴的なのは第2世代と第3世代で、前者は愛称、後者は型式の略語でバッサリと分かれます。
第2世代スカイラインは略称の宝庫・前編
第2世代の最初、スカイラインとしては3代目にあたる日産C10系(C10は型式)ですが、典型的な箱を3つ組み合わせたような3ボックススタイルから「箱のスカイライン」略して「ハコスカ」が愛称です。
CMのキャッチコピーは「愛のスカイライン」でしたが、「アイスカ」とは呼ばれません。
次の4代目、日産C110系は逆にCMのキャッチコピーから「ケンとメリーのスカイライン」を略して「ケンメリ」と呼ばれました。
ケンとメリーという2人のカップルが日本各地を旅するCMと、そのキャッチコピーが名前の元ですが、歴代スカイラインのほとんどがそうだったように2ドアクーペと4ドアセダンが存在し、4ドアセダンは「4ドアのケンメリ」をまた略して「ヨンメリ」とも呼ばれます。
2ドアと4ドアで別々な愛称を持つのはこのC110系だけです。
5代目のC210系もCMキャッチコピー「スカイライン ジャパン」がそのまま愛称となり、「ジャパン」と呼ばれました。
第2世代スカイラインは略称の宝庫・後編
さらに一番ややこしいのが6代目のR30系スカイラインです。
まずアメリカの俳優でレーサーでもあったポール・ニューマンをCMに起用した事で、R30系全体は「ニューマン・スカイライン」あるいは「ニューマン」と呼ばれます。
ただし、トップスポーツグレードであるスカイラインRS以外は地味な存在だったので、「ニューマン」はあまり一般には馴染みがありません。
馴染み深いのは石原プロの刑事ドラマ「西部警察」で活躍したスカイラインRSの方で、マイナーチェンジ前は「RS」、マイナーチェンジ後はフロントのラジエーターグリルを廃した特徴あるマスクから「鉄仮面」と呼ばれます。
さらにマニアになると、上半分が赤、下半分が黒のツートンカラー仕様を「西部警察」に登場した3台のスカイラインRS「RS軍団」から「RS仕様」、上半分がガンメタ、下半分が黒のツートンカラーを、当時の走り屋映画・ビデオシリーズ「首都高トライアル」から「首都高トライアル仕様」などと呼びました。
ここまで来ると「スカイライン」というのは日産がそう名前をつけているだけで、全然別なクルマな気がしてきます。
そのR30系で盛り上がった反動なのか、あるいはハイソカーブーム(白いトヨタ マークIIが流行った時代です)に押されてスカイラインの人気が急降下したためか。
7代目のR31系は単に「7th」(セブンス)や、型式で「31」(サンイチ)と呼ばれるくらいで、ちょっと地味で知名度もそう高くはありません。
第3世代スカイラインは型式とグレードの組み合わせ呪文
一気にイメージが変わり、シャープなスタイリングのスポーツセダン/クーペとなった8代目R32系から10代目R34系まではシンプルに型式の略で呼びますが、それにグレードがついて呪文化します。
「32R」(サンニィアール、R32スカイラインGT-Rの略)。
「33GTS」(サンサンジィーティーエス、R33スカイランクーペGTSの略。セダンの事は考えない)。
「34GT」(サンヨンジィーティ、R34スカイラインGT。ターボだったりクーペだったりは聞かれたら答える)。
といった調子でクルマ好き以外からは何の事だかわかりませんが、クルマ好きなら「ああ、あれね」となるから不思議なものです。
代表的なクルマを何台か紹介するつもりでしたが、スカイラインが濃すぎたもので、残りは次回以降にご紹介します。
トヨタや日産以外のクルマも紹介していきたいと思います。