超小型車の時代その15は、雪国での実用性です。様々な気候がある日本で、雪国での実用性はどうでしょう?
進む超小型車の全天候化
これまで沖縄のような南国や、沿岸部での暖かい地域での実証実験が行われ、その結果として、最近では開放式キャビンではなく、ドアと窓を備えた超小型モビリティが増えてきました。
トヨタのi-ROADなどはその典型的な例ですし、同じトヨタでもコムスはハード(硬い)ドアではなく、昔のジープのようなソフトドアを使ったものもあります。
そうやってあらゆる条件下でもドライバーが運転に支障が出ないよう配慮することは必要でしょう。
超小型車は自転車やバイクから乗り換えるというより、「より小さくて簡便な自動車」として、自動車や軽自動車のアシグルマとしてのそれからの乗り換えを期待されている乗り物です。
そうなると、自転車などが使えないけども、自動車ならば普通に走行できる環境で使えなければいけないわけで、普及にはあらゆる天候で乗れることが必須になってきます。
フランスのクワドリシクルも現在では密閉式キャビンを備えた立派な「クルマ」になっていますから、これは過渡期に開放式が許されても、最終的には密閉式に落ち着かければいけないことを意味するでしょう。
もちろん、ただ密閉するだけでは窓が湿気で曇るなどして実用性がありませんから、エアコン装備とまではいかないまでも、何らかの曇り止め対策も必須です。
ここはまだ超小型モビリティの課題でしょう。
しかし、ドライバーはそれで良いとして、超小型モビリティはどこまでの全天候性を持つでしょう?
雨はともかく、問題は雪です。
興味深い新潟での実験
そこで超小型モビリティに興味のある人たちが注目しているのが、新潟での社会実験です。
すでに2016年2月から3月までの1ヶ月間、新潟で「潟モビ」と称する社会実験が行われており、社会実験ではお馴染みの、日産 ニューモビリティ コンセプト2台による運用実験が行われています。
その内容そのものは、ほかの地方都市で行われているものと大差無く、特筆すべきことは特に無いのですが、注目すべきはその時期でした。
2月~3月と言えば、新潟ではまだ真冬の次期、超小型モビリティは走れたのでしょうか?
雪の少ない沿岸部では問題無し
結論から言えば、ホームページやFacebookで公開されている画像や動画を見る限り、特に運用に支障があったようには見えません。
そもそも、新潟は雪国以外の地域からは想像できないほど雪が少なく、真冬でも恒常的に雪に閉ざされるわけではないのでした。
沿岸部では特に顕著で、年に数度の大雪など異常気象を除けば、沿岸の平野部では海に近ければ近いほど、思ったほど雪の影響は受けないのです。
これは同じ雪国でも太平洋側ではよりその傾向が強く、雪国でも沿岸部の都市なら、さしたる問題もなく運用できることの方が多いでしょう。
実際、潟モビも雪が降っている時に運用されている場面や、敷地内に雪が残る施設に乗り入れている場面が登場しますが、そこで何か問題がありそうには見えません。
考えてみれば、豪雪地帯でも、だからこそ除雪能力が発達しているもので、少なくともクルマの交通量が多い場所では雪が少ないのが当たり前なのでした。
ただし、凍結路面や積雪路面ではどうか
このままですと、「それでは雪国でも問題無く運用可能」という結論になりそうですが、コトはそう簡単ではありません。
都市部でも細い道路など除雪の行き届かない場所はいくらでもありますし、超小型モビリティが生きるのはむしろそうした路地裏です。
そこが積雪で路面状態が非常に悪かったり、あるいは除雪されていても凍結路面ではどうでしょうか?
実際の性能として盛り込まれているかどうかはともかく、超小型モビリティのスペック表を見ても、ABSやトラクションコントロールなど、雪上、あるいは凍結路面を走るために便利な装備はまず記載されていません。
あくまで簡易車両ですし、速度も上げない、そもそもスタックしたり凍結の危険がある場所は社会実験に含めないということで現状では必要無いかもしれませんが、いずれこの問題は必ず出てきます。
また、豪雪時に特有の「雪のわだち」、軽自動車でもトレッド(左右のタイヤ感覚」の違いから、雪道では軽いクルマほど轍にタイヤを取られ、直進するのも困難です。
そうした場面で、軽い超小型モビリティは雪をかきわけるようにはいかないのですから、スタッドレスタイヤの装着だけで良しとはならないでしょう。
新潟での超小型モビリティの実験は、次の冬でも予定されています。
そこで豪雪などあれば、運行可能かどうかである程度の目安になってくるので、超小型モビリティに関心のある人は、この冬の新潟での実験には注目すべきでしょうね。
さて、場所や天候によるシュミレートがまだまだ不足していることが、社会実験のさらなる続行の理由になっているとも言える超小型モビリティですが、いっそそのへんは「趣味車」ならば割り切って早期実用化に踏み切れるのでは、と考える人もいるのです。
次回は、「趣味車と実用車。普及の鍵を握るのは?」」をご紹介します。