これからでも海を越えてくることを強く願うヴォクゾール。全貌をあなたは知っていますか?
アメリカが知り得なかった、イギリスの隠れたスーパーカー
シボレー・カマロより俊足の90年代のセダン!まさに必見!!
イギリス東部のヘセル市に拠点を置くロータス社は、F1レーシングカーや「エリーゼ」などのライトウェイト・スポーツカーで知られますが、他メーカー車のチューナーとしても輝かしい歴史を持っています。
1960年代に、当時のフォードで標準的なセダンだった「コルティナ」をスーパーカーに改造していますが、それ以来高性能エンジンや特製シャシーの開発ノウハウを積んできました。
同社は、日産「GT-R」やシボレー「コルベットC4」もチューニングしているほか、映画で有名な「デロリアンDMC-12」もロータスの作品です。
そこで今回、どのクルマを紹介するか悩みましたが、北米はもちろん、日本にも正規に輸入されていなかったロータス車である「ヴォグゾール・ロータス・カールトン」を選ぶことにしました。
ヴォグゾール「カールトン」は、ドイツ車であるオペル「オメガ」のイギリス版です(イギリスでは今でもヴォグゾールのブランドでオペル車を販売しています)。
ベース車両のカールトンは、大人しいタイプの大型セダンでした。
それでも当時は、メルセデス・BMW・アウディといった、現在では「ドイツ御三家」と呼ばれるライバルたちの勢いがそこまで強力ではなかったので、対等に市場で渡り合えていた良き時代でした。
ただ、ロータスとしても、別にこのカールトンをレーシング向けマシンにまで改造するつもりはありませんでした。
親会社GMの意向も多少はあったのでしょうが、これをハイパフォーマンスカーに仕上げることはできるだろう、それならやってみよう、といったノリで開発されたというのが、事実のようです。
こうして、平凡なセダンだったカールトンは、377PSを発生するスポーツセダンへと変貌を遂げました。
もともとも直列6気筒エンジンに、2つの強力なターボチャージャーを追加したためでした。
この出力は、なんとV8フェラーリ「F355」をも若干上回るものです。0〜60mph(0〜100km/h)加速はたったの5.2秒で、177mph(285km/h)という最高速度をもって、当時世界最速の4ドアセダンとなりました。
カタログモデルとしては、2005年にベントレー「コンチネンタル・フライングスパー」が195mph(312km/h)を出すまで、最速の座を譲らぬセダンだったのです。
しかし、単にハイパワーなだけでは使い勝手が悪くなります。
当初、スタビリティコントロールやトラクションコントロールもなく、大型セダンにしては珍しく実用性に欠けるとの評判でしたが、途中でロータス社がサスペンションにも手を加えたお陰で、ロードゴーイングカーとしても遜色のないクオリティーに改良されました。
気になるお値段ですが、1990年当時の為替レートで換算すると、米国での価格は(2015年現在の水準に合わせると)約17万1600ドル、日本円で約2060万円だったことになります。
フェラーリより強い、それでいて少し安い。こんなクルマが、海を越えなかったのが残念に思われるほどです。
たまには、そんなヤングクラシックに思いを馳せてみるのも乙ではないでしょうか。