2020年東京オリンピックも着々と準備が進められ、開催が決定されてからあっという間に時が経ちましたね。振り返ればいろいろな問題がありました。ロゴのパクリや競技場の予算問題、サマータイム導入やブラックボランティア問題などなど。さらには猛暑に打ち水で対応しようという対策までありました。2020年の夏、東京は一体どうなってしまうのでしょう。そんな中、意外と話題にならないのが東京オリンピック期間中の渋滞問題ではないでしょうか。 よく考えてみてください。東京では毎日のようにどこかしらで渋滞を引き起こし、電車も満員で遅延も日常茶飯事。そんな東京に訪日外国人が押し寄せ、地方からも観光客がわんさかやってきます。オリンピック期間では、延べ1500万人の来場者が訪れると言います。東京の日中人口はおよそ1550万人ですから、そのスケール感はなんとなく想像できますでしょうか。今回は、そこで巻き起こる様々な問題と対策によって考えられる弊害をまとめていきたいと思います。
東京オリンピックで渋滞するのはここだ
まず気になるのは東京で渋滞する場所ではないでしょうか。一般道の渋滞予想を見ると、選手村や競技会場が集中している東京ベイゾーンが真っ赤になっています。さらに、東京の中心部から郊外にまで渋滞は予想されています。これは一般道の渋滞予想ですが、電車などの公共交通機関や高速道路も混乱が予想されます。東京という都市は世界的に見てもかなり特殊な街です。そんな大都市東京でオリンピックを開催すること自体がすごく強引なことなのですが、その計画の内容も少々問題があるのです。
中途半端なコンパクトオリンピックの弊害
覚えていますか?2020年オリンピックの開催地を勝ち取る時のアピールポイント。「世界一コンパクトなオリンピック」でしたよね。しかし、東京オリンピック・パラリンピックの大会運営費用や会場整備費用は当初計画していた3013億円の6倍の1兆8000億円に拡大しました。あまりにも見当違いな予算計画によって、コンパクトオリンピックは崩壊。建設費用を抑えるべく、会場は埼玉スーパーアリーナなど、地方に散らばって行きました。観客や選手は広範囲での移動を余儀無くされるわけですが、それでも選手村や会場は東京ベイゾーンに集中しているので、広範囲の交通抑制に加えて東京ベイゾーンの規制も重点的に行わなければいけないという複雑な状況になっています。普段東京が混雑するのは都心だけではないですからね。中央自動車道やJR中央線など郊外の大動脈まで詰まらせるなんてたまったもんじゃないです。
観客は通勤客の1割ほどだけどターミナル駅は大混乱
まるで幼稚園生の落書きのような地図ですよね。こんな複雑に絡み合う路線を束ねるターミナルの新宿駅は1日平均乗降者が約347万人(2016年)で世界一のギネス記録まで持っています。わかりやすく言うと横浜市民全員が1日で新宿に集まる感じですかね。オリンピックで混雑が予想されるのはターミナル駅の「新宿駅」「東京駅」、さらに東京メトロの利用が予測されるので「永田町」です。また、会場の最寄駅も競技当日はかなりの混雑になります。新国立競技場周辺のJR中央緩行線、都営大江戸線、銀座線。日本武道館の「九段下駅」。ベイゾーンのりんかい線、ゆりかもめと、この2つの路線に繋がるJR埼京線と地下鉄有楽町線も人が集中するでしょう。1日の交通機関を利用する観客数は普段の通勤者数の1割程度とされていますが、1割増えただけでも大混乱になるでしょう。なぜなら、彼らはその駅の利用に慣れていないのです。動線もバラバラですし、駅の案内表示にも混乱するのでターミナル駅は崩壊し、東京の交通網は麻痺する可能性があります。
オリンピックパークがない問題
ロンドンやリオではオリンピックパークを設置して関係施設を集中させました。東京も当初は「世界一コンパクトなオリンピック」を謳って、東京ベイゾーンに施設を集中させる予定でしたが、その計画が破綻したいま、選手達は晴海から江ノ島、伊豆、調布、さらには福島まで移動しなければいけません。ただでさえ大渋滞が予想される東京、選手達を迅速に移動させるには一般通勤客やそこで生活する市民を規制して選手達を優先的に通行させるしかありません。この強引な規制はさらなる混乱を生む可能性があるのです。
首都高の値上げ「ロードプライシング」で渋滞緩和
