日本輸入自動車史その6・戦前アメ車全盛期

日本輸入自動車史その6は、関東大震災を景気として、第2次大戦まで続いたアメリカ車の全盛期です。

第1次世界大戦と関東大震災が自動車業界を変えた

1920年代前半まで、日本の自動車業界はそれほど急速な発達を見せたわけではありませんでした。

1910年代、大正時代に入ってから商社による輸入車販売がそれなりに軌道に乗りだしたものの、それが安定して産業になるにはまだ時間がかかったのです。

第1次世界大戦に連合国として参戦、戦勝国として大きな利益を得て、世界の大国の仲間入りを果たした日本でしたが、戦後不況で経済が停滞した時期もあり、自動車が大量に売れる素地はまだ整っていません。

前回紹介したヤナセ(梁瀬商会)がGM車の輸入を行い、フォードもそれ以前から日本への輸出を始めており、いわゆるマーケット・リサーチをしながら、本格参入の時期を見計らっていたと言えます。

そしてその時期は、それほど待たずに訪れました。

1923年9月1日に発生した、関東大震災です。

復興需要と輸送力強化

関東大震災で崩壊した東京など首都圏がまだその無残な姿をさらしていた時、真っ先に自動車が必要な事に築いたのが、梁瀬商会だった事も前回書きました。

壊滅した大都市で自動車など誰が買うのか、と懐疑的だったアメリカの自動車メーカーでしたが、梁瀬商会が緊急輸入した自動車が飛ぶように売れたのを見て、今こそ市場参入の好機到来!と腰を上げたのが、GMとフォードだったのです。

復興需要を契機に、日本で本格的なモータリゼーションが始まる事を予見した両社は、1925年にフォード日本、1927年に日本GM(日本ゼネラル・モータース)を相次いで設立。

日本フォードは横浜に、日本GMは大阪に工場を建設、現地生産を開始したのでした。

部品を輸入したノックダウン生産

ここで重要なのは、フォード、GMとも日本での現地生産を開始したとはいえ、両社ともあくまで「輸入車」にとどまった事です。

現在の日本車が世界中で生産しているのとは違い、当時の日本には現地でフォードやGMが求めるレベルの精度で自動車部品を大量生産できる工業力がありませんでした。

日本の工業は小規模な家庭内工業レベルにとどまっており、職人芸として優れた製品を作る能力はあっても、それを機械を使って大量生産する技術も無く、マトモな工作機械の国産など第2次大戦に敗戦するまで実現していません。

そこで、部品を100%輸入して日本は単なる組立工場とする「ノックダウン生産」を採用しました。

関東大震災の前から、シャシーだけを輸入してボディは日本で架装する事が広く行われていましたが、大量生産のためボディも本国で大量に作って部品単位で輸入したのです。

完成されたクルマを輸入するより部品の方が安かったのですが、日本では組み立てるだけなので、実質的には日本での国産ではなく、純然たる輸入車だったのです。

ヨーロッパの自動車メーカーが同じ事をしようとしても、船で運ぶ時間がアメリカの倍かかるために実行不可能で、こうして日本の自動車市場はGMとフォードの独壇場となりました。

最初は東京で路面電車が復旧するための代行輸送手段として、簡易な路線バスの運行から始まったアメ車は、やがてバスやトラックだけでなく乗用車も続々と生産が始まります。

日本のあらゆるところでシボレーやA型フォードが走るようになり、日本にもようやくクルマ社会の時代が到来したのです。

民間や官用車両だけでなく、軍にも多数が納入され、さらに中国などアジア各国(当時はヨーロッパ諸国の植民地の方が多かったのですが)にも、日本で組み立てられたGMやフォード車が輸出されていきました。

市場が活況を迎えた事から、日本でもダットサン(日産)やトヨタ、オオタ、いすゞがトラックやバス、乗用車の国産車を開発しますが、量産車としてモノになったのは軍用トラックか、アメ車には無い小型車くらいです。

結局、戦前、戦中を通じて1945年まで、日本のクルマ社会はアメリカから輸入された部品を組み立てたアメ車に支配されたまま、最後までアメ車並のクルマを作る事無く終戦を迎えたのでした。


戦前に日本で全盛期を迎えたアメ車たち。

しかし日本の工業にとっては「単なる組立工場」でしかなく、自動車産業の発展に寄与するより、むしろ阻害要因となっていました。

それが教訓となって、戦後日本の自動車産業振興策と、それに対応できなかったアメ車の没落につながっていくのですが、それはまた別の舞台の話になります。

次回は「敗戦から復興の時代、再開された輸入車」をご紹介します。

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