世界のマイナースーパーカーその5アメリカンマッスルカーの中から、ヘネシー ヴェノムGTをご紹介します。
チューニングメーカー「ヘネシー」
自動車文化がそれなりに成熟した国では、多かれ少なかれ「チューナー」の枠を超え、自動車メーカーさながらの規模や設備を持つチューニングカーメーカーが存在します。
ドイツのメルセデスAMGや前回紹介した米国のサリーンがそうでしたが、米国テキサス週のヘネシーパフォーマンスもそのひとつ。
1991年に「信頼性の高い最もパワフルなクルマを造る」事をスローガンに、有名チューナーのジョン・ヘネシー氏によって設立されました。
単なるチューナーとヘネシーの違いはその規模と設備で、広大な敷地にサーキットさながらのテストコースと、ドラッグレース対応の直線短距離コースを設置。
16基ものリフトを備えたサービス施設に、2WDなら1,800馬力、4WDなら2,000馬力まで対応可能なシャシーダイナモなど充実した設備は、まさに自動車メーカーさながらの充実度です。
広大なショールームまで設置されている事から、そこを訪れるユーザーは、公道ではなく安心できる試乗コースとしてテストコースを使えるのかもしれません。
基本的にはチューナーですが、AMGやサリーンと違って「どのメーカーが得意」という事はなく、日本車も含めた国内外のあらゆるクルマをチューニングしますが、スーパーカーをチューニングしてさらにハイパフォーマンスにするのを得意としているようです。
その中でも代表的なのが、ヴェノムGTなのでした。

見た目はロータス エキシージそのもの
ヴェノムGTを写真でも見た事がある人なら誰もが思うように、ベースはロータス エキシージです。
というより、見た目はエキシージそのものというべきでしょうか。
オリジナルよりワイドボディ化されてはるかに幅の太いタイヤを履き、フロントの6ポットキャリパーとリア4ポットキャリパーという強力なブレーキはブレンボ。
ボディにもフロントスポイラーや可変式リアウイングなどのエアロパーツが付加されています。
それもノーマルで1,244馬力を誇るGMの7リッターV8ツインターボエンジンを搭載し、ハイパフォーマンスバージョンでは約435km/hという世界最高速で走る力を持つがゆえです。
しかも1,244馬力の意味は「1kgあたり1馬力」という単純明快なもので、当初は1,200馬力の予定だったのが、後にオープンカー仕様が追加されたため、重量が増加しても1kgあたり1馬力を守るべく、最高出力が引き上げられたという経緯を持ちます。
レースのためですとか、最高速度のためという理由ではなく、もっと単純明快な理由で馬力が決まり、それを実現したら結果的にすごい記録を叩き出すクルマができた、というあたりが、日本や欧州のクルマとは異なる豪快さというべきでしょうか。
ヴェノムGTは市販車世界最高速!?
ベースのエキシージ、さらにその原型であるエリーゼは、ロータスらしいライトウェイトスポーツとして誕生しましたが、どんなクルマにもV8エンジンを載せたがるアメリカ人の手にかかれば、究極の軽量ハイパワーマシンになってしまうというわけです。
しかもベースが空力に優れていましたから、それでどれだけ速いクルマができるかは気になるところで、何度か世界最高速記録に挑んでいます。
2014年2月にはケネディ宇宙センターにある5,200mのスペースシャトル帰還用滑走路を使用し、435.31km/hを記録、これが現在までの市販車最高速記録になりました。
ギネスブックでは「量産車」を30台以上生産されたものと定義しているため、限定29台しか販売されなかったヴェノムGTは残念ながら対象外になりましたが、それでも他にも数多くある、限定数台などのハイパーカーを差し置いて最速なのです。
2位のブガッティ ヴェイロン・スーパースポーツが1200馬力で431km/hなのを上回ったのですから、大したものではないでしょうか。
面白いのは、0-300km/h加速時間でもギネス世界記録(13.63秒)を持っているにも関わらず、0-100km/h記録ではランキングに入っていない事で、車重が軽すぎる事から空力パーツが効果を発揮する速度域までは十分なトラクションが得られないのでしょう。
このあたり、車重でトラクションを得るというコンセプトのため、最高速度はともかく実用域での加速性能に優れた日産 R35 GT-Rとのコンセプトの差が見られますね。
次回もまたマイナースーパーカーを紹介しますので、お楽しみに!