東京オリンピックの渋滞対策として東京都が検討しているのが首都高の値上げです。ロードプライシングとは意図的に値上げをして交通量をコントロールするというもの。たしかに料金が値上げされれば首都高の利用者は減ると思いますが、東京を移動する人は変わらないので一般道は大渋滞になるでしょう。首都高の値上げは根本的な解決ではないと思うのです。もっといい案はなかったのでしょうか。猛暑対策の打ち水のように少しトンチンカンではないでしょうか。しかも、首都高の値上げは競技場と同じように、「レガシー(遺産)」として残そうという話まであります。どう考えても負の遺産ですよね。オリンピックで使う多額の費用をなんとか回収したいという魂胆が見え見えですよ。
時間によって料金変更
首都高の通行料は現在、時間や走行距離に応じて300円から1300円で設定されています。そこになんと、日中は最大で3000円も上乗せすることを検討しているというのです。逆に夜間は料金を安くするそうですが、日中に移動したい人が料金のために夜間に移動しようと思うでしょうか。「仕方ないから夜でいっか」なんて思いますか?そんな暇じゃないですよね。
相乗り専用レーンやナンバーによる制限
ナンバープレートの番号によって通行を制限したり、乗車人数の多い車両を優先するという計画もあります。また、オリンピック専用レーンの導入も検討されています。もし、一般車両の通行が1車線に制限されてしまったら首都高は使い物にならなくなります。東京都民はどこまで身を削ればいいのでしょうか。
環七や環八は大渋滞が予想される
もちろんのことですが、首都高が値上げされて通行が制限されれば、そのしわ寄せを受けるのは一般道です。特に東京をぐるっと走る環七や環八は大渋滞でしょう。これがオリンピック期間中ずっと続くと思うと…。きっと東京に迂回路なんてものは存在しなくなるのでしょうね。どこもかしこも人が溢れかえっているのですから。
懸念されるのは超渋滞現象「グリッドロック」
首都高値上げはかなり苦肉の策。しかし、そこまでしないと渋滞は解決できそうにないということでしょう。その首都高値上げでも、JCTは1車線なので詰まってしまい一般道も大渋滞。公共交通期間もターミナル駅は崩壊、会場の最寄り駅も人が溢れかえりそこまでの路線はギュウギュウに。最後には電車が止まり、道路は動かず最悪の自体になる可能性があります。そうです。思い出しましたか?2011年の東日本大震災の渋滞と似ているのです。あの時は首都高が通行止になり、電車はストップ、帰宅難民が1000km以上の渋滞を作り出しました。あの超渋滞現象「グリッドロック」の再来になるかもしれません。
交通需要マネジメント(TDM)は失敗し、東京は崩壊
交通需要マネジメント、とは事前にオリンピック期間中の移動を国民に自粛させるものです。企業や物流関係者、会場付近の市民に呼びかけてなんとか渋滞を減らそうとしています。期間中は夏季休暇にしたり、時差出勤を促すもの。しかし、物流関係企業は期間中にTDMへ協力することは困難だとしています。物流はとても複雑にシステムが作られており、そこまで柔軟に対応することができません。普段は日中に運んでいたものを夜間に運んでくれと言われてもなかなかできませんよね。また、このTDMは市民や企業の協力がなくてはできず、当日までどうなるかわからないという点があります。「東京都民みんなで協力しよう!」と思っているみたいですが、果たして上手くいくでしょうか。予算に関してもそうですが、オリンピック関係者の見積もりは信用できない部分がありますから心配ですね。
交通システムマネジメント(TSM)も連鎖的に失敗して選手まで渋滞にハマる
交通システムマネジメントはオリンピック専用レーンや優先レーンを導入してオリンピックの運営をスムーズにするものです。しかし、TDMが失敗して交通量が削減できていない状態だとTSMも上手くいかなくなります。交通量が多いにも関わらず、このような交通規制を行うとかえって渋滞を発生させてしまいます。特に、1車線のJCTで一般車両と選手車両が混ざって大混乱になる可能性があります。こうなると、より強制的な規制をせざるを得ません。当日になって首都高は使えませんなんて言われたら、一般道はパンクして超渋滞現象の引き金を引いてしまうでしょう。